遺産相続時の家族間トラブルの解決方法と予防策を解説

人の死が突然訪れるように、遺産トラブルも予想に反して突然巻き起こります。想定外の争いごとに巻き込まれる可能性は、誰にでもあるものです。

遺産をめぐるもめ事が勃発すると、激しい骨肉の争いになることも珍しくありません。中には相続手続きが泥沼化してどうにもならなくなり、親戚や家族が離れ離れになるケースもあります。

遺産相続というと、莫大な遺産を持つお金持ちに限る‥とイメージしがちです。しかし、少額の遺産をめぐってもめごとが起きるケースの方が、実際には多いようです。

どのような場合に遺産トラブルが起こりやすいのか、リスクが事前にわかれば防げることも多いです。トラブルを避けたければ、前もって備えることが重要です。

本記事ではよく起きる遺産トラブルのタイプ別に事例をご紹介し、予防法や解決策についても解説します。

ぜひ参考にして未然にトラブルを防いでください。

起こりやすい遺産相続トラブル事例と解決方法

まずは遺産相続で起こりがちなトラブルの事例と、それぞれの解決方法をご紹介します。

遺産相続トラブル例1 兄弟で遺産分割割合を争う

兄弟で、遺産分割の割合をめぐって争いが起きることはよくあります。実は、比較的小規模な遺産相続(1,000万円以下の相続)の方が、トラブルになるケースが多いのです。

初めから遺産が多いと認識していて「うちの相続は大変そう‥」と予想している場合は、早い段階で専門家に相談します。このため、かえってトラブルになりにくいです。

しかし小規模な遺産相続の場合は、早めに準備する方は多くありません。準備不足のまま遺産相続に直面するとどうなるでしょうか。それまでは仲の良かった兄弟なのに、遺産の分割割合をめぐって不仲になる‥といった状況を引き起こします。こうした残念なケースを相続手続きの現場でよく見てきました。

争いを避けるには民法が定める財産分配比率を確認しよう

相続人どうしで争い合う残念な状況にしないためにはどうすればよいのでしょう?それには、法の取り決めに立ち返るのが有効です。

民法上、法定相続人の遺産の分割比率ははっきり決まっています。法律が保証するルールを知れば、争いが止む可能性があるでしょう。

以下に、相続の基本である民法の遺産分割割合例を挙げていきます。

相続人ごとの分配比率1:被相続人の配偶者と被相続人の子どもが相続人の場合

  • ●配偶者—–2分の1
  • ●子ども—–2分の1

被相続人に配偶者と子どもがいる場合は、各自の取り分は上記のとおり配偶者が1/2、こどもが1/2です。子どもが兄弟2人なら、子どもの取り分1/2をさらに1/2 ずつに分けるので、兄弟それぞれの取り分は1/4 ずつです。

相続人ごとの分配比率2:被相続人の配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合

  • ●配偶者—–4分の3
  • ●兄弟姉妹–4分の1

上記の例は被相続人に子どもがおらず、相続人に被相続人の兄弟が含まれるケースです。相続人は被相続人の配偶者と、被相続人の兄弟姉妹となります。このケースでは遺産の3/4 が配偶者に、1/4が兄弟姉妹のものになります。兄弟姉妹が2人の場合は1/4 を2人で分けますので1/8 ずつになります。

参考までに、相続に兄弟が絡まないケースも2つご紹介します。

相続人ごとの分配比率3:被相続人に配偶者がおらず、子どもがいる場合

  • ●子ども—–全員で均等に分ける

上記は、相続発生時に被相続人に配偶者がおらず子どもがいるケースの分配比率です。子どもたちが遺産を均等に分けます。財産割合は子どもが2人なら1/2ずつ、子どもが3人なら1/3ずつとなります。

相続人ごとの分配比率4:被相続人に配偶者・子どもがおらず親が存命の場合

  • ●親—–全員で均等に分ける(子供がいない場合)

被相続人に配偶者と子どもがおらず、親がいる場合は、被相続人の親が均等に遺産を分けます。(※代襲相続が発生している場合を除く)親が2人いるなら、1/2ずつになります。

