【第4回】相続税の節税方法をわかりやすく解説!

■相続税 節税 第4回 ― 基礎控除額と税額控除を上手に使う

相続税の節税の第4回は「基礎控除額と税額控除を上手に使う」という視点から、いくつかの点に絞り、出来るだけ分かり易く解説させて頂きます。

◆基礎控除額を上手に使う

●経営する個人事業や会社の後継者は養子とする

相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」とされています。よってお分かりかと思いますが見ての通り、この金額は原則として客観的かつ自動的に決まってしまい通常は動かすことは出来ません。

ですが1つだけ増やす方法があるのです。詳しい方は知っているかと思いますが養子を迎えることです。養子を迎えると被相続人に実子がいる場合にも、そのようにして迎えた養子のうち1人までは法定相続人の数に加算することが出来ます。

そして、もし被相続人に実子が全くいない場合には2人まで法定相続人の数に加算することが出来ます。これを活かして使うのです。

しかし、養子縁組をする気も、そしてまた、財産を取得させる気も全くないにも拘らず相続税を減額させる目的の為だけに形だけの養子縁組の届出をしたりすると、税務署は相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には養子を法定相続人の数に含めないことが出来ることになっているので、これにより養子の数を制限される恐れがありますので、この点には注意が必要です。

なお本欄で、お勧めしたいのは事業承継をする場合についてです。昨今、経営する個人事業や会社を、実子が跡継ぎとなって引き継いでくれないので、孫や甥や姪、さらには知人の子供などに譲るといったケースが散見されます。そのような場合には予め、そういった後継者を養子として迎えておけば、亡くなった後、相続という形で比較的スムーズに、その個人事業(事業用資産等)や会社(株式等)を引き継がせることが出来ます。そして併せて基礎控除額も増やすことができ相続税を減額させることが出来ることになります。このように経営する個人事業や会社を引き継がせることを主目的に養子縁組をするのも、民法上、有効な養子縁組とされておりますので、こういったスキームが有効となる訳です。

但し、一旦、養子縁組をすると、単なる現経営者と後継者という関係を超えて、相互に介護、看護等の扶養の義務が発生したり、相続についての法定相続分や遺留分の権利が発生したりと通常の親子関係と全く同じ関係(これを「法定血族関係」と言います。)が発生することになります。その点だけはご注意ください。

この点だけクリア出来れば、かなり有効な方法と言えます。例えば、いくらかでも従業員を抱えている場合には、単なる後継者という触れ込みよりも養親子という形で親子関係を構築しておいた方が、一般の従業員たちも側近の従業員たちも納得の上、敬意を払ってくれて、きちんと付いて来てくれたり、また支えてくれたりする可能性が高まる場合もあるでしょう。

このように事業承継の場合には養子縁組も一つの選択肢として、ご検討ください。なお、事業承継には、その事業を買いたいと願う人に売却するという方法もあります。養子縁組による相続の場合には、いわばタダで譲ることになるのに対して、売却の場合には、いくらかでも対価を手に入れることが出来ます。そのどちらを選ぶかは状況によりご判断ください。

●基礎控除額に余裕がある場合には掛け捨て型の生命保険に加入するのが良い

生命保険金にも相続税が課税されます。生命保険金には通常の基礎控除額とは別枠の「500万円 × 法定相続人の数」という非課税限度額が設けられており、それを超えた部分の金額が生命保険金以外の通常の相続財産と合算されて相続税が課税される仕組みになっています。つまり、たとえ生命保険金がこの非課税限度額を超えたとしても基礎控除額に、もともと余裕があれば結局、そちらで吸収されることになるので生命保険金が、かなり高額にのぼっても全く相続税が課税されないという事もある訳です。そこで考えるに、もし基礎控除額に余裕があるならば、たとえ、この生命保険金に固有の非課税限度額いっぱいまで生命保険の契約がなされていたとしても、さらに追加で生命保険に加入しておけば無税か少額の相続税で次世代に資産を遺すことが出来るのです。これは節税というスキームからは若干、外れますが資産運用という観点からお勧めできるスキームです。

この場合、当然ですが終身型の生命保険や積立型の生命保険では殆ど意味がありません。それでは預貯金や有価証券などとあまり変わりがなく資産の形状が変わっただけであるからです。ですので、この場合、掛け捨て型の生命保険に加入することがお勧めとなります。なお、掛け捨て型の生命保険は契約更新できる最高年齢が決まっておりますので長生きをすれば結局、無駄になってしまうかも知れませんが、それはそれで「長寿を手に入れたことで良し!」と考えれば良いのではないでしょうか。このように基礎控除額に余裕がある場合には掛け捨て型の生命保険に加入することにより相続税を回避しつつ次世代にいくらかでも資産を遺すことが出来る場合があります。

