相続税申告の土地評価、どう評価しているの?

相続税の計算に際しては、まず初めに相続財産の金額(相続税法では、これを「時価」と表現しています。)を算定しなければなりません。

当然ですが相続した財産の金額の多寡(大小)によって相続税額が異なってくるからです。

この金額の算定のことを一般に「評価」と言い、評価を通じて出された結果の金額のことを特に「評価額」と呼んでいます。

では相続財産の中に土地が含まれている場合には、それは一体どのように評価するのでしょうか。

以下では、この点について述べます。

相続税は「申告納税方式」

税金には様々なものがあります。そして、その課税の方式も様々です。難しい話になるので深くは立ち入りませんが相続税という税金は「申告納税方式」といって相続税を納めなければならない人(以下、単に「納税者」といいます。)が自分自身で税務署に相続税額を計算した確定申告書を提出することによって税額が確定する仕組みになっています。

皆さんの中には、ご商売をされている方もいるかと思います。ご商売をされている方は毎年、税務署等に、そのご商売についての確定申告書(所得税・法人税など)を提出していることと思います。それと同じようなイメージでお考え下さい。

つまり相続税の計算は「まず初めに自分自身でやらなければならない」ということです。この段階で誤って高い税額を算出した確定申告書を提出してしまい、その税額が確定してしまうと後になって、これを取り消すのは簡単ではありませんので慎重に計算する必要があります。

また、これとは反対に、こうして提出した確定申告書を税務署がチェックした結果、税額が不相当に少ないと考えた場合には、税務署が職権により適正と考える税額へと変更することがあります。これを「更正処分」といいます。「更正処分」が行われると「その少ない」とされた税額を追加で納めなければならないのは勿論のこと、これと併せて「過少申告加算税」や「延滞税」などの罰課金も納めなければならなくなり、結局、本来の税額よりも金額が増えてしまいますので、このような事のないように初めから出来る限り適正な税額の確定申告書を提出しておく必要もあります。

土地の評価は、どのように行われるのか!

それでは相続税の計算において土地は、どのように評価するのでしょうか。既に述べた通り相続税は、まず初めに自分自身で計算することになるので、これをお読みになった皆様は「ならば、自分が適正と考える金額で評価をしてしまって良いのですね!」「自分の好きな金額を付けてしまえば、それで構わない訳ですね!」などとおっしゃるかも知れません。

結論を言えば現実には、そのような訳には簡単には行きません。

というのも、税務署は財産評価基本通達(以下「評価通達といいます。)という評価基準を備えていて、この中で土地についても具体的な評価方法を定めており、税務署はこの方法によって納税者の提出した確定申告書をチェックしているからです。

評価通達による土地の評価方法には2通りあり路線価方式と倍率方式(以下この2つを合わせて「路線価方式等」といいます。)と呼ばれるものがそれです。

評価通達は一般国民に公表されているので誰でも見ることが出来ます。

評価通達は法令ではなく国税庁や税務署だけを拘束するものであるので一般国民に対して「絶対に従わなければならない」との強制力はありません。

しかし一般的には納税者による評価額が、この路線価方式等による評価額よりも低い場合には、税務署は既に述べたように「更正処分」により路線価方式等に従った税額に増額変更するので現実には、これに反した評価をすることは難しく、大抵の場合、納税者は自主的に、この路線価方式等に倣って土地を評価しているのが実情です。

つまり評価通達は法令ではないのですが、事実上、法令と同一視されて運用されているのが実態です。

なお勿論、納税者に、評価通達による評価方法について不服があれば、それについて争訟や訴訟をするという道は当然、残されています。

次に、そのように実際に訴訟に発展したケースも踏まえながら評価通達(路線価方式等)によらない評価額が認められる場合についても触れておきたいと思います。

評価通達自体がもともと法令ではなく強制力がない以上、路線価方式等に従って評価をすると評価額が時価よりも高くなってしまって納税者にとって適正な評価にならない場合には、当然、納税者には何らかの別の方法により、その土地を評価することが認められます。

この場合には後ほど述べるように通常は不動産鑑定士による鑑定評価が必要になります。

但し、これには対立する2つの裁判例があり専門家の解釈も分かれているので注意が必要です。

名古屋地裁平成16年8月30日判決が「不動産鑑定士による鑑定評価が路線価方式等による評価額よりも低い場合には当然、不動産鑑定士による鑑定評価を用いるべきである」との趣旨を述べているのに対して、東京地裁平成11年8月10日判決は「それだけでは足りず、他の諸事情をも考慮して判断すべきである」との趣旨を述べているのです。