最後に、相続人が「被相続人の兄弟姉妹のみ」のケースをご紹介します。

相続人ごとの分配比率5:被相続人に配偶者・子ども・親がおらず兄弟がいる場合

  • ●兄弟姉妹–全員で均等に分ける(子供も親もいない場合)

被相続人に配偶者も子どもも親もおらず、兄弟姉妹がいる場合は、被相続人の兄弟姉妹全員で遺産を均等に分けます。(※代襲相続が発生している場合を除く)兄弟姉妹が3人いるなら1/3ずつとなります。

以上、5つの具体例をご紹介しました。ご紹介したように相続財産の分配比率は法律で明確に決まっています。法律を味方につければ自分の正当な権利を主張できますし、法定以上に要求しても無理なことがわかります。気持ちの整理をつける上でも、法令上の決まりを知っておくことは重要です。

遺産相続トラブル例2 不動産の分割や評価をめぐる争い

遺産分割協議の中でも、不動産の分割をめぐってのトラブルは多く見られます。

不動産は遺産の財産価値のうち大きな部分を占めることが多いです。また、不動産が自宅の場合は、相続できるかできないかで住む場所にも影響を及ぼします。不動産の相続は相続人の生活に与える影響が大きいのでトラブルを招きやすいです。

不動産の分割方法にはさまざまな選択肢があることも、問題を複雑にします。選択肢が豊富であるがゆえに、なかなか意見がまとまりません。

不動産相続のトラブル例

・不動産を実際に分割して分けることが難しい
・不動産の評価額について話し合いがまとまらない
・不動産を売ってお金に換えたい人と単独で取得してそのまま住み続けたい人がいる
・不動産を単独名義としたいが他の相続人の協力が得られない 

などなど不動産の相続がからむトラブルについて、軽く思い起こしただけでも、上記のようなケースがありました。どの分割方法を選んでも、それぞれメリットとデメリットがあります。このため妥協点を見つけることが大事です。

不動産の分割や評価でのトラブル対処方法

不動産の分割や評価をめぐるトラブルを予防するには、遺言で分割の仕方を細かく指示しておくという方法があります。しかし、遺言が相続人にとって合理的な内容になっていないと、逆にトラブルの種になることもあります。遺言では相続人への配慮が必要です。

また、不動産分割や評価をめぐるトラブルに対処するには、対象の不動産を正確に評価する必要があります。不正確な情報を元に議論しても、らちが明かないからです。

不動産の価格を評価するには、通常は実勢価格(市場で実際に取り引きされる価格)を使います。実勢価格は不動産を売却すればわかるのですが、売却しない場合は、どうやって価格を決めればよいでしょう?

土地の実勢価格を簡易的に算出できる方法をご紹介します。土地の実勢価格は課税評価額から概算額を計算することができます。

土地の相続税課税評価額

・(1)路線価がついている土地→路線価✕敷地面積
または
・(2)路線価がついていない土地→固定資産税評価額✕一定倍率
(地域ごとに税務署が指定する割合) 

路線価は国税庁のホームページで調査可能です。固定資産税評価額は、納税通知書を見るか、役所で固定資産税評価証明書を発行してもらうことで確認できます。

なお、建物の価格は再建築価格から減価償却を行って計算する方法などがあります。

不動産の実勢価格がわかれば交渉の余地が出て、話し合いも良い方向に変わるかもしれません。ただ、上記の計算式はあくまで簡易計算です。不動産は1つとして同じものはないので、その価格を正確に見積もるためには専門家の手を借りる必要があります。

被相続人が元気なうちに、自分の意思を遺言書として残しておくのがトラブル回避には有効です。しかし遺言書が準備できず当事者間でトラブル解決できない場合は、調停や審判を申立てて裁判所の判断に委ねるという解決方法が用意されています。こうした段階までこじれた場合は、できれば、相続法に詳しい税理士や弁護士などの専門家を間に入れることをおすすめします。

遺産相続トラブル例3 特定の相続人が遺産を独占

特定の相続人が遺産を独占する事例としては、極端な長男の優遇があります。これは「親の財産はすべて長男が相続すべき」という昔ながらの考え方によるものです。現代でも、「全財産を長男に継がせる」といった、偏った内容が遺言書に記されるケースを時折見かけます。

