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相続税の申告・納税が終了しても安心はできません。申告期限から5年を経過するまでは、時効が成立しないからです。とはいえ、実際には申告期限の1~2年後に税務調査が行われるケースが圧倒的に多いです。

では、相続税の税務調査は、いったいどれくらいの確率で行われるのでしょう?また否認率はどの程度なのでしょうか?そして調査の流れはどのように進められるのでしょう?

こうした疑問を解決するために、この記事では相続税の税務調査の実態や手続きの流れ、税務調査の事前準備などを、項目ごとにわかりやすく説明します。

目次

相続税の税務調査とは

税務調査とは、納税者が正しく税務申告しているかを確認する調査のことです。相続税の税務調査では、主に「相続財産の計上漏れがないか」「財産評価や計算に誤りがないか」を中心に確認されます。

相続税の税務調査の確率

相続税の税務調査の確率についてご説明します。

相続税の申告書を提出した全ての相続人に対して、税務調査があるわけではありません。国税庁が発表する統計データによれば、相続税の申告書の提出があった件数のうち、約10%の割合で調査が行われています。

またいったん税務調査が入ってしまうと、80%以上の確率で追徴課税※を受けています。
(※出典:国税庁 平成30事務年度における相続税の調査等の状況

他の法人税や所得税等の税目に比べると、相続税の税務調査と追徴課税を受ける割合は高いので、注意が必要です。

相続税の税務調査が入る理由

税務調査が入る理由は大きく分けて2つあります。

①相続財産の計上漏れがある場合

財産の計上漏れをしてしまうと税務署から指摘を受ける可能性が高いため、当初の申告において、計上漏れがないよう念入りに確認して申告書を提出することが重要です。

税務署は、相続税申告者の財産情報を調べるための権限やネットワークを広く持っています。次で紹介するような情報を事前に調査した上で、相続財産の計上漏れがないかを総合的に見て判断し、税務調査先を選定しています。

税務署が相続財産の確認のために収集している代表的な情報は、以下の通りです。

不動産の情報

市区町村役場に死亡届が提出されると、死亡情報が市区町村役場から税務署に通知されます。この時、被相続人の固定資産税の情報も送られます。また、税務署は実際に遺産分割が終わった後に行う不動産の名義変更に関する情報も法務局から取り寄せます。取り寄せた名義変更に関する情報を元に、税務署は被相続人が相続税の対象となる不動産を所有していたことを確認します。

金融資産の情報

税務署は相続人の了承を得ることなく、銀行や証券会社に、被相続人や相続人等の金融資産情報の照会をかけられます。各金融機関では少なくとも過去10年分の取引履歴を保管していますので、相続税や贈与税の申告書に反映していない残高や、資産の移動があればすぐに分かってしまいます。

生命保険の情報

生命保険会社は、保険金・解約返戻金の支払いや、契約者変更情報を税務署に報告します。保険金等の支払いを受けた場合のほか、契約者の変更を行った場合にも課税の対象となる場合がありますので、注意しましょう。

過去の収入に関する情報

税務署は、所得税の確定申告書・給与の源泉徴収票・退職手当金等受給者別支払調書など、被相続人が過去に得ていた収入に関する情報を収集しています。また、被相続人が非上場企業のオーナーで自社株を所有していた場合は、会社の法人税申告書の調査も行われます。税務署は、過去の収入に見合った相続税の申告が行われているかチェックしています。

②財産評価や計算に誤りがある場合

財産評価や計算に誤りがある場合とは、財産の計上漏れはないけれど、土地の評価方法や税金の計算を間違えているケースです。相続税申告に慣れた税理士が作成していれば、このような計算や評価のミスはほとんど見られません。しかし相続税申告の経験が浅い税理士にまかせた場合や、税理士に依頼せずに自分で作成したような場合には、評価や計算の誤りが理由で税務調査の対象となる事例が多く見られます。

相続税申告書は、第1表から第15表まであり複雑です。相続税に慣れた税理士以外が作成すると、どうしてもミスが起きやすくなります。税務署が申請書をコンピューターで読み込み、数値にミスがあれば、確実に税務調査対象としてピックアップされてしまうでしょう。

