【第11回】中小企業の事業承継 ローン・補助金・ファンドの利用

事業承継

この記事は、中小企業の事業承継解説の【第11回】です。今回で最終回となります。ここまでお読みいただきありがとうございます。

第11回は、事業承継で必要となる資金を借入金で調達する方法を解説します。

※借入金以外の有利な事業承継制度については過去記事をご覧ください。
・事業承継税制の利用(第5回第6回第7回
・民事信託の活用(第8回第9回第10回

借入金の活用は、事業承継をスムーズかつスピーディに進めるために有益な手法です。ぜひ、早めに概要をつかんでおきましょう。

1.事業承継で必要な資金とその調達法

事業承継を円滑に進めるために、多額の資金が必要になることがあります。たとえば以下の費用を支払うための資金です。

・贈与税
・相続税
・不動産取得税
・自社株式の購入資金

では、どうすれば必要な資金を調達できるのでしょうか。今回は以下3種類の資金調達方法をご紹介します。

・事業承継ローン
・事業承継補助金
・事業承継ファンド

次から、順番に解説します。

2.資金調達方法その1事業承継ローン

事業承継ローンとは、事業承継資金に充てるための民間/政府系機関からの融資です。具体的な商品名は事業者によって異なりますが、この記事では「事業承継ローン」で統一します。

事業承継ローンは、必要な資金を外部の金融機関から調達するものです。借入金なので、利息をつけて返済しなくてはなりません。

2-1.事業承継ローンのメリット

事業承継ローンには、通常のローンにはないメリットがあります。

資金調達の目的が事業承継であることが貸主である金融機関に認められると、返済期間や利率などが通常の借入より有利になる場合があるのです。

以下は事業承継ローンの融資条件の例です。

【事業承継ローン融資条件の例】

1.中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者(候補者を含む)と共に事業承継計画を策定していること
 (融資後9年以内に事業承継の実施が見込まれている者に限ります)
2.安定的な経営権の確保等により事業の承継・集約を行う者であること
3.経営承継円滑化法第12条第1項第1号の規定に基づき認定を受けた中小企業者の代表者であること(同項第1号イに該当する方に限る)

2-2.政府系の事業承継ローン

事業承継ローンとして最も有名なのは、政府系金融機関である日本政策金融公庫が実施する「事業承継・集約・活性化支援資金」です。

民間の金融機関より融資条件が良かったり、優遇の可能性があったりといったメリットを持ちます。

事業承継・集約・活性化支援資金を利用できればラッキーですが、この事業承継ローンは融資審査で求められる事項が多いです。ここはデメリットと言えます。

2-2.事業承継ローンの受け方

事業承継融資を受けるには以下の準備が必要です。

  • ●贈与税や相続税の試算
  • ●どれくらいの費用が発生するかの試算
  • ●会社の財務情報から将来の事業展開・収益を予想すること
  • ●事業承継計画書の作成

資料の準備は、自分だけでは難しいかもしれません。ぜひ専門家にご相談ください。例えば顧問契約している税理士など、書類作成や申請手順に詳しい専門家に相談するのが効率的です。

民間・政府系問わず、事業承継ローンを利用するときは事業承継計画書の作成が必要です。

2-3.事業承継ローンには利息が発生

事業承継ローンは借入金なので、利息が発生します。一括で払う場合に比べて支出総額は多くなります。

それでも高額になりがちな出費を分割して払えるのは大きなメリットです。

2-4.事業承継ローンは事業の拡大費用に使える

事業承継ローンの使いみちは自社株式の取得費用に限定されません。事業承継に付随して発生する設備投資の費用に充てることもできます。

たとえば

・工場等設備更新の費用
・新規事業の展開にかかる初期費用

なども融資対象として成立する可能性があります。こうした使い勝手の良さも、事業承継ローンのメリットの1つです。

2-5.事業承継ローンの注意点

つづいて事業承継ローンの注意点です。

2-5-1.時間がかかる

事業承継ローンは、申請をしたらすぐ借りられるわけではありません。申請後に、事業承継計画書の審査を受ける必要があります。2ヶ月くらいかかることもあるようです。

資金確保の緊急性が高い場合には使いにくいです。可能であれば事業承継前に準備を進めておきたいですね。

2-5-2.審査に通らないことがある

計画書を作成し提出しても、必ず融資を受けられるわけではありません。審査に通らず、融資を受けられないこともあります。

たとえば

・既存借入の返済に滞りが発生している
・税金の未納が発生している

といった場合は審査の通過は不可能でしょう。

つづいて「事業承継補助金」を解説します。

3.資金調達法その2事業承継補助金

事業承継補助金は、中小企業庁の制度で、返済が不要です。

ただし問題があります。事業承継補助金は、恒常的な制度ではありません。いつ打ち切りになるかわからないのです。

令和元年度の補正予算による募集はありました。しかし次回の公募があるかどうか、わかりません。利用したい場合は、中小企業庁など公式な情報が掲載されるWEBサイトを定期的にチェックして、最新の情報を確保するようにしましょう。