こうした場合、他の相続人は泣き寝入りしなくてはならないのでしょうか?いえ決してそんなことはありません。次で対処方法をお伝えします。

特定の相続人が遺産を独占しそうなときのトラブル対処方法

特定の相続人が遺産を独り占めしてしまいそうな時に、他の相続人にできることは、遺留分侵害額の請求です。法定相続人にとって、遺言書の内容に不服がある場合は「遺留分侵害額の請求」をする権利が認められています。

事例の「長男にすべての遺産を相続させる」としたケースでは、長男に対して、他の遺族は遺留分※の存在を主張できます。遺留分侵害額の請求をすれば、自分に与えられた法定相続分の遺産を取り戻すことが、可能になるのです。

遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の条件を満たす法定相続人に対して、保障されている最低限の相続分のことです。遺留分は遺言書の内容に関わらず保障されます。ただし、自動的に保障されることはありません。遺留分を請求するなら公的に行動を起こす必要があります。また請求期限もあるのでご注意ください。

遺産相続トラブル例4 相続人の人数が多い

相続人の人数が多い場合もトラブルになりやすいです。

遺産相続で、被相続人の遺産を受け取る権利を持つと、民法で定められている者を法定相続人と呼びます。相続においては、法定相続人が被相続人の配偶者や実子および兄弟姉妹のみになるケースが多いです。しかし、中には非嫡出子や養子、親の死後に現れた隠し子などの存在が被相続人の死後に発覚することもあります。

非嫡出子や養子、親の死後に現れた隠し子も法定相続人です。たとえば生前に被相続人の介護をしていた人に対して、遺産を渡すために遺言書で指定し、なおかつその人自身を養子にする、といった方法で相続人が増えるケースもあります。

相続人を増やす養子縁組は節税対策につながるので、孫を養子にする事例もあります。しかし、このように相続人の数が増えていくとトラブルに発展する傾向が強いのです。

相続人の人数でトラブルが置きたときの対処方法

以下のように、相続人の数が多いことが原因でトラブルになった時は、法律が定める「相続人の範囲」や「遺産分割の割合」を調べることをおすすめします。

・相続人の人数が多くてトラブルになった
・想定外の相続人の登場でトラブルになった

なぜならば、相続人が多くても少なくても、遺産分割の方法に変わりはないからです。遺産分割においては、法定相続人が誰かを正確に把握し、遺産の分配比率を知っていることが重要です。

法定相続人になれる人の範囲を確認

法定相続人の範囲は、下記のように法律で定められています。

法定相続人になれる人

・配偶者(配偶者は必ず法定相続人になります)
・第一順位:子および養子
・第二順位:直系尊属(父母、または、祖父母)
・第三順位:兄弟姉妹

法定相続人として被相続人の配偶者や第一順位の子ども・養子がいれば、相続はそこまでで止まり、第二順位以後の相続人は発生しません。「第一順位の子ども」には、被相続人と離婚した元配偶者との子どもや、結婚していない相手との子ども(認知された場合に限る)も含まれます。立場の違う子どもの間に持ち分の差は発生しません。子どもの中で、遺産は均等に配分されます。

法定相続人が第三順位の、被相続人の兄弟姉妹のみの場合は、下記の分配となります。

法定相続人になれる人

・法定相続人が第三順位の兄弟姉妹のみで全員が全血兄弟姉妹※の場合  →兄弟姉妹の間で均等に配分
・法定相続人が第三順位の兄弟姉妹のみで全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹※がいる場合 →半血兄弟姉妹の法定相続分は、全血兄弟姉妹の1/2

※全血兄弟姉妹とは、母親と父親が同じ兄弟姉妹のこと
※半血兄弟姉妹とは、父親か母親のどちらかが違う兄弟姉妹のこと

法律上は、被相続人の子ども間の分配で、全血兄弟姉妹か半血兄弟姉妹かで配分の差は出ません。しかし被相続人の兄弟姉妹間での分配となると、全血兄弟姉妹か半血兄弟姉妹かにより差が出ます。