以上とは別に相続した土地を相続後に売却した場合において、その売却価額が路線価方式等による評価額よりも低い場合には、その売却価額で評価をすることも認められています。

それでは具体的に、路線価方式等による評価の方法、評価通達(路線価方式等)によらない評価が認められる場合、相続した土地を相続後に売却した場合における売却価額での評価の方法、についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

路線価方式等(路線価方式・倍率方式)による評価の方法

概要

「路線価方式」と「倍率方式」のどちらを使うかは地域によって自動的に決まります。

路線価方式とは、市街地的形態を形成する地域(以下、単に「市街地」といいます。)の道路には「路線価」と呼ばれる、その道路に面している土地の1平方メートル当たりの評価額を毎年、国税庁が決めており、それに基づいて評価をする方法です。

この評価方法の根底には土地の価値は面している道路の経済的な価値・効用によって決まるという考え方があります。

つまり使い勝手の良い便利な道路に面している土地は価値が高く、あまり便利ではなかったり、どこに行くにも不便な道路に面している土地は価値が低いという考え方のもとに路線価が決められているのです。

毎年1月1日時点の路線価が、その年の7月1日に公表されており相続税の計算に際しては、その相続が発生した年のものを使うことになります。

ですので余談ですが路線価が大きく変動している場合には12月31日に亡くなるのと翌1月1日に亡くなるのとで相続税額が大きく変わることがあります。

かつて実際に、これに関して死亡した日時がハッキリしなかったことで税務署と納税者との間で争いになったことがありました。

さて話を元に戻します。

市街地の土地は、この路線価方式により評価することになります。なお市街地であっても一部に路線価が設定されていない道路もあります。私道などがこれです。このような道路に面した土地の評価が必要になった場合には、その地域の管轄の税務署(確定申告書を提出する税務署とは限りません)に路線価の設定を申請することができ、そうして設定された路線価(これを「特定路線価」と言います。)によって評価をするか、直近の道路の路線価を用いて評価をするかのどちらかによることになります。特定路線価の設定の申請には手数料などは不要です。

次に「倍率方式」についてご説明します。

市街地以外の地域の道路には路線価が設定されておらず、その代わりに、これらの地域の土地には倍率と呼ばれる数字(小数点以下1位まで)が国税庁により付けられています。そして土地に付けられた、その倍率をその土地の固定資産税評価額に乗じて評価をすることになります。このように倍率計算をするので、この方式は倍率方式と呼ばれる訳です。

具体的な評価の方法

路線価方式

路線価方式による評価の方法は、具体的には次の算式によることになります。

対象土地の路線価×各種補正率×地積×持分×権利調整値

※路線価は「路線価図」(国税庁のホームページにて公表)で確認することが出来ます。

※各種補正率とは「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」(国税庁のホームページにて公表)に書かれています。これにより土地に特有の事情を評価に加味することになります。この場合、2つ以上の道路に面している土地の評価額は増加することになりますが増加する補正は、これだけであり他の全ての補正は減額補正となっています。また建築基準法の接道義務を満たさない土地の評価減、幅4メートル未満の道路に面した土地の評価減など、この表に書かれていない減額方法もありますので、このような場合には是非、当税理士法人までご相談ください。

※「地積」とは土地の面積のことであり、登記簿謄本(登記所にて取得する)、又は固定資産税課税明細書(毎年4月から5月頃にかけて市区町村から送られてくる)に書かれていますので、この数字を使えば問題はありません。しかし、それが実際の面積と大きく異なる場合には測量をやり直すことにより相続税額を減らすことも出来ます。

※持分とは亡くなった方の所有割合のことです。亡くなった方の100パーセントの所有ならば100パーセントとなり、2分の1であったならば2分の1となります。

※権利調整値は自分で使っている土地(「自用地」と言います。)の場合には100パーセントとなります。自分で使っていない土地などの場合には、その権利の設定状況に応じて一定の減額計算をすることになり、その為の数値が入ります。これには主に以下の4つがあります。

●他人に建物の敷地として貸している土地(貸宅地)

この場合、厳密には設定されている権利が普通借地権なのか定期借地権なのか等によって計算が異なるので一概には言えないのですが、ごく簡単にご説明すると、この場合、ここは概ね借地権割合(路線価図に記載されています)となります。

●土地の上に土地所有者(=亡くなった方)の所有する建物が建っていて、その建物を他人に貸している場合の土地(貸家建付地)

