株式・有価証券の相続手続きを相続専門税理士がわかりやすく解説

相続財産に株式・有価証券が含まれていたら、どのように相続手続きをすればよいのでしょうか。

株式は評価額が毎日変動します。このため現金や預貯金のようにすぐ相続金額は決まりません。株式の相続では、他の金融財産より手間が増えます。(有価証券の定義について知りたいかたはこちらの記事をご参照ください。)

この記事では、株式を相続する前に知っておきたい株式相続の流れと、スムーズに相続を終えるための手順や知識を、相続税専門の税理士が詳しく解説しました。

株式・有価証券について日頃馴染みのない方でも、最後までお読みいただければ、ひととおりの相続の流れや手続きがご理解いただけます。

株式の相続に必要な手続きの流れ

株式の相続手続きは、以下の流れで進めます。

相続人の調査

保有財産の調査

遺産分割

相続手続き

名義変更(口座振替)

名義変更まで完了すれば、株式の相続手続きは終了です。ここまで終えたら、後は必要に応じて、以下の現金化・納税の作業を進めましょう。

・相続した株式の現金化
・納税のための相続評価

それでは、株式の相続に必要な手続きを順番に見ていきます。

株式相続その1 相続人の調査

株式を相続する場合、はじめに相続人を確定します。相続人を確定するためには、被相続人の出生時から死亡に至るまでの「連続した戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍謄本」が必要です。

必要な証明書類を取得するためには、被相続人の本籍地のある市役所・区役所・町村役場で手続きしなくてはなりません。

必要な証明書を取得したら、被相続人の名前の部分に「婚姻」「離婚」「養子縁組」「転籍」「認知」などの記載がないか確認してください。記載がある場合は、記載された年月日に対応する戸籍謄本の有無を調べます。対応する戸籍謄本があるようならそれも取得し、その先に相続人がいるかいないかを確定します。

被相続人・相続人の戸籍調査をする際には、親族関係の図を作成し、情報を整理して作業するのがおすすめです。図にすることで間違いや漏れを防げます。

「誰と誰が結婚している」
「誰をいついつ産んでいる」
「誰に兄弟がいる」

以上の情報をまとめると、相続人の生存確認が楽になりますよ。

ご年配の方が亡くなった場合は、親族の情報をまとめて整理すると「相続人も既に亡くなっていた」という事例も少なくありません。この場合は代襲相続が発生します。

戸籍謄本等の証明書を取得して、被相続人の親族関係と各々の親族の生存状況・婚姻状況・子の出生状況等を確認し、相続人の調査・確定を行いましょう

株式相続その2 株式を含む相続財産の調査

相続人の調査・確定の手続きを進めるとともに、 被相続人の財産を調査します。財産の中に株式が含まれている場合は、株式の詳細を調査します。

株式の詳細とは「上場株式」であるか「非上場株式」であるかということです。

上場株式を保有している場合

上場株式とは、証券取引所を通じて取引できるよう広く市場に公開されている株式のことです。上場株式は、証券会社や信託銀行などの金融商品取引業者が管理しています。

被相続人が上場株式を所有していた場合、銘柄や株数などを把握するために、証券会社や信託銀行が発行している「取引履歴」や「所有株式等の残高」が書かれた書類を確認します。

確認できたら、証券会社や信託銀行に対して、残高証明書を発行するよう請求しましょう。残高証明書には、被相続人がどの会社の株式をどの程度保有していたのかが載っているので、相続する株式の詳細がわかります。

<豆知識>
被相続人が電子化前の古い上場株券を所有していた場合、その株券は「証券保管振替機構(ほふり)」の「特別口座」で管理されています。ほふり保管の場合は、証券保管振替機構に連絡し、株式の相続はどのように処理するべきかを確認してください。

非上場株式を保有している場合

非上場株式とは、証券取引所での取り扱いがなく、個人や業者仲介のもと流通している株式のことです。非上場株式は、市場に広く公開されていないという意味で「非公開株式」とも呼ばれます。

