遺産分割調停の流れと費用をわかりやすく解説

遺産分割が協議でまとまらない場合は、遺産分割調停で解決します。

相続専門の当税理士法人の代表はよく「1に分割、2に納税、3・4がなくて5に節税」と口にします。遺産相続において遺産分割が重要かつ難しいことを熟知しているからです。

遺産分割が難しいのは、遺産に故人だけでなく相続人の想いが積み重なっているからです。絡み合う人の気持ちに折り合いをつけるのは、簡単なことではありません。

当事者同士でうまく折り合いをつけられない場合に出てくる選択肢が「遺産分割調停」です。しかし「遺産分割調停」の意味も、実際に遺産分割調停にどのくらい費用がかかるかも、まったく分からないという悩みや質問をよくいただきます。

そこでこの記事では、遺産分割調停の進め方や費用の目安をわかりやすく説明していきます。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、遺産分割を解決に導くための手段の1つです。

相続が始まり、相続人・相続財産の範囲が明確になると、実際に遺産をどのように分けるかという段階に入ります。遺産の分け方を、遺言書や遺産分割協議で決定できれば、それで遺産分割は完了です。

しかし、当事者間の話し合いで解決できない場合に「遺産分割調停」で決定するという方法があります。「遺産分割調停」とは、裁判所の調停手続きを利用して遺産分割を行う方法です。遺産分割調停では、家事審判官(裁判官)と調停委員が、公平な立場から申立人とその相手方に助言したり調整を図ったりして解決を目指します。

遺産分割調停の結果、当事者間で合意が成立すると,合意事項を書面(調停調書)にして調停は終了します。遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合には、「遺産分割審判」手続きに自動的に移行し、裁判官が法律に従って判断することとなります。

遺産分割調停から遺産分割審判へ移行というのが一般的ですが、遺産分割審判から始めることも可能です。ただし、裁判官が調停から始めるのが適切と判断した場合には、調停から始めることになります。

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停の大まかな流れを図にまとめました。

【遺産分割調停の流れ】

遺産分割協議でまとまればそこで分割が完了して、相続手続きに入ります。しかしまとまらない場合は、遺産分割調停に進み、遺産分割調停でもまとまらなければ遺産分割審判になります。

遺産分割調停は、当事者だけでなく専門家である第三者、例えば裁判官に当事者間の調整や助言等をもらいながら「遺産分割」を進めるものです。

遺産分割調停では、申立ての前提として、遺言書・相続人・相続財産の調査が必要になります。遺言書・相続人・相続財産の情報は、「遺産分割」で欠かせない情報だからです。

遺言書・相続人・相続財産の情報は、申立書類の作成や添付書類でも必要になります。

それでは、遺産分割調停終了までに必要な手続きや費用や書類を、遺産分割調停の流れにそって見ていきましょう。

遺言書・相続人・相続財産の調査

遺産分割調停を申し立てるにあたり、遺言書、相続人、相続財産を明確にしておかねばなりません。各情報を明確にするための調査について見てみます。

遺言書の調査

まずは遺言書の調査です。亡くなった方の財産をどのように相続するかは、遺言書がある場合とない場合で異なります。遺言書がある場合には、遺言書の内容が優先です。遺言書がない場合や遺言書で遺産分割が完了しない場合には「遺産分割協議」か「遺産分割調停」で決めることになります。

相続人の調査

次に相続人を調査します。遺産分割協議や遺産分割調停は、相続人や包括受遺者など当事者全員で実行することが求められています。

相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどって、慎重に調査しなくてはなりません。大変な作業ですが、遺産分割の手続きには当事者全員の参加が必要です。このため欠かすことのできない大事なプロセスです。

相続財産の調査

続いて相続財産の調査です。遺産分割の対象となる相続財産を調査して、どんな遺産があるのか明らかにします。相続財産には、亡くなった方の借金などマイナスの財産(債務)も含まれます。なお、プラスの財産だけを相続することはできませんので、ご注意ください。

また債務は、相続放棄をしない限り、遺言書や遺産分割協議の内容に関わらず、相続人が法定相続分に応じて相続することが原則です。債権者が承諾しない場合は、相続人の間で負担割合を取り決めしても、それを債権者に対して主張することはできません。しかし債権者が了承すれば、相続人の間で決めた負担通りにできます。

遺言書・相続人・相続財産を明らかにした後に、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議でまとまらない場合は、遺産分割調停を申立し、遺産分割問題の解決を探ることになります。

遺産分割調停申立書の提出

遺産分割調停を進めることになったら、遺産分割調停申立書を提出して、手続きを始めます。

遺産分割調停の申立先

遺産分割調停の申立書の提出先は、家庭裁判所です。どこの家庭裁判所でもよいわけではなく、以下のどちらかの家庭裁判所に提出することに決まっています。
<遺産分割調停申立書の提出先家庭裁判所>