この場合には(100%-借地権割合(前出)×全国一律の借家権割合としての30%×賃貸割合)となります。

●他人に建物以外の敷地として貸している土地(貸し付けられている雑種地)

駐車場、資材置き場、ゴルフ場、ゴルフ練習場、公園、学校の校庭、テニスコートなど、建物以外の敷地として貸している土地の場合です。これらの場合にも、これらの賃借権等が存することにより土地に一定の減価が生じていると考えられるため評価減をすることになりますが、これらの場合における権利調整値は一様ではなくケースバイケースである為、ここで詳しくご説明することは紙幅の関係で出来ません。詳しくお知りになりたい方は当税理士法人まで、ご相談くださば幸いです。

●建物の所有を目的として他人から借りている土地(借地権)

これも上記の貸宅地と同様に設定されている権利が普通借地権なのか定期借地権なのか等によって計算が異なるので一概には言えないのですが、ごく簡単にご説明すると、この場合、ここは概ね(100%-借地権割合(前出))となります。

以上、駆け足でご説明してきましたが1つだけ計算例を示しておきます。少し難しいかも知れませんが、お付き合い下さい。

例:対象地の路線価10万円、地区区分は普通住宅地区、地積300㎡、一面だけ道路に接しており、奥行距離は30m、持分は100パーセント、自用地、とした場合。

まず国税庁ホームページの「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31 年1月分以降用)」のうちの「奥行価格補正率表」から地区区分を普通住宅地区、奥行距離30mとして表を読むと奥行価格補正率0.95となります。

よって、

10万円(路線価) × 0.95(奥行価格補正率) × 300㎡(地積) ×100%(持分)×100%(自用地)= 2,850万円(評価額)

となります。

倍率方式

倍率方式による評価の方法は次の算式によることになります。

固定資産税評価額×倍率

※固定資産税評価額は固定資産税課税明細書(前出)で確認することが出来ます。

※倍率は「倍率表」(国税庁のホームページにて公表)で確認することが出来ます。

なお倍率方式の場合でも、路線価方式で用いる各種補正率の一部等を準用して減額補正することが出来る可能性もありますので土地に特有の事情がある場合には是非、当税理士法人まで、ご相談ください。

評価通達(路線価方式等)によらない評価が認められる場合

既にご説明したように結局のところ路線価方式等による評価方法とは、地域ごとや道路ごとに決められている路線価や倍率を機械的、形式的に適用して評価する方法ですので、たとえ一定の各種補正率を加味したとしても、個々の土地の個別事情を十分に反映したものにはなり難く、評価額が現状とかけ離れたものになることもあります。

このような場合には、路線価方式等によらずに別の方法で評価をすれば評価額を減額できる場合があります。

この場合、勿論、納税者自身が自分で調査をして、その土地について適正と考える金額を算出しても良いのですが通常、納税者自身には土地の評価についての専門知識はありませんので土地の評価に精通した専門家である不動産鑑定士に依頼をした上で、その鑑定評価の写しを確定申告書に添付するのが一般的となっており、また、そのようにしなければ税務署も、その評価額を簡単には認めてくれないものと思われます。

また、たとえ不動産鑑定士に評価を依頼しても、その鑑定評価が採用されるとは限りません。

いずれにしても、この方法は路線価方式等によるよりも時間、手間、費用などが掛かかりますので、それに見合うだけの評価額の減額が期待できないならば、この方法を選択する意味がないとも言え、注意が必要です。

具体的には以下のような特殊事情のある土地については不動産鑑定士による鑑定評価等が路線価方式等による評価額よりも低くなる傾向がありますので、ご検討ください。

①がけ地等の傾斜の強い土地

②道路付きが悪く利用困難な土地(建築基準法上の道路に接面していない土地)

③土壌汚染等の利用阻害要因がある土地

④大規模地で大きく市場評価が下がる土地

⑤間口・奥行きが不整形で利用効率が劣る土地

⑥衰退している地方都市の中層事務所地

⑦市街地農地、山林、原野

⑧市街化調整区域に存する雑種地

⑨高圧線下の土地、都市計画道路予定地を含む土地

相続した土地を相続後に売却した場合における売却価額での評価の方法

一般的に相続税法における時価とは客観的な交換価値であると言われますので利害関係のない第三者との間で成立した取引金額であれば時価と考えることが出来ます。よって路線価方式等によらず相続後に成立した売買価額で評価をしても問題ないと考えられます。