非上場株式は、上場株式のように、管理ルールが決まってはいません。もし非上場の株式や上場が廃止された株式の株券が出てきた場合は、株券を発行した会社に対して相続手続きの方法を問い合わせましょう。

株式相続その3 株式を含む遺産の分割

遺産分割とは、相続人が複数いる場合に、相続人で遺産を分けることを言います。相続が開始しても、法定相続人各自の持分が自動的に振り分けられるわけではありません。相続が開始すると、株式は相続人全員の「共有」状態となると考えられています。

このため相続財産に株式がある場合、相続人各自が勝手に処分することはできません。

相続人が集まって株式を含む遺産の分割協議を行い、権利関係を確定させた上で、次の手続きに進む必要があります。遺産分割協議とは、遺産を分けるための相続人同士の話し合いのことです。

遺産分割協議を進めて合意に至ったら、遺産分割協議書を作成します。

株式のうち上場株式の評価額は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する、課税時期の最終価格によって決まります。※注1、注2

しかし非上場株式の場合は、取引市場がないために評価方法が複数あり、決め方は定まっていません。非上場株の評価は難しいので、税理士などの相続評価に詳しい専門家へ相談したほうがよいでしょう。

※注1:最終価格を見る日は、相続又は遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日となります。

※注2:「亡くなった日の最終価格」「亡くなった前々月の最終価格の平均値」「前月の最終価格の平均値」「亡くなった月の最終価格の平均値」を比較して最も低い価格を相続税評価額とします。

株式の遺産分割が不成立の場合

相続人が集まっての遺産分割協議で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。裁判官や調停員を間にはさんで話し合いをする形です。

さらに遺産分割調停でも話し合いがつかず不成立となった場合には「遺産分割審判」に移行します。遺産分割審判で決定するのは家庭裁判所の審判官(裁判官)です。審判官(裁判官)は相続人の主張を聞いて証拠に基づき判断し、適切と考えられる遺産分割方法を決定します。

株式相続その4 上場株式の口座振替(名義変更)手続き

上場株式を相続した相続人は、被相続人の取引口座がある証券会社や信託銀行に届け出れば、自分の口座に振替手続き(名義変更手続き)可能です。口座振替手続きをするときには、遺産分割協議でまとまった内容を遺産分割協議書として添付します。

口座振替には他にも必要な書類があります。

口座振替に必要な書類

口座振替に必要な書類は以下の3種類となります。

1. 被相続人の死亡が確認できる書類
・戸籍謄本
・住民票除票の写しまたは法定相続情報一覧図

2.相続人との関係が確認できる書類
・戸籍謄本、または法定相続情報一覧図
注意事項:相続人から委任された代理人(弁護士等)が書類を照会する場合は、相続人が作成した委任状が必要です。また委任状はコピー不可であり相続人の実印押印と印鑑証明書が必要になります。

3.本人確認書類
相続人本人を確認する書類として、以下の書類のいずれかを準備し、窓口で原本を提示します。

<顔写真のある本人確認書類>

  • 運転免許証
  • マイナンバーカード(個人番号カード)
  • パスポート
  • 住民基本台帳カード(顔写真のあるもの)
  • 在留カード
  • 特別永住者証明書

顔写真のある本人確認書類がない場合は、顔写真なしの書類でも認められます。ただし現住所の記載のある公共料金の領収証書など、別途本人であることを証明する補完書類も必要になります。

<顔写真のない本人確認書類>

  • 健康保険証
  • 年金手帳
  • 各種福祉手帳(母子健康手帳など)
  • 印鑑登録証明書
  • 住民票の写し・住民票の記載事項証明書
  • 戸籍謄本・抄本(戸籍の附票の写しが添付されているもの)

金融機関により必要な証明書類に差がありますので、詳しくは実際の証券会社や銀行に確認してみてください。

口座振替手続きを申請後、終了するまでにかかる時間は、だいたい2週間から1ヶ月程度です。振替手続きが完了すると証券会社や信託銀行から郵送で「手続き完了通知」が届きます。

