相続手続きは、一生涯に何度も経験するものではありません。そのため、いざ自分自身が相続人になった場合に何をどうすればよいか、わからない方も多いです。やるべきことがわからないので、手続きを丸ごと専門家に依頼する方もやはり多いです。
しかし専門家に依頼すればいいと言っても、気になることが出てきます。たとえば、以下のようなことです。
・手続きをどのような専門家に頼むか
・相続手続きを専門家に頼んだら報酬はいくらかかるのか
費用がどのくらいかかるかは依頼前に知っておきたいですし、いい加減な人には頼みたくないですよね。
そこでこの記事では、どの手続きをどの専門家に依頼したらよいか、依頼した場合の費用の目安はどの程度なのか、をわかりやすく解説していきます。
相続の手続きは、各ご家庭の事情や財産種類により手続き方法が変わってきます。このため、一概に「こうすればよい」とは言えません。これが、わかりにくく感じる要因です。
とはいえ、多くの人に共通の手続きもあります。そこではじめに、多くの人にとって専門家に依頼したほうがよいと思われる、主な相続手続きの種類と内容を確認しておきましょう。
自分の死後に、自分の財産を誰に残すかを決めておく書面のことを遺言書と言います。遺言書には【普通方式の遺言】と【特別方式の遺言】の2種類があります。一般的によく使われるのは普通方式の遺言です。今回は普通方式の遺言について説明します。
普通方式の遺言には、下記の3種類があります。
遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する。
費用が掛からず簡単な方法だが、法的な要件不備の場合は無効になる恐れがある。
公証人に作成してもらい、かつ、原本を公証役場で保管してもらう。
法的に最も安全・確実であるが、費用がかかる。
遺言者が、適当な用紙に遺言内容を記載し、自署・押印した上で封印。
その後公証人役場に持ち込み、公証人および証人立会いの下で保管する。
注意点は、専門家のチェックを受けないので、不備があれば無効となる。
費用もかかる。
各遺言書の形式には、メリットデメリットがあります。したがって作成の目的に沿った形式を選択することが重要です。遺言書の効力についてはこちらの記事でも、詳しく解説しています。
遺言書の作成代行は、司法書士、弁護士、信託銀行が担当できます。ただ「どのように相続すると節税になるか?」といった助言は税理士の専門分野です。自分の目的に応じて、専門家を使い分けましょう。
家族の状況によっては、後見人の申立てが必要になります。遺産分割協議は、相続人全員が合意して行うものです。しかし、認知症や精神障害などで意思能力を失った方がいらっしゃる場合、その方は遺産分割協議に参加することができません。
意思能力がなく、遺産分割協議に参加できない人がいる場合は、本人に代わって分割協議を行う代理人を立て、話し合いをすすめます。これを「後見人の申立て」といいます。
後見人の申し立ては、家庭裁判所に対して、決められた書式や添付書類を提出して行います。しかし申立てにはデメリットや注意点もあるので注意が必要です。このため、申立てをする前に、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。後見人の申立ては、司法書士、弁護士が担当可能です。
引き継ぐ財産に多額の借金などがあり、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多いなら、相続放棄を選ぶ方法もあります。一切の財産を引き継ぎたくない場合も、相続放棄を選ぶという手はありです。(相続放棄する場合の申述書の書き方はこちらの記事で解説)
ただし相続放棄をすると、借金を引き継がなくてよい代わりに、預金や不動産などプラスの財産も相続できなくなります。このため相続放棄するかどうかは、慎重に検討する必要があります。
相続放棄の申立てについては、司法書士・弁護士が代行可能です。
相続する財産の額から、基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で算出)を超えた部分については、相続税の申告と納付が必要になります。
ただ基礎控除を超える財産がある場合でも、各種の特例を使うと相続税納付は不要になる場合があります。しかし特例が使えるかどうかを調べるのは、それなりに手間のかかる作業です。事務作業が苦手な人や慣れていない人は、大きな負担を感じることでしょう。
具体的な申告作業としてはまず、相続財産の総額を示す証拠資料を全て揃えます。その後資料をもとに申告書を記入しています。ただし相続税の申告については、所得税の確定申告のように、かんたんに書類作成できる仕組みを国税庁が用意していません。
そのため、作業は自分で調べて進める必要があります。正確な情報を集めなくてはならないので、調べるのが苦手だったり、自分の時間をこのために使いたくない場合は、専門家に依頼することをおすすめします。相続税の申告についてはぜひ、相続専門の税理士にご相談ください。
相続の手続きとして、不動産の名義変更も必要です。不動産の情報は、すべて法務局に登録されています。不動産の情報とは「どこにどれだけの広さの土地・建物があって、それを誰が所有しているのか」という情報です。
不動産の所有者が変わった場合は、法務局に登録されている情報を変更(名義変更)しなければなりません。相続によって不動産所有者の名義を変更することを相続登記と言います。
相続登記の手続きには、多くの書類が必要です。不動産の状況や、相続する人数によっては、書類収集だけでも時間がかかり、手続きも複雑になります。自分の手間をかけたくない場合は、専門家の力を借りたほうが楽に手続きできるでしょう。不動産の名義変更は司法書士に依頼可能です。
遺産について、相続人同士の意見が一致せず、いつまでたっても話し合いがまとまらない場合もあります。このような時は、代理人を立てて、代わりに交渉をまかせることができます。相続争いの代理人を引き受け可能な専門家は弁護士のみです。