3-1.事業承継補助金の対象

事業承継補助金を受けるには、助成の対象となる事業をしていなければなりません。

補助対象となる事業は以下6種です。

  1. 1.新商品の開発又は生産
  2. 2.新役務の開発又は提供
  3. 3.商品の新たな生産又は販売の方式の導入
  4. 4.役務の新たな提供の方式の導入
  5. 5.事業転換による新分野への進出
  6. 6.上記によらず、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組等

ご覧いただければわかるのですが、対象になるのは、承継後に新規事業を展開しようとする活動を助けるものとなっています。事業承継補助金の目的は、事業承継や事業譲渡をきっかけに、経営革新を希望する事業者の支援なのです。

3-2.事業承継補助金の注意点

事業承継補助金の注意点としては、自社株式の購入資金や贈与税・相続税の支払いには使えない、ということがあります。

株式取得の資金が足りない場合は、事業承継税制の利用をご検討ください。
第5回第6回第7回記事で解説)

4.資金調達法その3事業承継ファンド

つづいて事業承継ファンドを解説します。後継者候補が以下の状況のときは、事業承継ファンドを利用する選択肢があります。

・後継者候補が存在しないが廃業やM&Aは考えていない
・後継者候補はいるが未熟で現段階で経営を任せられない

事業承継ファンドについて、次から詳しく解説しますので、お読みください。

4-1.事業承継ファンドとは

事業承継ファンド、資金提供者から見れば投資の一種です。

事業承継ファンドは多くの人から資金を集め、集めた資金を株式や不動産などに投資して運用します。運用の結果得られた利益は投資者へ再分配します。こうしたスキームを回すのが事業承継ファンドです。

経営者から見れば、事業承継ファンドの利用は、会社を一時的にファンドに売却することを意味します。

4-2.事業承継ファンドの仕組み

事業承継ファンドは、まず現経営者から会社の株式を取得し、会社の新たなオーナーとなります。

事業承継ファンドは、自分たちに議決権があるうちに、適任者を後継者として育てます。後継者の候補は、社内の人間には限られません。必要に応じて、外部から人材を調達して育成することもあるでしょう。

と同時に事業承継ファンドは売上を増やして利益を上げ、企業価値を高めるよう働きかけます。

目的を達成した後に株式を売却することで、事業承継ファンドが大きな利益を得る、という仕組みです。

4-3.事業承継ファンドの種類

事業承継ファンドには、民間ファンドの他に公的ファンドもあります。

公的ファンドの例としては、経済産業省所轄の独立行政法人である中小企業基盤整備機構が出資するファンドがあります。

公的ファンドの目的は中小企業の支援です。資金を投資運用して中小企業の事業承継を支援することで、中小企業が成長し価値が増えることを目指しています。

4-4.事業承継ファンドを利用するメリット

事業承継ファンドを利用するメリットは、事業承継が楽になることです。

4-4-1.後継者問題を解決するメリット

事業承継ファンドは、購入した会社の社風や理念を理解して後継者となる人材を教育します。現経営者にとっては理想の事業承継が実現しやすくなると言えます。

事業承継ファンドは、後継者不足を解決するノウハウを豊富に持つことが多いです。一般的に事業承継ファンドが派遣するスタッフは経験豊富で、従業員へのアドバイスも的確です。社員全員の能力や効率が上がる効果も期待できます。

現経営者が悩んでいた事業承継の問題をファンドと共有できれば、意見を出し合って解決策を導き出したり、先に進めることができるでしょう。経営者にとっては心強いことです。

