怪しい遺言書が出てきたが、どう対応したらよいのか知りたい

1.遺言書の偽造とは

目次

1.遺言書の偽造とは

2.遺言書が偽造されていたらどうするか

3.遺言書が偽造されていたときの責任

4.遺言書の偽造を防ぐにはどうしたらよいか

5.まとめ

遺言書が書かれていたとしても、遺言作成者が亡くなってから、遺言書の偽造や破棄などが問題になることがあります。

偽造・破棄の可能性が最も高いのは「自筆証書遺言」といわれています。自筆証書遺言は、遺言作成時に公証人及び証人が関与せずとも作成でき、自宅などに保管されることが多いからです。

遺言書は被相続人が遺産の処分について意思を書き残したものです。自筆証書遺言は、一定の要件に従って自筆で書く遺言書で、一人でいつでも作成できます。しかし、本当に被相続人が遺言書を書いたかどうかを立証する手段がなく、遺言書が他の人によって偽造されるケースもあります。

遺言書の偽造とは、権限が無いのに他人名義の文書を作成することです。

具体的には、遺言書の内容の本質的な部分を遺言者の承諾なく書き換えてしまうことなどをいいます。例えば遺言書の条項を書き換えるとか、財産目録を書き換えるなどの行為をいいます。

なお、本質的ではない軽微な変更は偽造ではなく変造と言われます。

遺言書の破棄とは、遺言書の効用を害する行為をいいます。

例えば、遺言書を破り捨てる行為、遺言書を燃やす行為、遺言書を隠す行為のことです。

2.遺言書が偽造されていたらどうするか

遺言書の偽造が疑われる場合にはどのような対応をすればいいのでしょうか。

筆跡鑑定を依頼することがあります。裁判では、当事者が行った筆跡鑑定書を証拠として提出可能ですが、当事者の申出により、裁判所が筆跡鑑定を行うこともあります。

もっとも、筆跡鑑定の結果は、筆跡鑑定人ごとに内容が異なることが少なくなく、精度としては、鑑定結果のみで偽造の有無を認定できるほどではありません。裁判所でも、あくまで証拠の1つとして考慮されるに過ぎません。

カルテ等の取り寄せは認知症等を患っている遺言者に遺言書を作成させた場合に考えられる対応です。

遺言者に「遺言能力」があったのかどうかを確認する手段です。

また、遺言書の作成日とされている当時に、周りにいた方の証言などがある場合は、それも、本人(の意思)で作成することができないことを示すものですので、偽造を推認する証拠となり得ます。

遺言の偽造の疑いがある場合には、調停の申立て、遺言無効確認の訴え提起ができます。

訴えを提起する前に、原則として調停を申し立てなければならないこととされているため、まずは家庭裁判所に家事調停を申し立てます。

調停で解決しない場合や、調停前から解決の余地がない場合には、遺言無効確認訴訟をすることになります。

3.遺言書が偽造されていたときの責任

遺言書を偽造し、それを真正な遺言書として他の相続人に示した場合、どのような責任に問われるのでしょうか。

3-1.民事上の責任

遺言が偽造された場合、その遺言内容は遺言者の意思により作成されたものとは言えませんので、その遺言は無効です。つまり遺言書の偽造は遺言の無効原因となります。

自筆証書遺言は、基本的には全文を自書しなければ無効となってしまいますが、偽造された遺言は、「自書」性の要件を満たさないため無効となります。その場合、偽造された遺言はなかったものとして、遺産分割が行われることになります。

民法では相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は相続人となることができないと規定しています。相続欠格事由に該当する人は相続人となることができません。

また、受遺者についても受遺欠格として受遺者となることができません。

ただし、相続欠格が生じた場合でも代襲相続は生じるので、ご注意ください。

たとえば、被相続人の子が遺言書の偽造・隠匿を行ったため、相続欠格者となって相続人でなくなった場合であったとしても、その子の子ども(被相続人の孫)は、代襲相続人として被相続人の相続人となります。

3-2.刑事上の責任

遺言書を偽造した場合には、民事上の責任が生じる他に、刑事上は有印私文書偽造罪に該当する可能性があります。

まず、遺言書は公文書ではない「権利、義務又は事実証明に関する文書」にあたりますので「私文書」にあたります。また、遺言書は押印がないとそもそも無効ですので、「有印」の私文書となります。そのため、遺言書を「偽造」したとされた場合、有印私文書偽造罪に該当することとなります。

有印私文書偽造罪の法定刑は3月以上5年以下の懲役刑です。なお、変造罪でも同様です。

遺言書のような他人の権利義務に関する文書を破棄した場合には、私文書を破棄したものとされ、私用文書毀棄罪に該当する可能性があります。

なお、同罪の法定刑は1月以上5年以下の懲役です。

さらに、この有印私文書を「行使」した場合、偽造有印私文書行使罪に該当する可能性があります。「行使」とは、偽造された私文書等を真正なものとして他人に提示するなどして内容を認識できるようにした場合のことをいいます。

以上のように、遺言書を偽造し、真正な遺言書として他の相続人に提示した場合、民事と刑事それぞれの重い責任を負う可能性があるのです。

4.遺言書の偽造を防ぐにはどうしたらよいか

遺言の偽造・隠匿に対する対応策としての、上記2.の筆跡鑑定、カルテ等の取り寄せ、調停の申し立てといった対応策はいずれも事後的な対応策であり、遺言の偽造を予防することはできません。

遺言の偽造を予防する策としては、公証人及び証人が関与する公正証書遺言の作成が適当です。公正証書遺言であれば、隠されたり、捨てられたりする心配がありません。

一方、破棄・隠匿の場合には、事後的にできる対応があまりありません。

ただし、そもそもの原因として保管がしっかりしていないという点が挙げられます。

そこで、遺言書の原本が公証役場に保管される公正証書遺言を作成することが事前の対応として考えられます。

公正証書遺言であれば、破棄や隠匿はもちろん、偽造・変造の可能性はほとんどありません。

5.まとめ

以上が、遺言書が偽造などされたときの対応方法と、その予防方法についての説明です。

遺言の偽造・隠匿に対する対応策としては、公正証書遺言であれば、隠されたり、捨てられたりする心配がなく、偽造される可能性も自筆証書遺言と比べて低いので、お勧めします。

遺言書などについてのお問い合わせがありましたら、当税理士法人まで宜しくお願い致します。

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