遺言書の作成費用とメリット・デメリットを種類別に比較

相続人の負担を減らしてトラブルや紛争を避けたいなら、遺言書を作成するのがおすすめです。遺言書には遺産相続をスムーズに進める力があります。しかし自己流で作ってしまっては100%の力を発揮できない可能性があります。

遺言書が効力を発揮するためには、法的に有効な様式で作成し保管しなくてはなりません。保管費用も必要です。

この記事では、法的に有効な3種類の遺言書の作成保管方式の持つメリット・デメリットと、作成費用を比較しながら解説します。

最後まで読めば、どんな遺言書が自分のニーズに向いているか判断できるでしょう。まずは、各遺言書の特徴を詳しく見ていきましょう。

1.遺言書の種類

法的に効力を持つ遺言書のうち主要なものは、以下の3種類です。

1.公正証書遺言(※1)
2.法務局保管の自筆証書遺言(※2)
3.自筆証書遺言(※3)

では、各遺言書形式のメリットとデメリットを順番に解説します。

【関連する法律】
※1:民法第969条
※2:法務局における遺言書の保管等に関する法律
※3:民法第968条

出展:民法e-gov https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第九百六十八条、第九百六十九条、民法第九百七十条

2.全タイプの遺言書に共通する作成メリット

まずは遺言書全タイプに共通のメリットを解説します。遺言書を作成すると、以下の通り、3つのメリットが生まれます。

遺言書作成のメリット

・トラブルを予防する
・遺産分割協議が不要になる
・相続人以外に財産を渡せる

では、各メリットについて詳しく見ていきましょう。

2-1.遺言書作成のメリット1:トラブル予防

正式で内容が妥当な遺言書は、遺産相続にまつわるトラブルを防ぎます。

2-2.遺言書作成のメリット2:遺産分割協議が不要

法的に有効で、財産・債務に関して記載漏れのない遺言書があれば遺産相続協議は必要ありません。そのため遺族の負担を減らせます。

2-3.遺言書作成のメリット3:相続人以外に財産を渡せる

遺言書作成のメリットの1つに「相続人以外に財産を渡せる」ということがあります。これは「遺贈」という仕組みです。遺言書に遺贈について記載すれば、相続人以外の者に財産を渡すことができます。

(遺贈の注意点:※遺贈を含む遺言では、遺言執行人の専任が必須となります。)

このように遺言書があれば、相続人の相続手続きに費やす負担が減り、渡したい相手に意図的に財産を残すことができます。その結果、遺産相続をスムーズに進められるのです。

3.遺言書作成のデメリット

つづいて、遺言書作成におけるデメリットと注意点の解説です。デメリットは以下3点に集約できるでしょう。

遺言書作成のデメリット

・費用がかかる
・保管に手間がかかる
・内容の決め方がわからない

遺言書を安全かつ確実に保管するには、費用と手間がかかります。しかし保管がずさんな遺言書には改ざんや紛失のリスクがあり、いざという時に効力を発揮せず、本末転倒です。

遺言書の内容は自由ですが、スムーズな相続のためには、どのように書けばよいのかわからない方も多いです。なぜなら、財産を受け継ぐ人の気持ちに寄り添わない内容の遺言書は、逆に諍いをもたらすからです。

遺族の気持ちと法制度に配慮し、なおかつ遺言者の意志を反映した内容にするには、相続に詳しい人にアドバイスをもらうのがよいです。しかし、専門家に相談する場合は相談料がかかります。

4.遺言書の作成・保管の費用(遺言書種類別)

それでは、遺言書の作成と保管にかかる費用を、遺言書の種類別に解説します。

主な遺言書の種類には以下の3つがある、とお話しました。

1.公正証書遺言
2.法務局保管の自筆証書遺言
3.自筆証書遺言

<注>
以上3つの遺言書形式の他に、秘密証書遺言方式があります。秘密証書遺言は、内容は明かさず公証人に証明してもらう遺言形式です。(関連する法律:民法第970条)

