【第6回】中小企業の事業承継・株式引継ぎと事業承継税制(2)贈与税の納税猶予および免除

中小企業の事業承継【第6回】は、事業承継税制を利用して贈与税の納税猶予を受けるための要件と手順について解説します。
贈与税の納税猶予を受けるために理解したいことは以下の3つです。

・要件
・納税猶予の流れ
・免除までの流れ

順番にわかりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んで全体の流れを理解してください。流れがわかれば、事業承継にともなう支出の削減に役立ちます。

事業承継税制の要件

まず事業承継税制を受けるための要件を解説します。

事業承継税制を受けられる会社

以下が、事業承継税制の適用を受けるための会社に関する要件です。

【会社の要件】

(1) 中小企業者であること
(2) 上場企業ではないこと
(3) 風俗営業会社ではないこと
(4) 従業員が1人以上であること
(5) 資産保有型会社等に該当しないこと

(5)の資産保有型会社等が、わかりにくいかと思います。「資産保有型会社等」を解説すると、以下にあてはまる会社のことです。

【資産保有型会社などの条件】

・総資産に事業用資産が占める割合が70%以上の会社である資産保有型会社
・総収入金額のうちに非事業用資産の運用収入が占める割合が75%以上の会社である資産運用型会社

ただし上記に当てはまっても、常時雇用する従業員(後継者自身、後継者と生計を一にする親族は除きます)が5人以上いるなど、事業実態があるとみなされた場合は資産管理型会社等にはなりません。

特例承継計画の必要性

事業承継税制の要件を満たす会社が、事業承継税制の特例措置を利用する場合は、特例承継計画を作る必要があります。特例承継計画には、認定申請会社の後継者や承継までの具体的な経営計画を記載します。

都道府県知事への届出

特例承継計画を作成したら、認定経営革新等支援機関(税理士や商工会、商工会議所など)の指導及び助言を受けなくてはなりません。(認定経営革新等支援機関は中小企業等経営強化法第21条第2項に規定されています。)

認定期間からの所見を計画に記載したら、次は都道府県知事に特例承継計画を提出して確認を受けます。特例措置の期限は令和5年3月31日までなので、特例承継計画は期限日の令和5年3月31日までに提出しなくてはなりません。

後継者と先代経営者に求められる要件

都道府県への届出が終わったら、後継者へ自社株式を贈与します。贈与実行時には、贈与に関わる人は要件を満たさねばなりません。贈与に関わる人とは以下の方のことです。

1.贈与を受ける後継者(受贈者)
2.先代経営者(贈与者)

つづいて、贈与に関わる人ごとに、満たすべき要件を解説します。

受贈者(後継者)の要件

まず受贈者(後継者)についての要件です。事業承継税制を利用するためには、後継者はまず下記の要件を満たさねばなりません。

【後継者(受贈者)が満たすべき要件】

(1)会社の代表権を有していること
(2)18歳以上であること
(3)役員への就任から3年以上が経過していること
(4)後継者本人と後継者と特別な関係がある者とで会社の総議決権数の50%超の議決権数を保有すること

さらに、後継者は議決権についての以下要件も満たす必要があります。後継者の人数により要件が変わりますので、両方を解説します。

・後継者が1人のとき
・後継者が2人以上のとき

後継者が1人のときは下記要件を満たす必要があります。

後継者1人のときの議決権要件


後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多く議決権数を保有する

後継者が2人以上のときは下記要件を満たす必要があります。

後継者2人以上のときの議決権要件

・総議決権数の10%以上の議決権数を保有する
・後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多く議決権数を保有する

【コラム:受贈者(後継者)要件の変化】

事業承継税制が創設された当初は「後継者は先代経営者の親族であること」という要件がありました。しかし平成25年の改正で、この要件はなくなったのです。

現在は親族以外への事業承継でも、納税猶予の特例を受けられます。たとえば、番頭格の社員への承継でも使えるということです。

・後継者が過半数の議決権を有していること
・後継者がグループの中で筆頭株主であること

事業承継税制の中に上記の要件があることからも、税制の目的がわかります。当局は「後継者に事業を引き継いだ後も、会社が安定して経営される」ということを、望んでいるのです。

贈与者(先代経営者)の要件

次に贈与者である先代経営者についての要件です。

【贈与者が満たすべき要件】

(1)会社の代表権を有していたこと
(2)贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
(3)贈与時において、会社の代表権を有していないこと