株式相続その5 非上場株式の相続手続き

非上場株式を相続する場合は、株式発行会社と相続の手続きと処理を進めることになります。

具体的には以下の流れで進めます。

  1. 非上場株式の帰属について相続人全員で話し合う
  2. 相続人全員が合意する
  3. 株式の帰属を決定し遺産分割協議書を作成する
  4. 代表相続人または相続人各自が株式発行会社に対して株式名義の書換処理を依頼する

実際には、名義書換の手続きをどのように進めるかは発行会社によって異なります。具体的な手続については、発行会社の指示に従う必要があります。

しかし株式の発行会社である非上場会社は、株主名簿を作成していないことも多いです。作成していても、その管理が行き届いていない場合もあります。このため非上場株式の相続手続きにおいて「株式発行会社とトラブルになることはない」とは言いきれません。万が一トラブルになりそうな時は、早めに弁護士などの専門家に相談し、適切な対応を仰ぎましょう。

株式相続その6 株券が見当たらないときは

上場株式は法律により株券が廃止されて、すべて電子化されています。そのため上場株の株券は存在しません。

しかし、まれに電子化処理がされる前に発行され、そのまま放置されていた株券が見つかることがあります。これを失念株と言います。このような失念株については、証券会社で管理されていません。失念株を相続するときは、証券保管振替機構に連絡して、電子化の処理をする必要があります。

続いて、相続した株式を現金化したい場合の手続きについてご紹介します。

株式相続その7 相続した株式の現金化

現金化は必須ではありませんが、相続した株式は名義書換後に売却して現金にできます。相続した株式では通常の株式売買と同じように市場で売買可能です。

  • 証券会社の担当者に電話で売却の指示をする
  • オンライン取引が可能な口座でインターネットを通じて売却する

以上のような方法で売却できます。

相続人各自が売却したい場合

相続人各自は、遺産分割協議終了後、相続した株式を個人の意思で自由に売却できます。他の相続人の同意を得る必要はありません。そのまま保有しておくこともできますし、売却することも可能です。

一括で売却する場合

相続した株式を現金化することに各相続人間で異論がない場合は、遺産分割協議前に一括で売却することも可能です。以下、一括売却の場合の流れです。

相続人の中から代表相続人を決める

代表相続人に対して他の相続人が株式売却の処理を委任

代表相続人が管理証券会社等に口座を開設

当該口座に全株式を移管

売却

といった方法を取ります。

上記の方法を取ることで、遺産分割協議前に、株式の売却処分のみ先行で進めることが可能です。売却で得た現金をどのように分配するかは、売却後に遺産分割協議を行い、その場で各相続人の間で決められます。

続いて株式を相続した場合に相続税の計算に関連する、株式の相続評価の方法をご紹介します。

上場株式の相続評価

上場株式の評価額は、課税時期や毎月の平均値を考慮して決定されます。その理由は株価は短期的に急騰したり暴落したりするからです。課税の公平を図るため、以下の方法で評価がされます。

具体的には

  • 亡くなった日の最終価格
  • 亡くなった前々月の最終価格の平均値
  • 前月の最終価格の平均値
  • 亡くなった月の最終価格の平均値

以上の4つを比較し、最も低い価格を相続税評価額とします。

出典:国税庁 『上場株式の評価』

非上場株式の相続評価

非上場株式の評価方法には、原則的評価方式である「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があります。

類似業種比準方式は大会社に適用され、純資産価額方式は小会社に適用されます。

また、中会社はさらに大・中・小に区分されます。さらに類似業種比準方式と純資産価額方式を一定比率で組み合わせて評価額を算定します。

株式の物納

株式の物納は、手持ちの現金で相続税を払えないときに取る手段です。相続税の金額が高額になり、被相続人や相続人の現預金で支払えないことはよくあります。

手元に相続税の納税資金がないときは

(1)上場株式等を売却し納税資金を用意する
(2)上場株式等を物納する=金銭ではなく相続財産で相続税を納付する

といった2つの方法があります。

(1)の場合の注意点は、手続きに時間がかかること。名義変更の手続きには2週間から1ヶ月程かかります。このため、余裕をもって手続きすることをおすすめします。

また相続税を株式の物納で納付する場合は、満たすべき要件があります。しかも相続財産全体の構成により、株式による物納ができない場合もあります。したがってまずは株式による物納ができるかどうかを検討しなくてはなりません。