つづいて各遺言方式のメリット・デメリット・費用を順番に解説します。

4-1.公正証書遺言を作成するメリット・デメリット・費用

はじめに、公正証書遺言のメリット・デメリットと作成費用、保管費用を解説します。

4-1-1.公正証書遺言のメリット

公正証書遺言のメリットは以下です。

  • ●公証人が作成する
  • ●公証役場で保管される
  • ●紛失や改ざんのリスクがない

公正証書遺言は、証人立ち会いのもと、遺言者から話を聞いて公証人が作成します。遺言作成に慣れた公証人が文書を作るので、遺言者が公的文書の作成が苦手でも安心です。

完成した遺言書は、公的な機関である公証役場で保管します。紛失や改ざんのリスクがなく、安全に保管できます。

4-1-2.公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言のデメリットは、以下のとおりです。

  • ●費用がかかる
  • ●証人が2人必要

公正証書遺言の作成・保管にかかる費用は、3タイプの遺言書のうち、1番高額です。

公正証書遺言を作るためには、証人が必要であることも、デメリットになります。なぜなら、作成に立ち会う証人には、遺言の内容を開示することになるからです。

遺産相続開始前に、遺言内容が、不用意に利害関係者に漏れることは避けたいです。証人には秘密厳守の人を選出しなくてはなりません。職業上守秘義務を持つ有資格者なら安心ですが、証人立会いを依頼すれば、ここでも費用がかかります。

4-1-3.公正証書遺言の作成費用

公正証書遺言の作成にかかる費用は、相続財産の金額と、相続人の数により変動します。平均的には、だいたい15万円程度必要と見込まれます。

以下が費用の内訳です。

  • ●公正証書手数料
  • ●証人の立ち会い料(日当)

1.の公正証書遺言を作成する手数料は、 相続人1人につき1件発生します。相続人が2人いれば手数料は2件分必要です。手数料の金額は法律で定められており、相続で渡す財産金額により変動します。(※詳細は、公証人手数料令第9条別表に記載あり。→公証人手数料はこちらで確認できます。)

2.の証人が立ち会うための手数料(日当)は、証人1人につき10,000円が相場です。証人は2人必要ですので、2人分で20,000円程度を見込みましょう。

4-1-4.公正証書遺言作成費用の計算例

具体的な事例で、公正証書遺言を作成する費用を計算してみましょう。

・遺言者:結婚している男性
・相続人:妻と子ども2人

合計3人の相続人に財産を渡す内容で、公正証書遺言を作る場合の費用を計算してみましょう。相続する財産の合計は現預金8,000万円とします。

◉財産総額:8,000万円

・妻に渡す財産:4,000万円    公正証書手数料 29,000円
・子ども1に渡す財産:2,000万円 公正証書手数料 23,000円
・子ども2に渡す財産:2,000万円 公正証書手数料 23,000円
・遺言加算費用 11,000円
・証人日当10,000円×2人 20,000円
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
合計 106,000円

この事例の場合は、公正証書遺言を作成するために、 約11万円の費用がかかりました。

公正証書遺言の場合は、作成してしまえば、別途保管料はかかりません。保管料の支払い無しで、公証役場で遺言書を預かってもらえます。

4-2.法務局保管の自筆証書遺言書を作成するメリット・デメリット・費用

つづいて、自筆証書遺言を作成して、法務局で保管してもらう「法務局保管の自筆証書遺言書」のメリット・デメリットおよび作成費用を解説します。

4-2-1.法務局保管の自筆証書遺言書のメリット

法務局保管の自筆証書遺言書には、次の2つのメリットがあります。

タイトル

・法務局に預けられるので紛失・改ざんの心配がない
・公正証書遺言より安い費用で安全に保管できる

法務局保管の自筆証書遺言の制度は、2020年に始まった新しい制度です。

公正証書遺言ほどの費用をかけずに安全に遺言書を保管できる仕組みとして、注目が集まっています。

4-2-2.法務局保管の自筆証書遺言書のデメリット

法務局保管の自筆証書遺言書のデメリットは遺言書の内容は自分で考えねばならないことです。

法務局は遺言書を安全に保管してくれますが、内容にアドバイスはしてくれません。

・遺言書の内容が円満な相続につながるかどうか?
・作成した遺言は遺言者の意向を反映しているかどうか?