相続税の税務調査の種類

相続税の税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類があります。

強制調査

強制調査はその名のとおり強制力のある税務調査です。俗に「マルサ」と呼ばれる国税庁の査察官が、事前の連絡なしに抜き打ちでやって来て、強制的に自宅等の捜索や証拠物等の差押が行われます。特に悪質なケースや巨額の脱税事件の場合などに行われるものですので、普通はお目にかかる機会のないものです。

任意調査

任意調査は、税務署から事前に連絡があり、日程調整した上で実施されます。強制捜査のように強制的に家の中を捜索されたり、物を差押えられたりすることはありません。

調査は調査官の質問に回答するかたちで進められます。任意調査といっても、税務調査官は納税者に税金に関する質問ができる「質問検査権」を有しているため、納税者は質問に対して黙秘したり、虚偽の陳述はできません。任意調査には協力的な態度で対応しましょう。

相続税の税務調査の時期

相続税の税務調査の時期は、相続税申告をした翌年もしくは翌々年の夏から秋になる可能性が高いです。税務署では毎年7月に大きな人事異動があり、1年単位で税務調査を行います。このため、人事異動が終わって落ち着いた8月頃から、税務調査は本格的にスタートします。

ただし法律上の相続税の時効は5年です。悪質な場合を除き、申告期限から5年を経過すれば、もう税務調査の心配はないと判断してもよいでしょう。

相続税の税務調査が入りやすい5つのケース

続いて、相続税の税務調査が入りやすい5つのケースについてご紹介します。

税務調査が入りやすいケース1 高額の金融資産を相続

金融資産と不動産であれば、金融資産を多く相続した人の方が、調査が入りやすいです。
例えば、同じ3億円を相続したとしても、3億円分の土地を相続した人と、3億円分の現金を相続した人では、後者の方が圧倒的に調査の入る確率が高いです。

土地や建物など不動産の申告漏れは滅多にありません。しかし預貯金や株式などの有価証券は、つい申告し忘れたり、故意に隠されたりすることがあります。したがって調査官はどうしても金融資産について、多くの関心を払うことになります。

税務調査が入りやすいケース2 富裕層である

実は税務署は税務調査の対象を選定するために、「富裕層」を管理する独自のリストを作成しています。

不動産や高級車などの高額商品の購入者や国債保持者などをリスト化し、KSKシステム(国総合税管理システム)と呼ばれるシステムに情報を蓄積しているようです。

この富裕層リストをもとに、税務署は調査対象の総資産額を予想します。予想と実際の申告書を比較して大きな差がある場合は、税務調査が行われる可能性があります。

特に相続税の納税対象者が多い東京や大阪のような大都市圏では、この「富裕層リスト」から調査対象を選定することが多いでしょう。

税務調査が入りやすいケース3 申告書に不備がある

相続税の申告書の内容に不備があれば、税務調査が入る可能性が高いです。相続税の申告書には、第1表から第15表まで、各付表などを含めると15種類以上の書類が存在します。

申告書をコンピューターで読み込んで、簡単な計算間違いなどをチェックした結果、計算に不備のある場合には調査対象として浮かびあがります。

税務調査が入りやすいケース4 税理士に頼まず本人が申告

公表はされていない統計ですが、相続税申告書の作成に税理士が関与していない申告については、大半が税務調査の対象となるようです(税務署談話)。税理士がついてないことで、申告内容に穴がありそうだなと思われてしまうのです。

ちなみに、統計上相続税申告のうちの9割は税理士が関与しており、税理士が関与しない申告は1割程度となっています。

税務調査が入りやすいケース5 そもそも申告していない

相続税がかかるのに申告していない、いわゆる無申告の人にも当然調査が入ります。これまでにご説明したとおり、税務署は相続税の申告が必要であることをしっかりと把握しています。相続税の無申告がばれないということは、ほとんど考えられません。