4-4-2.キャッシュフローが健全化するメリット

所有する自社株式を事業承継ファンドに売却すれば、早期に現金化できます。手持ちの現金が増えれば、キャッシュフロー面で大きなメリットがあります。

4-3.事業承継ファンドを利用するデメリット

事業承継ファンドの利用には、デメリットもあります。それは、ファンド選定の手間です。

業種や業界で必要な情報が異なるため、事業承継ファンドが保有する支援ノウハウは様々で、得意不得意があります。

自社と合わないファンドを選んでしまうと意味がありません。多数の中から自社にフィットするファンドを選定するには時間がかかるでしょう。

この後の章で、おすすめのファンドの選び方をご紹介しますので、参考にしてください。

4-3-1.事業承継ファンドの注意点

事業承継ファンドは、どんな会社でも支援できるわけではありません。

事業承継に悩む中小企業の中には、金融機関からの多額の借入金がある会社があります。また販売目途の立たない不良在庫を大量に抱えた会社もあります。

事業承継ファンドは、こうした不良会社の支援も想定しており、支援を受けることが可能です。

ただし、借入残高や不良在庫があまりにも多い場合は、審査に通りません。その結果事業承継ファンドは利用できない、ということになります。

4-4.事業承継ファンドの選び方

事業承継ファンドの選び方をお伝えします。

4-4-1.まず公的ファンドを選ぼう

実は専門家の間では、事業承継ファンドを利用するなら、まず中小企業基盤整備機構が関係する公的ファンドを利用すべきと言われています。

その理由は、

・公的ファンドは中小機構が関わるので利益第一主義ではない
・問題がある会社の事業承継案件でも引き受ける可能性がある
・私的ファンドは短期利益を追求するので長期的視野での後継者教育や成長支援は難しい

ということです。

多くの点で、私的ファンドより公的ファンドの方が利用者にとってメリットが多いのです。

4-4-2.ファンドの目的を確認しよう

ファンドが購入した株式を最終的にどう処理する方針であるか?もファンド選びの重要な判断要素です。

ファンドの目的は以下の2つにわかれます。

・後継者への売却が前提か
・上場して市場で売却することを目指すのか

非上場企業を育てて企業価値を高め、株式上場により多額の売却益を得ることを目的とした活動を行うファンドもあります。

しかし上場を望まないなら、こうしたファンドを利用する選択肢はあり得ません。

4-4-3.関係者の相性が重要

事業承継ファンドをめぐる関係者の間の相性は重要です。関係者としては、以下の人物が考えられます。

・事業承継ファンド運営者
・ファンドが選出する責任者
・現経営者

各自の意向があまりに離れてしまうとトラブルになるばかりです。円滑な事業承継も望めません。もし基本方針で合意できない場合は、ともに活動するのはやめた方がよいでしょう。

たとえば会社運営の方針として、以下の(1)と(2)では基本姿勢が180度違います。

(1)大胆な改革をする
(2)現在の社風や方針を維持する

こうした経営のコア部分で意見が一致しないファンドは、選ぶべきではありません。

事業承継ファンドの利用には、メリットとデメリットがあります。利用前に専門家へ相談するなど、多角的に検討してから、進めるようにしましょう。

5.事業承継で使える資金調達方法のまとめ

最後に、第1回から第11回に渡って解説してきた、事業承継で使える全部の制度をまとめます。

全事業承継制度を比べると、次の順番で利用を検討するのが良いでしょう。

1.事業承継税制
2.民事信託

1と2を補完するもの、あるいは別の切り口で支援するものとして、今回ご紹介した以下の資金調達法を利用すると良いでしょう。

・事業承継ローン
・事業承継補助金
・事業承継ファンド

事業承継ローンは後継者が事業承継で必要になる資金を融資するものです。審査があり、元本の返済と利息の支払いも発生します。

中小企業庁が実施する事業承継補助金制度は、返済が必要ないです。ただし、いつまで使えるかわかりません。また利用目的が、事業承継にともなう事業拡大や新規事業立上げに限られます。株式の買取や納税には使えません。

後継者が確定していない場合は、事業承継ファンドの利用も考えられます。事業承継ファンドが現経営者に代わって後継者と事業を育成し、最終的には株式売却で利益を出します。

6.まとめ

以上、全11回で中小企業の事業承継を解説しました。主に税務処理の観点から解説しましたが、事業承継をお考えの方に参考にしていただけると嬉しいです。

事業承継では、様々な要素を複合的に考えて計画しなくてはなりません。最適解がどの方法なのか、は会社によって違います。個々の事情を踏まえないと、適切な事業承継計画は作れないものです。計画作成には専門家の知識やノウハウが助けになります。ぜひ1人で悩まずに、信頼できるどなたかに相談してみてください。

私ども相続専門税理士法人ともにでも、いつもご相談を受け付けております。ぜひお気軽にご相談ください。

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