【第2回】相続税の節税方法をわかりやすく解説!
第2回目の今回は「相続財産の財産評価額を減らす。」という視点を軸に述べたいと思います。これは相続税における財産評価額は現実の時価が同程度の財産でも、財産の種類や形態によって、かなりの乖離が生じることがある点に着目するものです。
相続財産の財産評価額を減らす
現預金を土地に変える。
「土地の相続税における財産評価額は通常、現実の時価の8割以下となっているので土地を購入しておくと相続税の節税になる。」という話をお聞きになった方もいらっしゃるかと思います。
事実その通りで例えば現預金で1億円を所有しているよりも、その1億円で土地を購入してしまった方が財産評価額が8千万円以下となって2千万円以上、財産評価額を減らすことができ相続税の税額を減額することが出来ます。
相続税の節税方法についての解説本やインターネットの記事には大抵、書かれていることですので相続税に関心を持たれている方であれば皆さん、知っていることであろうと思います。
これは相続税の節税における、いわば常道、王道とも言える方法であり、金銭に余裕のある方が以前から実践してきた方法です。バブルの時代には、わざわざ金融機関から借り入れをしてまで土地を購入して相続税の節税を図っていた人もいたような有様でした(借入金は額面での評価となるので財産評価額を圧縮できる訳です)。
但し土地を購入するに当たっては仲介手数料、登記費用、不動産取得税などが発生したり、購入後は毎年、固定資産税や都市計画税が発生したりしますので中長期的な視野に立って総体的に見た場合に節税が見込める場合に限られますので、ご注意ください。また、土地の価格自体も変動しますので土地の価格が下落してしまうことにより損をしないように注意する必要もあります。
また現預金のように相続人間において簡単に遺産分割が出来ない点にも注意する必要があります。
これらの点に十分注意して行えば節税方法として有益と言えるでしょう。
土地以外にも財産評価額が低い資産はある!
現実の時価よりも財産評価額の方が低くなる傾向があるものとして、土地の他に以下のものがあります。
●美術品
●ゴルフ会員権
●リゾート会員権
●建物
●借家(=借家権)
現預金に余裕がある場合には、これらの資産を購入しておくと節税が見込めます。
但し、前回(第1回)でも申し上げましたが、相続税の節税には100パーセント完全、確実なものは存在しません。美術品は毀損してしまったり盗難に会う可能性があります。ゴルフ会員権やリゾート会員権は毎年、会費を支払う必要があり、また運営会社が倒産してしまったら価値は著しく減少してしまいます。建物、借家(=借家権)についても、よくよく考えてみれば何らかのデメリットはあるでしょう。
ですので無理してまで、これらの資産を購入するのではなく、あくまでも金銭に余裕があって何らかの方法で節税を図りたいと考える場合で、これらの資産を所有し活用することで実生活において何らかのメリットが得られる場合に限ると良いでしょう。
例えばリゾート会員権を所有するならば、それを使って旅行等を楽しむ、建物や借家(=借家権)を保有するならばセカンドハウスとして活用すると言った具合です。
ちなみに日本国内における美術品の市場規模は2019年には2270億円であったと推計されています(出所:「日本のアート産業に関する市場調査2020」(一社)アート東京、(一社)芸術と創造)。
美術品は所有していても特段の出費がありません。すなわち不動産を所有していると固定資産税や都市計画税が発生したり、自動車を所有していると一般には自動車税、重量税、車検費用、自賠責保険料、任意保険料などを支払わなくてはなりませんが、美術品には、そのようなことが無いのが利点です。
以上の通り、現実の時価よりも財産評価額の方が低い資産を無理のない範囲内で購入することによって相続税の節税を図ることが出来るという訳です。
高級マンションを購入するという方法について
一等地にある、いわゆるタワーマンションなどの高級マンションは、現実の時価よりも財産評価額の方が相当程度、低くなる傾向にあります。4分の1以下になることも珍しくありません。これは相続税における建物の財産評価額は第一次的・原則的には、その建物の固定資産税評価額を用いることになっているのですが、建物の固定資産税評価額は材質や構造によって決まるので、マンションの場合、一等地や便利な場所に建っていること等による住環境の良さにより、そのマンションの建物としての価格が高騰していたとしても、その点は固定資産税評価額には影響しない為です。
そして、そうとなれば当然、人々は、これを利用して相続税を低く抑えようと考える訳です。そして、これは、あまりにも相続税を減額させる効果が大きいために最近では税務署も黙って見過ごさなくなってきました。
すなわち、この場合、最近、税務署は現実の時価に近い金額での追徴課税(更正処分)を行ってくるようになりました。
ですので、財産評価額と現実の時価との乖離が、あまりに大きい財産の場合、具体的には4倍以上もの開きがある財産の場合には、相続の直前(概ね3年以内)に購入していたり、相続の直後(概ね1年以内)に売却する等の行為があると税務署に目を付けられる恐れがありますので、この点には十分注意する必要があると言えます。
おまけの話 最後に
以下は例え話であり冗談です(笑)。
決して実践をお勧めするものではありませんのでご注意ください。
一般で市販されているワインのうち最高級品は1本(750ml)165万円位するそうです。相続が発生する時期が近いと分かった場合に現預金4950万円で、このワインを30本購入したとします。
相続税における財産評価の方法においては食品についての評価方法を特に定めてはいませんので、素直にこれに従えば財産評価額はゼロとなります。
そして相続が発生した後に、この30本のワインを同額で転売できたとするならば、現預金4950万円が相続発生時には一時的に財産評価額がゼロとなって、大幅に節税が出来るということになります。
かりに多少、減価しての転売となってしまったとしても相続税の税率よりも低いならば節税効果が見込めます(酒税法第9条1項、同法令解釈通達第9条1項関係の1には抵触しないという前提)。
端的に言えば、このように何でも良いので現実の時価よりも財産評価額の方が低いものを探して購入すれば相続税の節税が見込めるということになります。
そして新手の方法が流行りだすと税務署(国)の側も、これを封じ込めようとして法令や通達を変更したり、税務行政の運用方法を変更したりして、これに何とか課税をしようと企ててきます。どこの世界でもそうでしょうが、納税者と税務署の関係においても過去、このようないたちごっこを繰り返してきたという側面がありました。
以上、今回(第2回)は「相続財産の財産評価額を減らす。」という視点からご説明を致しました。
なお、相続人間で民法上の法定相続分に従って遺産分割協議を進めたり、家庭裁判所が遺産分割の調停や審判を行ったり、遺留分侵害額を算定したりする場合には当然ながら相続財産の現実の時価を基礎として考えます。この場合には相続税における財産評価額は原則として考慮されませんので、この点も併せてご承知おき下さい。
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