こうした法定相続人の範囲や、相続の状況による持分比率の差について、疑問や不安がありましたら、いつでもご相談をお受けいたします。ぜひお早めにご相談ください。

遺産相続トラブル例5:認識外の身内から相続分を主張される

次に、認識外の身内から相続分を主張される、といったトラブルについて解説します。

認識外の身内として想定されるのは、事実婚の相手や、隠し子などでしょうか。まず事実婚状態の内縁の妻や内縁の夫に関しては、役場に婚姻の届出をしていないなら、相続人にはなれません。

また被相続人が男性の場合、被相続人が認知していない「自称隠し子」も相続人とは認められません。しかし被相続人が認知した子については、非嫡出子(法律上の夫婦以外の男女の間に生まれた子)であっても相続人になれます。

非嫡出子も嫡出子(法律上の夫婦の間に生まれた子)も、法定相続できる持分は同じです。
また代襲相続※についても、非嫡出子と嫡出子の間に制度上の差はありません。つまり、非嫡出子が被相続人よりも先に死亡した場合等は、非嫡出子の子が、非嫡出子の相続人としての立場を代襲して相続ができます。(※代襲相続とは相続人が死亡している場合に代わりにその子どもが相続すること)

非嫡出子として相続するためには、前述のとおり被相続人による認知が必要ですが、生前に認知されていなくても、死後3年以内なら認知の訴えを提起できます。訴えが認められれば相続人になれる仕組みがあるわけです。

他に、認識している身内以外から相続分を主張されるケースとしては、被相続人が遺言で「生前介護施設でお世話になった職員のAさんに遺産を分けたい」と残している場合などがあります。遺産を「相続人以外への第三者に遺贈」するケースです。

遺贈の金額として気持ち程度であれば、相続人も特に問題視しないかもしれません。しかし遺言の内容が、相続人以外の第三者に「財産の半分を渡す」「土地のすべてを渡す」と金額が大きい場合、相続人にとって「はい、そうですか」と受け入れることは難しいでしょう。こうした場合に法定相続人が取れる手段をご紹介します。

認識外の身内から相続分を主張されたときの対処法

認識している身内以外から相続分を主張された場合は、法律や公的文書を確認し、内容を把握した上で法律にそって対応します。

公的文書を確認して法律的に相続を進める手順

・被相続人の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を確認
 ↓
・認識していない法定相続人がいることが証明されたら‥
 ↓
・法定相続人全員で遺産分割協議をする
 ↓
・遺産分割協議の折り合いがつかない場合は調停・審判をする

はじめに戸籍などの公的文書を調べて、認識していなかった身内が正式な法定相続人だと判明した場合のその後の手続きは、既知の身内のみが法定相続人の場合と同じです。法的な流れにそって、相続手続きを進めます。

ただ関係者のみでトラブルを解決しようとしても、感情が絡むためにうまく行かないかもしれません。手続きがスムーズに進まない場合は、弁護士や税理士など、法律の専門家を間に入れた方が疲弊せず結果的に早く解決できるでしょう。

遺産相続トラブル例6:遺言書の内容が偏っている

遺産相続において、遺言は被相続人の最終の意思を実現するものです。したがって、被相続人の財産を、誰にどの程度遺すかは、被相続人が自由に決定できます。ですが「第三者に遺産を全部遺贈する」「特定の相続人にのみ相続させる」といった、明らかに内容に偏りがある遺言書が作成された場合は、相続トラブルになる可能性があります。

以下は、問題のある遺言内容の事例です。

遺言書の内容に問題がある例

・第三者に遺産を全部遺贈する
・特定の相続人にのみ相続させる
・遺言書の形式が無効
・遺言の内容が遺留分を無視

続いて問題のある遺言書への対処方法をご紹介します。

偏った内容の遺言書への対処方法

遺言書の内容が偏っていて納得できないときは、遺言書の効力を確認しましょう。

遺言書は要件を満たさなければ無効です。被相続人の遺言作成時の判断能力と作成状況によっては、遺言書自体の効力が疑われることもあります。

遺言書の内容が偏っていると感じたら、まずは遺言書の有効性を確認しましょう。遺言書の有効性についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。参考になさってください。

遺言書についてご不明なことや質問がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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生前の準備で遺産相続トラブルを回避する方法

被相続人の死後に起こる様々な遺産トラブルのケースと、事後の対処法を紹介してきました。しかし遺産トラブルは、生前からの準備によって回避できます。次項からは、遺産トラブルを、事前に回避する方法についてご紹介します。