◆税額控除を上手に使う

税額控除とは相続税の納税者ごとに算出された各人の最終税額から一定の場合に一定の金額を差し引くことが出来る制度のことです。ごく簡単に言えば「一定の場合には税金をまけてくれる」といった制度です。

●配偶者の税額軽減の活用

配偶者の税額軽減とは被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の相続財産の額につき下記の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。これはご存知の方も多いと思います。是非、ご活用ください。

(1) 1億6千万円

(2) 配偶者の法定相続分相当額

しかし、相続税が全くかからないからと言って配偶者一人だけで多くの相続財産を取得してしまった結果、その配偶者自身の相続(いわゆる二次相続)の際に、次にそれらの財産を取得することになる子供の相続税が多額になってしまって却って損をしてしまったというケースも散見されますので、この点には注意が必要です。従って、税理士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に、いわゆる二次相続で発生する相続税の見込額などについて事前に相談の上で遺産分割を進めることが重要です。

なお、この配偶者の税額軽減は配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。したがって相続税の申告期限までに遺産分割がされていない財産は税額軽減の対象にはなりません。ただし、相続税の申告書又は更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で申告期限までに遺産分割がされなかった財産について申告期限から3年以内に遺産分割をしたときには対象になります。なお、相続税の申告期限から3年を経過する日までに遺産分割が出来ないやむを得ない事情があり税務署の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に遺産分割されたときにも対象になります。

●未成年者控除・障害者控除の活用

相続または遺贈により財産を取得した者(法定相続人に限られます)が未成年者又は障害者である場合には、それぞれ次の金額をその者の相続税額から控除することが出来ます。

(1) 未成年者控除:10万円×その者が成人に達するまでの年数(※)

(2) 障害者控除:10万円(その者が特別障害者の場合には20万円)×その者が85歳に達するまでの年数(※)

※1年未満の年数については1年とする。

なお、これらの控除額がその障害者・未成年者の算出相続税額を超える場合には、その超過額を、その他の相続人(その者の扶養義務者に限られている)の算出相続税額から控除することが出来ます。税額控除の順番は、贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除の順となります。

注意すべき点は、未成年者控除・障害者控除の対象となる未成年者・障害者は、たったの1円でも良いので必ず相続財産を取得する必要がある、と言うことです。これは相続または遺贈により財産を取得した未成年者・障害者についての税額控除について規定するものなので未成年者・障害者が全く相続財産を取得しない場合には、そもそも税額控除が適用できず、前出のその他の相続人からも控除することが出来ないことです。この点に十分、ご注意ください。

●障害者控除の適用を受ける為には

日本には障害者手帳の交付要件を満たしているにも拘らず様々な理由から障害者手帳の交付を受けないまま生活をしている方が多く見受けられます。それ自体は、あくまでもご本人の自由なので全く構わないことです(言うまでもなく障害者手帳の交付を受ける義務は無く、これは、あくまでもご本人の希望により交付申請があった場合に交付される仕組みとなっているものです)。また、障害が比較的、軽微なものである為に交付要件を満たしているにも拘らず「満たしていない。」と勘違いしたまま生活している方もいると聞きます。

その一方で、障害者手帳の交付を受ければ以上で見たように相続税の納税において障害者控除の適用を受けることが出来るようになる等、税務上有利に扱われますので、その点については是非、ご留意ください。

なお、障害者手帳の交付を受けていない場合でも一定の場合には障害者控除を受けることが出来る場合もありますが、これは例外的規定(つまり障害者手帳の交付対象となる傷病以外の場合についての規定)であり、原則としては相続開始時において障害者手帳の交付を受けていたことが相続税の納税において障害者控除の適用を受ける為の要件となります。なお、相続開始時において障害者手帳の交付を受けていなかった場合でも、相続税の申告書(期限内申告に限る)の提出時において交付を受けていた場合、又は、交付を申請中の場合で、医師の診断書等により相続開始時において、明らかにこれらの手帳に記載される程度の障害があったと認められる場合にも障害者控除の対象とされますので覚えておいて下さい。

なお、障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称とされています。

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