相続税の税務調査が決まったら?その対応方法

ここからは、相続税の税務調査が決まった時の対応方法について解説します。

税務調査の準備

税務調査が決定したら、まず税務職員から日程調整のための連絡があります。相続税の申告を税理士に依頼していた場合には、税理士に連絡がきますので、いきなり相続人のもとに連絡が来ることはありません。しかし税理士に依頼せずに申告していれば、相続人に直接電話がかかってくることになります。

日程が決まったら、必要な資料を準備しておくほか、税務署から指摘を受けそうなことがないか、当初の申告内容を見返しておくとよいでしょう。税務調査当日は、相続税の申告を行った税理士も立ち会います。心配なことがあれば、税務署から不利な指摘を受けないためにも、事前に税理士に相談しておきましょう。

なお当初申告の税理士が頼りにできない等の事情がある場合には、税務調査の段階から、相続税に強い別の税理士に、税務調査対応を依頼することも可能です。また当初申告時は税理士に依頼せずに自分で申告をした場合でも、税務調査時から税理士に相談することも可能です。

また、当日までに以下の資料を準備しておくとよいでしょう。
<当日までに準備しておく資料>
※事前に確認しておくとスムーズに対応できますが、こちらから積極的に資料を見せる必要はありません。

税務調査の期間

通常、税務調査は1日がかりで行われます。問題が解決しない場合には別日に日程調整をして引き続き調査が行われることもあります。

税務調査当日の流れ

調査は午前10時に開始され、調査官は2名で来ることがほとんどです。早ければ午後3時頃、遅くとも午後5時頃には終わります。相続税の税務調査は被相続人の自宅もしくは相続人の自宅で行われることが一般的です。

午前中は税務署からの質問がメインです。税務署所定のマニュアルに基づき、税務署が聞きたいポイントを中心にヒアリングされます。午前中に具体的な指摘を受けるケースは稀で、定型的な質問を中心とした内容となります。

午前中にひと通りの質問を受けたら、お昼休憩があります。税務職員は必ず外に出ますので、昼食を相続人側で準備する必要はありません。

午後は具体的な資料の確認(通帳等)、金庫やタンス等の貴重品の保管場所の確認を行った後に、具体的な指摘事項の通知があります。また午前中に行われた質問に対する回答を書面にまとめたものに、相続人がサインをするよう求められることもあります。回答した内容を書面にしたものですが、税理士が立ち会っている場合は税理士にも確認の上、署名押印した方がよいでしょう。

具体的な指摘や質疑応答の後、通常であれば午後3時~午後5時頃までには、税務署職員は帰っていきます。税理士が立ち会う場合は、この後は税理士と税務署での交渉で終わることがほとんどです。

相続税の税務調査でよく聞かれる質問の例

相続税の税務調査でよく聞かれる質問の例をご紹介します。

まずは、家族の状況や亡くなられた方の趣味、生前の職業や役職、亡くなられるまでの老後の生活や状況、病歴などを、時には同情を交えて、世間話のように聞いてきます。納税者の気持ちをほぐしながら、それとなく、どのようなことにお金を使う方だったのか、家族の誰にお金を使ったかなどを確認していきます。

亡くなる数年前からは誰と生活を共にしていたか、誰が預金の管理などをしていたか、お孫さんの年齢や教育資金、結婚や新築・増改築時期など、お金の流れや誰が管理していたかなどをさりげなく確認しているのです。

よく聞かれる質問内容と確認事項には、例えば以下のようなものがあります。

質問内容と確認事項

①被相続人の
死亡原因について
療養期間がどれくらいであったか。意思能力や行為能力はいつまであったかなどを確認します。
②被相続人の
経歴や職歴について
どのようにして財産を形成してきたか。所有しているであろう財産の推定を行います。
③被相続人の趣味について
趣味を通じた財産がないか確認します。お金のかかる趣味がなかったかを確認します。
④被相続人の財産は生前、
誰が管理していたのか
管理者の預金と被相続人の預金との区分ができているか確認します。また、仮装隠ぺいしていた事実がある場合には、誰が行ったかを特定しようとしています。
⑤相続人や
家族の収入について
相続人の収入の確認をし、名義預金が含まれていないか確認します。
⑥相続税の
納税方法について
多額の納税資金の出所はどこかを確認し、申告漏れとなっている金融資産などの発見の手がかりとします。
⑦貯蓄や投資の状況
計上漏れをしている金融資産がないか確認します。具体的に〇〇銀行などに預金はないかと質問する場合には、すでに資料を押さえたうえで質問を行っていることもあります。