この点について法令、通達などには何も書かれておりませんが、以下の2要件を満たす場合には売買価額で評価をすることが概ね認められています。

(1)相続開始時から売却時までの期間が短いこと

この期間が長ければ長いほど、相続時の時価と売買価額に差が生じてしまうと考えられるからです。この点は相続税の確定申告期限(相続発生後10か月)までに売買が行われていれば、まず問題はないようです。

(2)売買価額に合理性があること

第三者間では原則として合理性があると推定されますが、その場合でも例えば売り急いだため相当の値引きをしたなど、通常の売買では有り得ないような安い金額であれば時価と見るのは困難となります。特殊事情がなく合理的に決まった価額であると説明できる必要があります。

一般的には売買価額の方が路線価方式等による評価額よりも高くなりますが、どうしても売れない土地などについては路線価方式等による評価額よりも低い金額で取引せざるを得ない場合もあります。このようなケースでは、このように売買価額で評価をすることが可能となります。

一方、相続税の申告期限内に売却できず、申告後に売却した際に路線価方式等による評価額を下回った場合にはどうなるのでしょうか。この場合には更正の請求(税金の再計算を求める手続き)をすることで相続税が還付された実例もあるようですが税務署における、この点についての確立された方針は無いようです。しかし、やってみる価値はありますので、このような場合にも是非、当税理士法人までご相談ください。

小規模宅地等の課税の特例

最後に「小規模宅地等の課税の特例」についてお話しします。

「小規模宅地等の課税の特例」は土地についての評価の問題ではなく土地についての課税の特例であるため、厳密には「土地の評価」という論点には含まれませんが相続税における土地の評価に密接に関連する特例であるので、ここで簡単に触れておくことにします。

概要

小規模宅地等の課税の特例とは、①亡くなった方等が住んでいた土地、②亡くなった方等が事業をしていた土地、③亡くなった時点で3年を超えて貸し付けていた土地(貸付事業用宅地等)の3種類の土地については、一定の要件を満たす相続人が相続した場合に最大で80パーセント、その土地の評価額を減額できるという恩恵の大きな特例です。この特例を使う為には、その旨を記載した確定申告書を申告期限内に提出する必要があります。確定申告書を提出するのを忘れたり、提出しても、その旨の記載を忘れてしまった場合には、もはや、この特例を使うことは出来ません。つまり更正の請求(前出)によって、この特例による税額の再計算を求めることは出来ないので注意が必要です。

亡くなった方等が住んでいた土地

亡くなった方が住んでいた(要介護認定を受けて老人ホームに入居していた場合も住んでいたものとして扱われます)土地を、配偶者、同居親族、持ち家の無い相続人(俗に「家なき子」と言います。)が相続した場合、又は、亡くなった方の生計一親族が住んでいた土地を配偶者、又は、生計一親族が相続した場合の特例です。以上のうち配偶者が相続する場合には何の要件もありませんが、同居親族と生計一親族が相続する場合には、相続税の確定申告期限(新型コロナウィルスの等の影響により期限が延長されている場合には、その延長された期限となります。以下同じ。)まで所有と居住を継続していることが要件となります。また家なき子の場合には相続税の確定申告期限まで所有(居住は含まれない)を継続することに加え、相続人の中に配偶者と同居親族がいないこと、家なき子自身は相続発生前3年間に自己、自己の配偶者、三親等以内の親族等の所有する家屋に住んでいないこと等の細かい要件があります。以上の場合には330平方メートルを限度として評価額を80パーセント減額することが出来ます。

亡くなった方等が事業をしていた土地

亡くなった方の個人事業に使われていた土地、または、亡くなった方と一定の関係にある同族会社が事業に使っていた土地を、同一の事業を相続税の確定申告期限まで継続する等の要件を満たした相続人が相続した場合に400平方メートルを限度として、その評価額を80パーセント減額することが出来ます。

亡くなった時点で3年を超えて貸し付けていた土地(貸付事業用宅地等)

代表的な例は賃貸アパートの敷地や駐車場として貸している土地となります。3年の要件は平成30年度の税制改正により、過度の租税回避を防止する為に導入されました。相続人が相続税の確定申告期限まで同一の貸付を継続していることが要件となります。この場合には200平方メートルを限度として評価額を50パーセント減額することが出来ます。

終わりに

土地の評価は相続税の確定申告において重要なウェイトを占める作業となります。この世に2つとして同じ土地はありません。土地の実情にあった適正な評価をすることにより相続税を節減することが重要となってきます。

その為にも、もし分からないことがあったら是非、当税理士法人にご相談ください。

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