遺産トラブル事前回避法1 財産目録を作っておく

自分の全財産を正確につかむことは、財産を所有する本人でさえ大変な作業です。ましてや被相続人の死後に、被相続人の全財産を相続人が正確に把握することは、非常に困難な作業と言えるでしょう。

相続が発生した後、遺言書に書かれていない財産の存在を他の相続人から指摘されるなどして、遺産の範囲をめぐる争いになることも珍しくありません。

遺言を遺す者は、遺産の範囲をめぐるトラブルを可能な限り防止するため、生前から財産目録を作っておくとよいでしょう。

財産目録には次のものを記載します。

財産目録に記載すること

・土地
・銀行預金
・株など有価証券
・自動車
・貴金属類
・住宅ローン
・生命保険 

プラスの財産もマイナスの財産もすべて財産目録に記載しておくことが、後々のトラブル回避に有効です。

遺産トラブル事前回避法2 相続税がかかるか否かの確認

遺産相続に際して、そもそも相続税がかかる財産規模かどうかを、事前に調べておくとよいです。ちなみに2015年から相続税の基礎控除の額が引き下げられました。この結果、以前にも増して「相続税対策をしたい」と考える方が増えています。

しかし実際には、基礎控除の額が引き下げられても「相続税が発生しない」ケースも多いです。そもそも相続対策が必要か否かについては、自分で試算をしてみるとよいでしょう。

遺産トラブル事前回避法3 遺産の正しい分け方を知ろう

不動産の評価や分割および遺産全体の分割について、正しい方法を知っておくことは円滑な遺産分割のために非常に重要です。

相続人の間のもめごとを避けるには、全員が法定相続分をしっかり認識したうえで、遺産分割協議をするようにしましょう。

遺産トラブル事前回避法4 全法定相続人の数を確認する

相続人の数が増えると、遺産相続に関わる人間が増えます。相続人が増えれば、下記のようにトラブルが発生する確率も高まります。

相続人の数が多いと発生するトラブル

・話がまとまらない
・相続人が後から出てくる
・協議に参加しない者がいて話し合いが進まない

相続人の多さから生まれるトラブルを避けるには、まずは戸籍謄本など公的書類を調査しましょう。公的書類を調査すれば、被相続人の家族関係を把握できます。被相続人の家族関係を明らかにして、全相続人の数と所在を把握しましょう。

具体的なトラブル回避方法としては、把握した相続人のうち被相続人と関わりの浅い相続人に対して「相続放棄」を交渉するといった方法があります。相続を複雑にしないために相続放棄をお願いし「相続人から外れてもらう」というわけです。

遺産トラブル事前回避法5 生前の密なコミュニケーション

遺産相続トラブルで最も多い原因はコミュニケーション不足です。コミュニケーション不足が、相続人の間で遺産分割に対する考え方に行き違いを生み、事態を複雑にします。

コミュニケーション不足によるトラブル1 不安から生まれる不満

コミュニケーション不足が招くトラブルとして「正確な情報を知らないために不満を感じる」があります。

たとえば、男兄弟2人のうち、二男は両親の老後にあまり関わっていなかったとします。両親と密にコミュニケーションをとっていないため、二男は相続発生後に両親の財産がどうなるか知りませんでした。わからないから感じる不安が不満に変わり、遺産分割の内容に合意せずにトラブルになる、といったケースです。

遺産相続手続きの中でも特に以下のスケジュールに関する情報は、なるべく早く相続人全員に伝えましょう。

  • ●財産の全容が判明する時期
  • ●遺産分割の話し合いの時期
  • ●相続申告の時期

関係者全員がスケジュールを把握していれば、感情的にこじれることは少ないです。円滑な遺産分割が実現しやすくなります。

コミュニケーション不足によるトラブル2 現金預貯金額への不満

遺産に現金・預貯金が少ないと、同居していた兄弟姉妹が使い込んだのではないか?と、他の相続人が疑念を抱くことは多いです。

生前に被相続人のお金の管理を任されていた相続人は、細かくお金の出入りの記録を付けておくと良いでしょう。疑いを持たれにくくなります。

加えて通帳のコピー・入出金明細など各入出金の証拠も残しておくとよいです。

遺された財産については、できるだけ早く「財産目録」を作成しましょう。すべての遺産が相続人全員にとってオープンな状態であることが望ましいです。

遺産トラブル事前回避法6 上から目線の強気な姿勢は禁物

円滑な相続のために、他の相続人に対しては「ご協力をお願いします」という、謙虚な姿勢や態度で接しましょう。間違っても「財産を分けてやる」といった強気の態度で接してはいけません。相手の手間を減らすため、自分から相手方に出向き、話し合うのも効果的です。

