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2018年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立しました。40年ぶりの法改正ですが、相続に関する重要な変更がいくつかなされました。相続法の改正内容のうち、重要な1つが、この記事で解説する「遺言執行者の権限明確化」です。

法改正により、遺言執行者は相続財産である「預貯金の払い戻し」や「登記の申請」といった、遺言執行に必要な作業を、法的に明確な権限を得て実行できるようになりました。

この記事では民法改正で役割が明確になり、権限が強化された「遺言執行者」について詳しく解説します。

目次

遺言執行者とは

遺言執行者(遺言執行人)とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。遺言執行者の任務は、「法務局での名義変更手続き」や「相続財産を調査して目録を作る」といった、遺言の内容を実現するための一連の作業になります。遺言の内容を実現するための権限を持ち、実際に行動する人が遺言執行者ということです。

遺言執行者の権限が、2019年7月1日施行の相続法改正によって具体的にどのように変わったのか、以下で詳しくご説明します。

遺言執行者の立場・相続法改正前

改正前の旧民法では、遺言執行者について「相続人の代理人」と規定していました。

【参考】
遺言執行者は相続人の代理人とみなす
(旧民法 第1015条)
遺言は被相続人が作成するので、その遺言を執行する遺言執行者は「被相続人の代理人」という性質を持つにも関わらず、法律上は「相続人の代理人」と規定されます。多くの関係者が矛盾を感じる状態にありました。

また改正前の旧民法においては、遺言執行者が遺言の執行を始めた時に「相続人に知らせる義務がある」とは規定していませんでした。このため、相続人が知らないうちに遺言執行者が遺言執行を開始しており、後から知った相続人との間でトラブルになる‥といった事態もたびたび生じていました。

遺言執行者の立場・相続法改正後

改正相続法では、遺言執行者に「遺言の内容を実現するため」の強い権限を保たせました。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

(改正後民法1012条1項)
旧民法第1015条で遺言執行者は「相続人の代理人」と決められていました。しかし民法改正で代理人の記述はなくなり、別の記述に変わりました。

民法第1015条は、改正で以下のように変わっています。
【改正民法第1015条】

遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
「遺言執行者は相続人の代理である」という旧法の記述は第1015条から消えました。代わりに、遺言執行者が「『自分は遺言執行者である』と明言して遺言執行のために行動したこと」は効力がある、と明記されました。遺言執行者の強い権限を認めています。

遺言執行者の任務開始の通知義務

改正前民法では、遺言執行者が遺言執行を始めても、相続人にその事実を伝えることは義務づけられていませんでした。


しかし改正後は以下の通り、遺言執行を開始したらすぐに相続人に通知することが義務化されています。遺言執行者は就任したらすぐに任務開始し、開始したら遺言の内容を速やかに相続人に通知しなくてはなりません。

遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

(改正民法第1007条 2項)

遺言執行開始の通知義務ができたので、相続人は「遺言があること」「遺言執行者がいること」「遺言の執行が始まったこと」を、相続の早い段階で把握できるようになっています。

改正前は、相続人が知らないうちに遺言が執行されることもありました。遺言の執行は相続人にとって大きな利害をもたらすものです。遺言執行が既に始まっていたことを相続人が後から知り、トラブルになる事例も多く見られました。


遺言執行の通知義務ができたので、今後は相続人が遺言執行開始の事実を知らないがゆえに起きるトラブルは少なくなることでしょう。

相続法改正で強化された遺言執行者の権限

改正前の民法では「遺言執行者は相続人の代理として」業務を行うと規定されていましたが、肝心の権限の範囲については明記されていませんでした。

民法改正後は、改正前と比較してどんな点が変わったのか、ポイントをお伝えします。

遺言執行者による相続登記の申請権限

法改正後、特定の条件にある相続財産については、遺言執行者による相続登記の申請が可能になりました。

遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

(改正民法1014条2項)
上記の改正民法1014条2項に書かれた『「特定財産承継遺言」があること』が特定の条件を意味します。遺言執行者の権限が強化されたと言っても、どんな場合でも相続登記の申請ができるわけではなく、特定の条件を満たした場合にだけ認められるわけです。

条件を満たす場合、すなわち特定財産承継遺言の例を挙げてみます。
【特定財産承継遺言の例】

・被相続人が遺言書に「自宅を子どもAに相続させる」と書く
・遺言書の中で遺言執行者を指定する
上記の例では、遺言の中で「被相続人の自宅」という「特定の財産」を「Aという相続人」に相続させると指定しています。これが「特定財産承継遺言」です。こうした特定財産承継遺言がある場合、遺言執行者は、相続人Aの代わりに自宅の相続登記申請ができます。