贈与者については、年齢や役員の在任期間などの要件はありません。贈与者に求められる要件は、後継者に求められる要件の裏返しと思っていただくとわかりやすいです。

先代経営者が、会社の支配権をそのまま後継者に引き継ぐことが事業承継税制の前提です。引き継ぎ後は、先代経営者は経営から離れる必要があります。

取締役の要件

一般的には代表取締役の人数は会社法では規定されていません。このため、複数の取締役が代表権を持っていても法的には問題ないわけです。

会社法では取締役の要件について以下のように書かれています。

取締役会設置会社においては、取締役は、三人以上でなければならない。

出典引用:会社法第331条第5項

次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。

一 代表取締役
二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの

出典引用:会社法第363条

つまり、こちらが法律で決まっていることです。

・取締役は3人以上
・代表取締役が業務を執行する
・取締役会で選定された取締役が業務を執行する

ということは、後継者の経営力に不安があるなら、先代経営者が代表権を持ったまま後継者が代表権を取得することが可能ということになります。

通常は後継者が経営業務を執行し、何かあったときには先代経営者が代表取締役会長として表に出る‥といったことが可能なわけです。

このやり方なら、取引先や銀行などの利害関係者と、今までと同じように安定した経営が続くことがアピールできます。

しかし事業承継税制を使う場合は、この「代表取締役を複数持つ」方式が使えません。

事業承継税制では代表者は1名

事業承継税制の適用を受ける場合は、「複数の取締役に代表権を持たせる」ことはできません。代表者は1名に決める必要があります。

理由は、事業承継税制を使う場合は、贈与者である先代経営者の要件に「会社の代表権を有していたこと」があるからです。つまり先代経営者は代表権を後継者に移さねばなりません。先代が代表権を持ったままでは、事業承継税制は適用できないのです。

経営承継円滑化法の認定

事業承継税制を適用するためには、経営承継円滑化法の認定を都道府県知事から受けねばなりません。

また贈与税の申告期間が始まる前に、認定の申請を済ませる必要があります。すなわち、贈与があった年の翌年1月15日までに申請しなくてはなりません。

贈与税の納税猶予手続き

事業承継税制の適用を受けると、贈与税の納税が猶予されます。しかし、何の条件もなしに支払いを待ってはもらえません。

経営承継円滑化法の認定が出たら、贈与税の申告期限までに、贈与税申告書と添付書類を納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

猶予条件としての担保提供

納税猶予のためには、申告書の提出と同時に、猶予される贈与税と利子税に見あった金額の担保を提供する必要があります。事業承継税制を利用したい方にとって、担保の準備は高いハードルになっていると言えるでしょう。

担保としては承継する株式自体も有効です。

ということは、引き継いだ非上場株式などを事業承継税制の納税猶予の担保として提供することが可能なわけです。租税特別措置法第70条の7第6項の規定により、納税猶予額と利子額に見合う担保の提供があったものとみなされます。

したがって「担保が用意できないから事業承継税制の利用はあきらめる」必要は全くないのです。

事業承継税制の要件を満たせなくなったら

事業承継税制の適用を受けて贈与を実行したら、適用後も一定の要件を満たす必要があります。要件を満たせなくなったときは、納税猶予の贈与税の一部または全部を、該当する期間に応じた利子税と共に納付しなければなりません。

しかし、やむを得ない理由で要件を満たさなくなった場合は救済もあります。救済については認定経営革新等支援機関で確認可能です。認定経営革新等支援機関は、税理士や商工会、商工会議所となります。

事業承継税制適用後に満たすべき要件

事業承継税制適用後に、義務付けられる要件は、5年経過まで/5年経過以降で、変わります。

以下に各期間で満たすべき要件をまとめました。

5年経過するまで(特例経営贈与承継期間)の主な要件

(1)後継者が会社の代表者であること
(2)雇用の8割以上を5年間平均で維持すること
(3)後継者が筆頭株主であること
(4)上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
(5)猶予対象株式を継続保有していること
(6)資産管理会社に該当しないこと

5年経過後の主な要件

(1)猶予対象株式を継続保有していること
(2)資産管理会社に該当しないこと

比較すると、5年経過した後は5年経過前までに比べて、求められる要件が少ないです。

納税猶予を継続するための手続き

納税猶予を継続するには、要件を満たすことに加えて、以下の手続きが必要です。

・特例経営贈与承継期間内は毎年継続届出書を提出
・5年経過後は3年に1回継続届出書を提出

継続届出書は、添付書類とともに納税地の所轄税務署に提出します。

提出を忘れるとその時点で納税猶予は取り消されます。取り消されると、猶予されていた税額の全てと利子税を納付しなければなりません。

また特例措置を利用しているなら、税務署だけでなく都道府県知事に対しても、最初5年の特例経営贈与承継期間中は毎年書類を提出する必要があります。

贈与税の免除と相続税の発生

さらに所定の条件にあてはまると、納税猶予されていた贈与税の全額または一部の納付が免除されます。

たとえば次のような場合です。

・贈与者であった先代経営者が死亡した
・特例経営贈与承継期間の経過後、会社が破産手続き開始の決定があった

上記のケースでは、免除届出書と免除申請書を提出することで、贈与税の免除が受けられます。しかし、代わりに別の税金が発生します。

先代経営者が死亡した場合で解説しましょう。

取得した株式は、先代経営者の死亡により、相続または遺贈で取得したものとみなされます。この結果、贈与時の株価で他の相続財産と合計され、この総額に対して相続税が課せられるのです。

つまり贈与税は免除されても、代わりに相続税の納税義務が発生することになります。

相続税が発生した時点で納付することもできます。しかし引き続き相続税についても納税猶予を受けることも可能です。相続税の納税猶予については次回【第7回】で解説します。

まとめ

事業承継税制の制度を利用した、贈与税の納税猶予および免税の要件や手続きの流れを解説しました。次回【第7回】は、事業承継税制を利用した相続税の猶予について説明いたします。

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