・遺産分割について話し合う相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
・当事者が合意で定めた家庭裁判所

遺産分割調停の申立人の条件

遺産分割調停の申立人は、誰でもなれるわけではありません。申立人になるには、条件があります。「共同相続人」「包括受遺者」「相続分譲受人」のいずれかでないと、申立人にはなれません。

各申立人の条件です。

・共同相続人
遺産分割前の相続財産は、どれが誰のものになるか決まっていません。分割先が未定の財産は「共有財産」となり、共有財産は、複数の相続人で共有している状態となります。共同相続人とは、分割前の財産を共有した状態にある相続人を指します。

・包括受遺者
遺言書で、特定の資産ではなく、割合で遺産を与えられた人のことを包括受遺者と言います。指定の例としては「遺産のうち3分の1を与える」というような方法があります。

・相続分譲受人
相続人から、その人が相続する分を譲り受けた人のことを相続分譲受人といいます。

遺産分割調停の申立人は1人とは限らず、複数の相続人等が申立人となり、残りの当事者を相手方とすることもあります。

続いて、遺産分割調停の申し立てをする時にかかる費用について説明します。

遺産分割調停の費用

遺産分割調停に必要な費用は以下のとおりです。
・被相続人1人に対して収入印紙1200円分
・連絡用の郵便切手
・申立書に添付する書類(戸籍謄本等)の取得に必要な費用

上記のように、遺産分割調停自体に必要となる費用はそれほど高額ではありません。事務手数料のみで手続きすることができます。ただしこの費用に含まれるのは家庭裁判所への納付費用のみです。

下記のように、専門家に手続きを代行依頼した場合は、別途費用が発生します。

【専門家に遺産分割調停手続きを代行依頼するケース】

・調停で裁判官や調停委員と話をするのが不安なので弁護士に代行依頼
・書類作成を司法書士に代行依頼

遺産分割調停に必要な書類

遺産分割調停を申し立てする際は、以下の書類が必要です。

・申立書
原本✕1通、写し✕相手方の人数分の通数(※目録を含む)

・申立添付書類

※申立書には当事者等目録と各種遺産目録を含みます。

ではまず、申立書の書式と書き方について見てみましょう。

遺産分割調停申立書の書式

遺産分割調停申立書の書式は、以下の裁判所ホームページからダウンロードできます。
遺産分割調停申立書の書式ダウンロード(裁判所ホームページ)
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_isan_mousitate_538kb.pdf
以下が、ダウンロードした遺産分割調停申立書の書式です。

出典:裁判所ホームページ

また、以下の目録の書式も裁判所ホームページからダウンロード可能です。

・当事者等目録
・土地遺産目録
・建物遺産目録
・現金・預貯金・株式等遺産目録、当事者目録
目録の書式ダウンロード(裁判所ホームページ)
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_isan_mousitate_538kb.pdf

遺産分割調停書【記入例】

裁判所ホームページからは、書式だけでなく記入例もダウンロードできます。記入例を参照しながら申立書を書くと、書きやすいです。

以下が裁判所のホームページからダウンロードした遺産分割調停書【記入例】です。

出典:裁判所ホームページ
出典:裁判所ホームページ

以下は遺産目録の【記入例】

出典:裁判所ホームページ

遺産目録【記入例】続き

出典:裁判所ホームページ

遺産分割の申立書記入例を見ると、申立の趣旨・理由に続いて、申立人の目録、遺産の目録を記載することになっています。各目録についても書式があり、記入例を参考に記入が可能です。

記入例には、特別受益や分割済み遺産がある場合の例も記載されています。

遺産分割調停を申し立てるには、以下の情報が必須です。

【遺産分割調停で必須の情報】

・遺産分割の当事者全員の情報(共同相続人・包括受遺者含む)
・遺産の内容

相続人や遺産の範囲について争いがある場合は、争いを解決してから調停手続きへ進めます。

問題を当事者間で解決できない場合は、地方裁判所の裁判で決定することになります。(家庭裁判所ではありません)裁判の場合は、弁護士のサポートしてもらう必要が出るかもしれません。

申立書添付書類

申立書に必要な、添付書類についても裁判所のホームページで詳しく紹介されています。

添付書類には、相続人がどの立場でも必要になる共通のものと、指定条件に当てはまった時のみに必要なものがあります。

共通の添付書類

共通の添付書類は、全ての相続人に共通して必要になる添付書類です。詳細は以下のリストをご覧ください。
【共通で必要になる添付書類】

  1. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  2. 相続人全員の戸籍謄本
  3. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合はその子
    (及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  4. 相続人全員の住民票又は戸籍附票
  5. 遺産に関する証明書
    (証明書の例)
    ・不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書
    ・預貯金通帳の写し又は残高証明書
    ・有価証券写し