遺言執行者による預貯金の払戻し・解約の権限

改正後は、遺言執行者に対して相続財産である「預貯金の払戻し」や「解約」の権限も、正式に認めるようになりました。
前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部特定財産承継遺言の目的である場合に限る。

(改正民法1014条3項)
改正民法1014条2項と3項をあわせて参照しますと、特定財産承継遺言がある場合には、遺言執行者は預貯金を払戻したり解約したりできます。

ただし「預貯金の解約」についてはさらに厳しい条件が付いています。「その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合」でないと、遺言執行者は解約手続きすることができません。

具体例で解説いたします。
【遺言執行者が預貯金の払戻しができる場合】

・被相続人が遺言書に「銀行Bにある普通預金3000万円のうち1500万円を子どもCに相続させる」と書く
・遺言書の中で遺言執行者を指定する
上記例のように、遺言で預貯金の一部を相続させると指定がある場合、遺言執行人は指定された金額の払戻しはできますが、預貯金全体の解約はできません。
【遺言執行者が預貯金の解約ができる場合】

・被相続人が遺言書に「銀行Bにある普通預金3000万円全てを子どもCに相続させる」と書く
・遺言書の中で遺言執行者を指定する
上記例のように、遺言で預貯金の全額を相続させると指定された場合は、遺言執行人は預貯金の払戻しだけでなく、解約までできることになります。

ちなみに、遺言執行者が払戻しや解約できるのは、預貯金に限られており、その他の有価証券や投資信託などの金融商品の解約は権限に含まれていません。

遺言執行者の選び方

続いて、遺言執行者の選び方について解説します。
【遺言執行者の選び方】

①遺言作成者が遺言書の中で予め指定する
②相続開始後に相続人等の申立てにより家庭裁判所に選んでもらう
遺言書の中で遺言執行者が指定されている場合と、そうでない場合に分かれます。遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所で選びます。

遺言執行者になるための条件は厳しいものではありません。未成年者や破産者以外は誰でもなれます。弁護士や司法書士でなくても可能です。相続人や受遺者を遺言執行者にすることもできます。遺言が特殊な内容でないなら、相続人や受遺者を遺言執行者に指定するケースも多いです。

では選任方法について、さらに詳しく見ていきます。

遺言書内で指定する

遺言作成者は、遺言書の中で遺言執行者を指定することができます。
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

(民法 第1006条第1項)
上記の 民法第1006条に書かれているように、遺言書の中で、遺言執行者を指定可能です。また、遺言の中で特定の人を指名せず、「◯◯さんに遺言執行者を選んでもらってください」と、遺言執行者を選任する人を指定することもできます。

遺言の中で遺言執行者が指定されている場合は、相続人があらためて選ぶ必要はないです。しかし特に指定がない場合は、相続が始まる時に選出する必要があります。

家庭裁判所で選ぶ

遺言執行者が遺言書で指定されていない場合は、家庭裁判所にて、選任します。遺言書で指定はあるが、指定された人が既に亡くなっている場合も、家庭裁判所での選任が可能です。
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。

(民法 第1010条)
上記の民法第1010条にて、遺言執行者の選び方について記載されています。記載された「利害関係人」には、相続人や受遺者、債権者などが当てはまります。

ただし裁判所は自動的に遺言執行者を選ぶわけではありません。利害関係人である相続人や受遺者、債権者などは、自ら家庭裁判所に出向いて、遺言執行者選任の申立手続きをする必要があります。

遺言執行者には、相続人が就任することも可能です。しかし、相続では利害関係が対立する可能性があります。このため特定の相続人が遺言執行人になると、問題が発生する可能性もあります。

よって相続人ではない第三者、すなわち専門知識を持ち冷静な立場で遺言執行を進められる弁護士や司法書士を、遺言執行の候補者として指定するケースも多いです。

相続人や第三者からも候補を立てず、申立書に特に候補者の記載がない場合は、裁判所が保有する候補者リストの中から、適切な弁護士を選出します。

まとめ

相続法が改正されて、遺言執行者の立場と権限は明確になりました。相続人にとっても、遺言執行者による遺言執行開始の通知が義務化されたことにはメリットがあります。

また、遺言の内容としてよく見られる、特定財産承継遺言に関する遺言執行者の権限が強化されたことも重要です。法改正により、特定財産承継遺言については、遺言執行者は単独で執行を進められるようになりました。法改正前よりも遺言の執行がスムーズになると見られます。

相続手続きでのトラブルが減って、関係者の負担が減ることを期待したいです。

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