相続税の税務調査終了後の対応方法

最後に、相続税の税務調査終了後の対応方法について解説します。

税務調査終了後、相続税の税務調査の結果が税務署から通知されます。申告是認(当初に申告した内容が認められること)の場合には調査終了となり、新たな手続きは必要ありません。

指摘と追徴がある時の対応方法

指摘と追徴がある時は、指摘された事項をふまえて修正申告を行います。税務調査官が相続税の漏れを発見し、相続人もこれを認めて自主的に申告書を提出し直すという流れです。

税務調査官が相続税の漏れを発見するも、相続人がこれを認めない場合には、税務署が強制的に足りない税金の額を決定します。これを更正・決定といいます。

納得できない場合の不服申し立て手続き

税務調査終了後に税務署から指摘を受け、内容に納得できない場合には、処分の取り消しや変更を求めて不服を申し立てることができます。不服申し立てには次の2通りの方法があります。
①再調査の請求
再調査の請求とは、税務調査を行った税務署に対して再調査を求める制度です。再調査の請求を行う先は処分を下した税務署ですが、再調査には処分にかかわった担当者とは別の担当者が選任されます。再調査の請求は、原則として処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に手続きする必要があります。税務署は再調査の請求の審理については、簡易迅速な処理に努めることになっており、標準審理期間が3か月と定められています。

手続きに必要な書類は国税庁のホームページよりダウンロードできます。
②審査請求
審査請求とは、税務署が行った処分の見直しを、国税不服審判所に求める制度です。審査請求は、再調査の請求をしなくてもできます。また、先に再調査の請求をし、その処分内容に不服がある場合に、後から行うことも可能です。

審査請求は、再調査決定書謄本を受け取った日から1か月以内(再調査の請求を経ずに審査請求をする場合は、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内)に手続きを行う必要があります。なお、審査請求は、原則1年以内に裁決するよう努められています。

手続きに必要な書類は国税不服審判所のホームページよりダウンロードできます。

どちらの手続きも、納税者の主張が認められる割合は10%前後となっており、納税者にとってはかなり厳しい戦いです。

国税不服審判所への請求資料の作成段階からは、相続税に詳しい弁護士や税理士などの専門家が関与して主張していくことが多いです。この場合専門家への高額の報酬が必要になりますし、さらに1年程度の審査期間が見込まれ、心身への大きな負担が予想できます。

ここまでの手続きに及ぶことは珍しく、よほど相続人が税務署の指摘に納得できないケースと言えるでしょう。
<参考>
さらに不服があるときは、裁判所に訴訟を起こすことが可能です。審査請求に対する国税不服審判所長の裁決と処分になお不服があるときは、通知を受けた日の翌日から6か月以内に、裁判所に対して訴えを提起できます。

まとめ:相続税の税務調査が入らないようにするには

相続税の税務調査は大変な調査ですので、最初から入らないように対策することが重要です。相続税の税務調査率を下げるためには、当初の相続税申告を「税理士に依頼することが大前提」とお考えください。

税務署としても、税理士が関与せずに作成された相続税申告書には、内容に誤りがある可能性が高いと考えているものです。このため、税理士を通さないケースで税務調査が入る可能性は極めて高くなっています。

しかし、税務調査が入りにくい相続税申告書の作成ノウハウは、全ての税理士事務所が持っているわけではありません。税理士事務所ごとに、得意分野は異なります。将来相続税の税務調査に入られたくない場合には、税理士への依頼を前提と考え、相続税の税務調査対応に強みを持つ税理士事務所を選んで相談するとよいでしょう。