など、作った遺言書が作者の希望を叶えるものかかどうか?の見極めはしてくれません。

ただし様式チェックはしてくれます。遺言書が所定の様式を満たしているかどうか、の確認はしてくれます。したがって法務局保管の遺言書なら、様式不備による無効の心配はありません。

4-2-3.法務局保管の自筆証書遺言書の作成費用

つづいて、法務局保管の自筆証書遺言書の作成費用をお知らせします。

法務局保管の場合は、遺言書の作成は遺言者本人の作業です。したがって、作成料はかかりません。費用として必要になるのは法務局の保管料のみです。

法務局での遺言書保管料は、以下となります。

遺言書保管申請(1通あたり) 3,900円

公正証書遺言と比較すると、かなり安い金額で預けることができます。

4-3.自筆証書遺言作成するメリット・デメリット・費用

つづいて、自筆証書遺言を作成し、自力で保管する場合のメリット・デメリットと作成費用を解説します。

4-3-1.自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットは以下です。

・作成に費用がかからない
・すぐに作れる
・自分で作れる

自筆証書遺言は、自分の手書きなので、作成に費用はかかりません。証人も求められないので人件費も不要です。

4-3-2.自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言には、自由に作成できるがゆえの、次のデメリットがあります。

・手書きの手間がかかる
・自分で確実に保管管理しなくてはならない
・様式を満たさないと無効
・紛失・改ざんのリスクあり

遺言書トラブルで最大のものが、「様式を満たしていない遺言書」と、「遺言書の紛失・改ざん」の2つです。

正しい様式の自筆証書遺言を書くためのポイントはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

4-3-3.自筆証書遺言書の作成費用

自分で書くだけなので「自筆証書遺言の作成」に費用はかかりません。

繰り返しになりますが、問題は費用よりも、遺言書としての様式を満たさずに効力を発揮しないことや、紛失・改ざんのリスクです。

遺言書種類別のメリット・デメリット・費用を比較

あらためて3種類の遺言書それぞれのメリット・デメリット・費用を表にしました。ご覧ください。

 メリットデメリット費用
公正証書遺言・公証人が作成する
・公証役場で保管
・紛失や改ざんのリスクなし
・費用がかかる
・証人が2人必要
平均15万円
法務局保管の自筆証書遺言・法務局に預けられる
・紛失や改ざんリスクなし
・公正証書遺言より費用が安い
・遺言書の内容は自分で考える3,900円
自筆証書遺言・作成費用なし
・すぐ作れる
・手書きの手間
・保管管理は自分で
・様式を満たさないと無効
・紛失・改ざんのリスクあり
・遺言書の内容は自分で考える
0円

費用が安ければ良いわけではない

費用的には、自筆証書遺言がいちばん少なくすみます。しかし、コストを下げればよいわけではありません。遺言書作成の目的を振り返りましょう。

遺言書作成の目的を見失わないこと

遺言書を作成する最大の目的は、遺言者の意志の反映と、円滑な相続でしょう。大事なのは遺言書作成の目的を見失わないことです。

法務局に預ける場合も、自筆証書遺言の場合も、共通するのは、「遺言書の内容は自分で決める」とうこと。

公証人や法務局は遺言書様式のチェックはします。しかし内容が妥当かどうかのアドバイスはしません。

遺言書作成の肝である内容については、自分の意志を反映し、財産を渡す人の気持ちを慮り、自分で考えて作らねばならないのです。

遺言書作成をサポートする専門家

遺言書の内容が、遺言者が実現したい未来に沿ったものかどうか、助言できるのは相続や相続後のお金や法律に精通した、利害関係のない専門家です。具体的な職業を挙げると「士業」に従事する方でしょう。

・弁護士
・司法書士
・税理士

弁護士は、家族・親族間の紛争やトラブルを解決するための知識があります。
司法書士は、相続放棄や相続登記などの手続きを代行可能です。税理士は、税金とお金の法律の専門家です。

遺言書の内容の相談相手として適切なのは、弁護士か税理士でしょう。司法書士は手続きの専門家です。

主に解決したい悩みが何なのか?で相談相手を選ぶのがおすすめです。悩みが多岐に渡る場合は複数の専門家に相談する必要があるかもしれません。

弁護士、司法書士、税理士などの専門家は守秘義務があるため、相談内容が外に漏れる心配がなく、安心です。こうした専門家は遺言執行者としても適任です。

まとめ

正式な遺言書を作成・管理するための費用を解説しました。遺言書を作成して管理する方法は公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言、自力保管の自筆証書遺言の3です。

それぞれメリット・デメリットがあり、かかる費用も異なります。各方式の特徴と費用を比べて、ご自身に向いた遺言の方式を選んでくださるとうれしいです。

遺言書内容や相続のご相談がございましたら、ぜひ相続専門税理士法人ともにへお声がけください。

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