遺産トラブル事前回避法7 同居と別居の差を理解する

被相続人と同居していた相続人と別居していた相続人は、お互いに対して様々な思いを持っています。お互いが、相手に対して恨みや妬みを持つこともあるでしょう。しかし、複雑な思いをこらえ、相手の立場を慮って歩み寄れるかどうかが、トラブル回避の鍵になります。

同居/別居の具体例を挙げて、相続人それぞれの立場と思いを想像してみましょう。

同居/別居の具体例:

・長男が同居して両親の面倒をみてきた
・二男は家を出て自分の妻、子どもと別の場所で暮らしている

このケースでは、長男は以下のように考えています。

長男の思い:

二男には介護の苦労が分かってもらえていない

そして二男はこう↓考えています。

長男の思い:

・長男がタダ同然で一軒家に両親と同居している
・生活費も両親に提供してもらっている

二人はお互いに「相手の方が自分より楽をしている、得をしている」と感じています。

このケースでは、お互いが相手へのねぎらいや感謝と尊敬の気持ちを持ち、それを相手に対して何かにつけて表現していれば、相続の場面でのトラブルは防げるでしょう。

どう表現するかというと、長男から二男に対してはこのような感じです。

長男から二男への気遣い

・たまに訪れる二男に「来てくれてありがとう」と感謝の気持ちを示す
・ときどき二男に車代(気持ち程度でいい)や手土産を持たせる

こうしたちょっとしたことで関係性は良くなります。

一方、二男側は長男に対して以下のように接するとよいです。

二男から長男への気遣い

・「両親の面倒を見てくれてありがとう」と、長男に対して感謝の気持ちを持つ
・長男/長男の妻双方に感謝の言葉を伝える

日頃の人間関係が円滑ならば、相続発生後もスムーズに遺産を分割できるでしょう。

遺言が遺産相続トラブル予防に効果的

遺産相続トラブルの予防に遺言の作成をおすすめします。民法は財産を相続する側よりも、遺す側の意思を尊重しています。遺言がない場合に、財産を相続できるのは法定相続人のみです。しかし遺言があれば、原則は遺言の内容で相続が行われます。遺言の作成は、将来の相続トラブルの火種を消すために最も有効な手段なのです。

ただし、遺言によって解決できないケースもあります。遺言で解決できない場合には「信託」を使う方法があります。遺言作成は、遺産相続トラブルの予防に効果を発揮するのですが、二代先までの対策はできません。遺言の効力の限界は次の代までだからです。二代以上先の相続まで対策したい場合は「信託」の活用を考えるとよいでしょう。

また遺言書を作成しても、かえって遺言書がトラブル要因になることもありえます。

遺言が法定相続人の遺留分を侵害することもありますし、自筆証書遺言が、相続人から「偽者だ」と言われることもあります。

遺言書による遺産トラブルを防ぐためには、遺言書の内容や作成方法にも配慮しなければなりません。(遺言書の作成方法はこちらの記事で解説しています。)

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。遺産相続トラブルの事例と回避策をご紹介しました。

過去には関係良好だったとしても、遺産相続を機にトラブルが勃発するご家族は少なくありません。

すでに相続トラブルが起きていて一刻も早く解決したい‥といった状況でしたら、ぜひ専門家の知恵を借りましょう。専門家は様々な相続の知見を積んでいます。一般の方が「レアなケースでは?」考える状況も、たいてい過去に経験しています。

1人で悩んでいては全くどうにもならないことも、信頼できる人と話をするだけで打開策が見つかることは多いです。ましてやその分野での経験豊富な専門家に相談すれば、専門知識を生かした多くの有益な助言が得られることでしょう。

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