相続財産のうち物納可能な財産は法令で決められています。優先順位に基づいて納めることになっており、以下の優先順位の上位の財産から物納しなくてなりません。

物納可能な財産第1順位

①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。

②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

物納可能な財産第2順位

③非上場株式等
特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。

④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

物納可能な財産第3順位

⑤動産
第1順位の財産が優先的に物納されます。上記の物納可能な財産順位の中で、上場株式は第1順位です。優先順位に問題がなければ、その株式が物納可能か確認しましょう。上場株式も非上場株式も物納可能です。

株式以外の有価証券の相続手続き

株式以外の有価証券の相続手続きについて解説いたします。株式以外の有価証券とは、上場株式や債券などの公社債、投資信託などです。債券や投資信託などの株式以外の有価証券の相続手続きは、株式の相続手続きとほぼ同じです。手続きに必要な書類も、ほとんど同じと考えてかまいません。

公社債(債券)

公社債は、最終価格で相続税評価を行います。しかし、最終価格がない場合は、公社債の発行価額をもとに相続税評価をする決まりになっています。

ただし公社債にはいろいろなタイプがあります。公社債を相続する時は、公社債のタイプに応じた相続税評価が必要です。

続いて投資信託の相続手続きについて解説します。投資信託の相続税評価は、投資信託の種類によって異なります。投資信託の種類別の手続き方法について、説明いたします。

日々決済型の投資信託

日々決済型の投資信託の場合は、亡くなった日に解約したと仮定して、その日に支払いを受けられたであろう金額で評価します。日々決済型の投資信託の相続税評価には基準価額が必要です。基準価額は1万円あたりで公開されています。相続税評価では、課税時期前の最も近い日の課税価額を利用します。

投資信託の分配金は、税金を引いたうえで再投資されています。亡くなった日までの未収分配金も評価額にプラスします。ここは注意が必要です。

日々決済型の投資信託を相続するときは、まず証券会社に投資信託の資料請求を行いましょう。その上で具体的な相続手続きについては専門の税理士に相談することをおすすめします。

上場投資信託

上場投資信託を相続するときは、上場株式と同じ方法で相続税評価を行います。

  • 「亡くなった日の最終価格」
  • 「亡くなった前々月の最終価格の平均値」
  • 「前月の最終価格の平均値」
  • 「亡くなった月の最終価格の平均値」

以上の4つを比較し、最も低い価格を相続税評価額とする方法です。

上場投資信託は、中途解約による換金ができません。上場投資信託を現金化したいときは、売買により換金します。

上場していない投資信託

上場していない投資信託を相続する場合は、亡くなった日に解約を行ったと仮定して、支払いを受けられる金額が相続税の評価額となります。

投資信託を解約する時の税金や信託財産留保額は、相続税の評価額から差し引くことが可能です。

まとめ

株式を相続する場合の手続きの流れを解説しました。株式の中でも上場株式の相続手続きは、証券会社または株式発行会社に問い合わせれば、比較的簡単にできます。しかし、重要かつ難しいことは、株式の相続手続きそのものではなく「誰が株式を相続するかを決める」ことです。相続する株式が未上場会社が発行したものならば、さらに扱いは難しいです。

もし可能ならば、相続が発生する前の段階に、親族で財産の相続をどのようにするかよく話し合っておくとよいでしょう。

本記事がみなさまの相続に少しでもお役に立てれば幸いです。株式の相続でわからないことや不安な点がありましたら、ご自分だけで悩まずに専門家に相談することをおすすめします。

相続専門 税理士法人ともにでは、株式の相続に関する申告や相続税についてのご相談を、無料で行っています。株式の相続にとどまらず、生前贈与や相続開始後の節税対策についても状況に応じた最適なアドバイスが可能です。

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