相続人が被相続人の配偶者と父母・祖父母等の場合に必要な添付書類

相続人が被相続人の配偶者と父母・祖父母等の場合には、共通で必要な添付書類の他に、下記書類が必要です。

【相続人が被相続人の配偶者と父母・祖父母等の場合に必要な添付書類】

被相続人の直系尊属(被相続人の父母・祖父母等)のうち死亡している方がいる場合には、その直系尊属の死亡が記載された戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 たとえば相続人が被相続人の祖母の場合は、被相続人の父母と祖父が亡くなっていることを記載した戸籍謄本を用意しなくてはなりません。

相続人が被相続人の配偶者のみの場合または被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者の場合に必要な添付書類

相続人が

・被相続人の配偶者のみの場合
・または被相続人の(配偶者と)兄弟姉妹及びその代襲者(甥・姪)の場合

このときは、上記共通で必要な書類に加えて、下記の書類が必要です。【相続人が被相続人の配偶者のみの場合、または被相続人の(配偶者と)兄弟姉妹及びその代襲者(甥・姪)の場合に必要な添付書類】

  1. 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  2. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  3. 被相続人の兄弟姉妹の中で死亡している方がいる場合その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  4. 代襲者としての甥・姪に死亡している方がいる場合、その甥・姪の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

さらに、裁判所が必要と判断した場合は追加書類の提出を求められることもあります。

続いて、裁判所への出頭について解説します。

遺産分割調停期日に出頭

遺産分割調停の申立書が適切に受理されると、調停期日が指定されます。調停期日とは、家庭裁判所に申立人と相手方が出頭して、それぞれが裁判官や調停委員と話し合う日のことです。

原則として申立人と相手方が直接同じ場で話し合うことはなく、別々で行います。しかし絶対に双方が顔を合せないというわけではありません。たとえば調停の進め方の説明会で同席する可能性があります。

遺産分割調停は、裁判官や調停委員など専門家が助言したり争点の解決方法を提示したりして進められるものです。

調停の場で、当事者それぞれが主張したことを元に結論が出されます。遠慮して言いたいことを我慢すると、納得の行かない結果になるかもしれません。正直に冷静に主張することが重要です。

最終的に作成される調停調書には法的強制力があります。悔いを残さないように、やれるだけのことをやりましょう。

遺産分割調停実施後の流れ

遺産分割調停がまとまると調停調書が作成されます。法的な強制力を持つ調停調書に反する遺産分割はできません。遺産分割調停でも解決できず、調停不成立となった場合は、自動的に遺産分割審判へと移行します。

遺産分割調停を有利に進める方法

遺産分割調停を有利に進めるにはどうしたらよいのでしょう。

遺産分割調停では、裁判官(家事審判官)や調停委員に与える印象が重要です。調停の場での態度やふるまいには、礼を尽くし、参席者への配慮を欠かさないようにしましょう。裁判官や調停委員に良い印象を与えることができれば、相手方への説得などで有利になるかもしれません。

調停でのふるまいとして気をつけるべきことを以下にまとめました。

【遺産分割調停で気をつけるべきこと】

・冷静にありのままの事実に沿って自分の主張を行う
・相手側へ歩み寄り、紛争解決への姿勢を見せる(一方的な主張を避ける)
・社会一般の常識に従う

遺産分割調停後の相続税の申告と納税

遺産分割調停が終了したら、相続税の申告と納付をします。遺産分割には期限はありませんが、相続税の申告・納税は相続が開始してから10ヶ月以内に行うよう法律で期限が決まっています。

支払いを怠り放置して期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが課せられる恐れがあります。(相続税の無申告・未払のペナルティについてはこちらの記事で詳しく解説しています)

相続財産が基礎控除内なら、相続税はかかりません。また基礎控除以外にも各種控除や特例があり、これらを適用して相続税を減らせる場合もあります。

しかし控除や特例の適用には条件があります。条件を満たさないと、どちらも使えません。遺産分割にかかりきりで、相続税の申告・納付の期限が過ぎないようご注意ください。

控除や特例を上手に活用した無駄のない相続税申告が難しそうなら、ぜひ専門家にご相談ください。相続専門の税理士は慣れていますので、時間がなくても万全の対応が可能です。

まとめ

遺産分割調停を申立てるには、遺言書・相続人・相続財産の調査が必要です。その後申立書を作成したり添付書類等の収集をします。調停にも時間がかかります。

相続税の申告・納税には期限があり、調停中もどんどん残り時間が少なくなっていきます。

相続に関わる問題でお悩みでしたら、ぜひ早めに専門家にご相談ください。税理士法人ともにでは、初回無料で相続に関わるご相談を受け付けております。お気軽にご相談ください。


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