【第7回】中小企業の事業承継・株式引継ぎと事業承継税制(3)相続税の猶予と免除

中小企業の事業承継解説【第7回】です。第7回は、3回続いた「事業承継税制」シリーズ記事の最終回。非上場株式の承継で、相続税の納税猶予を利用するための要件とメリット・デメリットについて解説します。

前回の【第6回】では、贈与税の納税猶予を利用する方法について解説しました。こうした贈与税の納税猶予を利用した事業承継で前経営者が亡くなると、今度は相続税の納税が必要です。相続税支払いにおいても納税猶予の適用が可能なので、その方法を解説します。ぜひ最後までお読みください。

1.都道府県知事からの認定

贈与税につづいて相続税についても事業承継税制を適用して納税猶予を受けるなら、都道府県知事から経営承継円滑化法の認定を受ける必要があります。都道府県知事の認可が必要な点は贈与税と同様です。

事業承継に関わる、以下の3者がそれぞれの要件を満たす必要があります。

・会社
・後継者
・先代経営者

注意点は、認定に期限があることです。都道府県知事からの認定は、相続税の申告期限、すなわち相続が開始したことを知った日(先代経営者が亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に受けなくてはなりません。

認定を得られない場合は、事業承継税制が適用されません。この条件も贈与税と同じです。

2.納税猶予申告書の提出

相続税で納税猶予を受けるには、納税地の所轄税務署に相続税の申告書を提出する必要があります。申告書には「非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除」の適用を受けると記載します。また所定書類の添付も必要です。

2-1.担保の必要性

申請書提出と同時に、納税猶予される相続税額及び利息の利子税に見合う担保を提供しなくてはなりません。担保が必要であることは贈与税の納税猶予と同じです。

ただし贈与税と相続税とでは税額が異なります。したがって提供すべき担保の額は贈与税と相続税では違います。

2-2.相続する株式そのものが担保になる

しかも相続税の納税猶予を受ける非上場株式の全てを担保として提供すると、納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。

つまり承継した株式を担保として提供すると、相続税の猶予額に見合った担保が提供されたとみなされるわけです。

これなら担保の提供は難しい要件ではないと言えます。

2-3.相続税でも納税猶予を受ける要件

要件を満たせば、贈与税につづき相続税でも納税猶予を受けられます。次に挙げるのは、贈与税の納税猶予から、相続税の納税猶予を続けるための主な要件です。

相続税の納税猶予継続の要件

(1)上場会社、風俗営業会社、資産管理会社に該当しないこと

(2)後継者である相続人等が、相続開始時に次の要件を満たしていること
 ・会社の代表権を持っている
 ・後継者及び後継者と特別の関係がある者で、総議決権数の50%超の議決権数を持っている
・後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で、1番多く議決権を持っている

ただ贈与税の納税猶予からの継続であれば、贈与税猶予の時点で、上記の要件は満たしているはずです。納税猶予は制度利用を開始する初期が最も厳しい条件を課せられます。しかし、贈与税で適用からの相続税での制度利用であれば、既にその最も厳しい期間を経過しているわけです。

よって、継続の場合に、要件を満たすことは難しくはありません。

しかし相続発生時にそれまでと状況が変化し、要件のどれかを満たさなくなることもあり得ます。残念ながら要件を満たせないと、相続税の納税猶予は受けられません。残念ながら状況の変化で要件を満たせなくなった場合は、申告書の提出期限までに相続税を支払う必要があります。

3.相続税の免除

相続税の場合も事業承継税制を利用して免除を受けることができます。免除事由は以下となります。

事業承継税制適用した相続税の納税免除の事由

(1)後継者が死亡した
(2)経営承継期間の経過後に会社が破産手続きを始めた
(3)後継者が次の後継者に納税猶予を適用する贈与をした

上記事由を満たした場合は、以下2点の書類を提出すれば、納税猶予されていた相続税の全額または一部納付が免除されます。

・免除届出書
・免除申請書

以上の手続きをとって事業承継税制を活用すれば、非上場同族会社の引き継ぎ時にかかる贈与税や相続税が免除されるというわけです。

4.事業承継税制を利用するメリットとデメリット

各種税金が免除される事業承継税制にはメリットだけでなくデメリットもあります。

4-1.事業承継税制のメリット

まず事業承継税制利用のメリットをまとめると以下になります。

事業承継税制利用のメリット

(1)贈与税や相続税を払わなくてよい
(2)納税資金や株式の購入資金を準備しなくてよい
(3)自社株式評価額を引き下げるための株価対策がいらない

上記のうち特に(1)の納税が不要になるメリットが大きいです。

事業承継税制適用を検討する事業者のほとんどが、① の贈与税や相続税を支払わずに済むことを目的にしています。

4-2.事業承継税制のデメリット

つづいて、事業承継税制のデメリットを解説します。

事業承継税制のデメリット

(1)猶予期間中いつも猶予取消のストレスがある
(2)納税猶予取消の場合は猶予された税額プラス利子税の納付が必要
(3)手続きが複雑

デメリットのうち、(3)の手続きが複雑な問題は、専門家の力を頼れば解決できるので、大きな問題ではありません。ただ費用はかかりますので、専門家への依頼費用を必要経費に見込んでおくことをおすすめします。

事業承継税制利用における最大のデメリットは(1)の猶予取消のリスクと(2)の取消決定時の追加費用の負担です。

しかし事業承継税制とは、本来必要な納税を最終的に免除する特例です。利用に厳しい要件が課されるのは当然で、要件を満たさないなら納税者に特典を与える理由はありません。

デメリットと言っても得られるメリットに比べれば相対的に小さいと言えます。また要件さえ満たしていれば心配することはありません。総合的に見れば、事業承継税制利用のメリットは大きいです。

5.相続時精算課税制度併用で取消リスクに備える

納税猶予が取消されるリスクへの備えとしては、相続時精算課税制度を併用する方法があります。

相続時精算課税制度については【第4回】中小企業の事業承継・相続時積算課税での株式引継ぎと株価対策の記事で、詳しく解説しています。興味のある方はぜひお読みください。

相続時精算課税制度を利用すれば、納税猶予の取消で納めることになった贈与税の額を圧縮できます。

贈与税の税率は累進課税なので、自社株式が課税対象の場合は株式の評価額が高いほど税金も高くなります。贈与税の税率は最大で55%にも達します。

しかし、相続時精算課税制度を利用すれば税率は一律20%です。贈与税に比べて非常に低いです。また特別控除額2,500万円の枠を利用することもできます。こうした制度を組み合わせて税額を抑えることができるわけです。

ただ相続時精算課税制度の適用には注意点があります。制度を利用すると、最終的に引き継いだ株式が相続財産として相続税の課税対象になります。この点は注意が必要です。とはいえ相続時精算課税制度は、納税猶予取り消しへの備えとして、非常に有効です。

6.まとめ

まとめ
中小企業の事業承継【第7回】記事を最後までお読みいただきありがとうございます。【第7回】では、事業承継税制を利用した、相続税の納税猶予と免除の方法について解説しました。

制度をうまく活用すると、本来必要な贈与税や相続税の納付が猶予されたり免除されることは大きなメリットです。反面、納税猶予取消によって利子税納付のリスクがあることは事業承継税制活用における最大のデメリットと言えます。

事業承継税制の適用においてはプラス面とマイナス面があるので、制度をきちんと理解したうえで、ご利用ください。もしご自分お1人で結論が出せない場合は、ぜひ専門家にご相談ください。

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