相続争いとなり、話し合いがどうしても進まない場合は、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申立てます。
調停でも話がまとまらない時は、最終的には、裁判所の審判で分割方法が指定されます。調停において代理人となれるのは弁護士だけですが、申立書の作成など書面上の手続きは司法書士が対応可能です。
相続の手続きについて、専門家に依頼した場合の費用の目安を下表にまとめました。
【相続手続き別・専門家の費用目安1】
遺言書の作成 | 後見人の申立て | 相続放棄の手続き | 相続税の申告 | |
---|---|---|---|---|
司法書士 | 8万〜15万円 | 8万〜15万円 | 3万〜5万円 | × |
税理士 | × | × | × | 相続財産の1%程度 |
弁護士 | 20万〜30万円 | 10万〜20万円 | 5万〜15万円 | (代理) |
信託銀行 | 30万円〜 | × | × | × |
※財産内容は預金数百万円+不動産所有を想定
【相続手続き別・専門家の費用目安2】
不動産の 名義変更 | 相続争いの代理交渉 | 遺産分割調停の申立て | |
---|---|---|---|
司法書士 | 5万〜15万円 | 裁判書類作成 5万〜20万円 |
× (申立書作成のみ) |
税理士 | × | × | × |
弁護士 | (代理) | 着手金:10万~30万円 成功報酬:取得できた金額の6%〜10% |
着手金:20万~50万円 成功報酬:取得できた金額の10%〜16% |
信託銀行 | × | × | × |
※財産内容は預金数百万円+不動産所有を想定
同じ手続きであっても、専門家により費用が異なります。費用も踏まえて、各手続きに最適な専門家を選ぶ目安としてください。
次に、相続手続きを依頼できる、専門家それぞれの特徴について解説します。
司法書士は、司法書士法に基づく国家資格です。土地や家を買った時の登記手続きの専門家で、登記の代理が主な業務です。相続登記手続きを専門家に依頼したい場合は、司法書士に依頼します。
弁護士も不動産登記の申請が可能です。しかし、弁護士の本業は法的紛争の解決です。弁護士が不動産登記の申請を引き受ける場合、実務のほとんどは司法書士が代行していることが多いです。
税理士は税金の専門家です。税理士には、以下の相続にまつわる手続きを代行する権限があります。
・相続税の申告
・不動産の相続税評価額の算定
・準確定申告
相続税の申告を税理士に依頼すると
・どのように財産を分配すれば節税になるのか
・どのような特例を利用できるのか
といった、自分に合う相続税の払い方を相談できるメリットもあります。
特に不動産の相続税評価額の算定は、専門外の方には難しい作業です。不動産の評価額を正確に算定するためには、路線価を参考にした上で、土地の実際の形状を確認し、減額や特例使用ができるかどうか、細かく検討しなければなりません。詳しい知識と経験が必要となります。
不動産を相続する場合は、相続実務や不動産鑑定に明るい税理士に相談することをおすすめします。
税理士が代行可能な業務のうち、準確定申告は、被相続人の生前の収入に対する確定申告のことです。準確定申告は亡くなってから4ヶ月以内に行う必要があります。(準確定申告についてはこちらの記事でも解説しています)制限時間がありますので、ご自分で対応が無理そうでしたら、ぜひ税理士にご相談ください。
※税理士が担える業務については法令で決められています。詳しくはこちらの国税庁の情報をご確認ください。
弁護士は法律の専門家なので、遺産相続に関する業務全般に対応可能です。
特に
・遺産分割協議で相続人間の意見が合わない
・遺言書の有効性に争いがある
など、相続人だけでは解決できそうにない場合は、話し合いを先へ進める専門家として、弁護士に依頼することが望ましいです。
しかし弁護士を交えた話し合いでも上手くまとまらなければ、家庭裁判所において遺産分割調停や審判の手続きをとらざるを得ません。調停や審判となった場合に、代理人を引き受けられるのは、弁護士のみです。
信託銀行や保険会社も相続に関する金融商品を売り出し、運用するための相談を行っています。信託銀行や保険会社の報酬は、相続財産の1%~3%と高額な設定です。もし財産が1億円ある場合は、300万円程度の報酬を支払うことになるかもしれません。
加えて信託銀行や保険会社は、相続登記や相続税申告など相続で必要な法的な手続きには対応できません。このため財産の運用と別に、登記や申告の実務に関しては自分でやるか別途専門家に依頼する必要が出てきます。
相続財産を信託銀行に託そうとお考えでしたら、事前に運用のメリットとデメリット、およびかかる費用をしっかり確認するようにしましょう。
税理士事務所でも、相続税を得意とする事務所と、そうでない事務所があります。相続専門は意外と少ないです。また相続税申告の経験と実績により、申告内容にも差が出ます。
相続手続きを得意とする事務所かどうかは、次の4点で判断できます。
相続手続きってだれに頼むの?という疑問にお応えするため、各専門家の特徴や費用について解説しました。
相続の手続きを専門家に依頼する場合、大きく分けると次の2つの選択肢があります。
各ご家庭の状況によって、最適な手続きは変わってきますが、どんな場合でも相続を得意とする事務所であることをしっかり確認した上で依頼すれば、失敗は少ないです。
「ともにグループ」は、遺産相続の手続きを専門とする事務所です。相続に関する全ての手続に対応しており、外出せずにオンラインでのお手続きも可能です。相続税の申告手続きを代行する税理士の他、司法書士や弁護士とも提携しています。ぜひお気軽にご相談ください。
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