相続税の配偶者控除手続き方法と損な使い方で生じるデメリットを解説

配偶者の財産を相続される方に、ぜひ知って欲しい情報があります。それは、配偶者の相続税が免除される配偶者控除の仕組みとその使い方に関する知識です。

配偶者控除を使うと、相続税の金額はグッと引き下げられます。ただし配偶者控除を使うと生まれるデメリットもあるので、注意が必要です。

そこで、この記事では配偶者控除適用のメリット・デメリットや、使う場合の手続きについて、相続専門の税理士の視点で具体的に解説します。最後まで読めば、配偶者控除の知識や使い方が身につきます。ぜひ、今すぐお読みください。

この記事の目次
  1. 1.相続税の配偶者控除とは
  2. 2.配偶者控除のメリット
  3. 3.配偶者の法定相続分を計算する方法
  4. 4.相続税の配偶者控除を具体例で計算
  5. 5.配偶者控除の適用要件
  6. 6.配偶者控除適用に必要な書類
  7. 7.配偶者控除の適用をはばむ5大トラブルと対処法
  8. 8.配偶者控除のデメリット | 二次相続での負担が増える
  9. 9.遺産分割事例その1 | 二次相続の負担大の例
  10. 10.遺産分割事例その2 |二次相続の負担が減る方法
  11. 11.遺産分割の選び方で生まれる相続税額の差
  12. 12.相続税と配偶者控除のまとめ

1.相続税の配偶者控除とは

相続税の配偶者控除とは、配偶者が被相続人の遺産を相続したときに相続税額を軽減する制度のことです。

2.配偶者控除のメリット

配偶者控除のメリットはずばり、相続税がかからなくなる、もしくは非常に少なくなるということです。

配偶者が相続で受け取る財産が、以下の場合は相続税はかかりません。定められた条件は2つあって、2つの条件のどちらか多い金額までは、相続税がかからないことになっています。これが配偶者控除の仕組みです。

【配偶者控除条件1】

配偶者の法定相続分相当額までは相続税はかからない

【配偶者控除の条件2】 

配偶者が相続する財産額が1億6,000万円までは相続税はかからない

満たすべき条件をご覧いただくとわかるかと思いますが、配偶者控除は、配偶者にとって大きなメリットのある制度です。条件さえ満たしていれば相続税はかからず、多くの人にとって、その条件を満たすことはそれほど難しいことではないからです。

まず条件1の、法定相続分以内の相続であれば、配偶者に相続税はかかりません。

ところで法定相続分の金額がいくらになるのか?を知るには、所定のルールでの計算が必要です。もし計算がご面倒でしたら、弊社で用意したシミュレーションツールで自動計算できます。シミュレーションツールはこちらから無料で利用できますので、お気軽にお申し込みください。

また条件2の配偶者が相続する財産額が1億6,000万円までの場合も、相続税はかかりません。

配偶者が法定相続分以上に相続する場合も、1億6,000万円までは相続税はかからない、ということです。

次の章では、配偶者の法定相続分の計算方法を解説します。

3.配偶者の法定相続分を計算する方法

配偶者の法定相続分を計算するには、まず、すべての法定相続人と相続財産を特定しなくてはなりません。

3-1.法定相続人とは

配偶者には、必ず被相続人の財産を受け取る権利があります。配偶者以外の法定相続人は、以下の人たちです。

・被相続人の子ども(第1順位)
・被相続人の父母(第2順位)
・被相続人の兄弟姉妹(第3順位)

法定相続人の順位により、分配率が変わります。

参考:国税庁タックスアンサーNo.4132 相続人の範囲と法定相続分

3-2.法定相続人と法定相続分

配偶者とその他の相続人の法定相続分は、民法で下記の割合に定められています。

法定相続人の構成配偶者の法定相続分その他相続人の法定相続分
配偶者と子ども(第1順位)1/21/2
配偶者と父母(第2順位)2/31/3
配偶者と兄弟姉妹(第3順位)3/41/4

上記の法定相続分のルールを踏まえ、次からは具体的な金額をあてはめて、配偶者控除と相続税を計算してみましょう。

4.相続税の配偶者控除を具体例で計算

相続財産金額が1億6000万円以下と1億6000万円超の、2つの具体例で実際に計算してみましょう。

4-1. 配偶者の相続財産金額が1億6000万円以下

相続財産と相続人の組み合わせが、以下の状況であると想定して計算してみます。

【相続財産と相続人の組み合わせ】
◉相続財産の総額
・3億円

◉相続人(全部で3人)
・被相続人の配偶者(1人)・息子(1人)・娘(1人)

以下が、この組み合わせでの、各相続人の相続金額の計算結果です。

◉法定相続分で計算した各相続人ごとの相続金額

相続人の立場法定相続分相続金額
配偶者1/23億円✕1/2=1億5,000万円
息子1/43億円✕1/4=7,500万円
1/43億円✕1/4=7,500万円

この事例では、相続財産を配偶者と子ども2人で分配します。

子どもが何人でも配偶者の法定相続分は全体の1/2です。この原則にしたがって計算すると、配偶者が相続する金額は3億円✕1/2で、1億5,000万円になります。

ところで、配偶者控除の適用条件は2つありました。

1つは、「配偶者が法定相続分通り相続すれば、配偶者には相続税はかからない」というものです。

今回のケースでは、配偶者の法定相続分は1億5,000万円なので、この通り相続すれば相続税はかかりませんね。

またもう1つの配偶者控除の条件は、「配偶者の相続する財産が1億6,000万円までなら相続税はかからない」です。

このケースの場合なら、配偶者があと1,000万円まで法定相続分より多く相続したとしても、1億6,000万円以下に収まるので相続税はかからない、ということになります。

4-2. 配偶者の相続分が1億6000万円超

つぎに配偶者の相続金額が1億6000万円超になる場合を見てみましょう。今回の相続財産と相続人の組み合わせは、以下の事例で計算してみます。

【相続財産と相続人の組み合わせ】
◉相続財産の総額
・3億円

◉法定相続人(全部で2人)
・被相続人の配偶者(1人)・被相続人の母(1人)

各相続人の法定相続分と相続金額は下記のとおりとなります。

相続人の立場法定相続分相続金額
配偶者2/33億円✕2/3=2億円
1/33億円✕1/3=1億円

参考:国税庁タックスアンサーNo.4132 相続人の範囲と法定相続分

この事例で配偶者が法定相続分通りに相続した場合の相続金額は2億円となり、1億6,000万円を超えます。

しかし配偶者控除適用の条件の1つである「法定相続分までの相続」をすれば、相続金額が基準の1億6,000万円を超えていても、配偶者には相続税はかかりません。

ただし配偶者が法定相続分の2億円を超えて相続したとしたら、その分に対しては課税されます。

5.配偶者控除の適用要件

配偶者控除の条件を満たして配偶者控除を適用すれば、配偶者に相続税はかかりません。しかし配偶者が控除を適用するためには、満たしておかねばならない要件があります。

配偶者が満たすべき要件とは、以下の3つです。

配偶者控除の3要件

(1)戸籍上の配偶者であること
(2)相続税の申告書を税務署に提出すること
(3)遺産を隠蔽していないこと

順番に解説します。

5-1.要件1 戸籍上の配偶者であること

配偶者控除を利用できるのは、婚姻届が受理されている法律上の配偶者だけです。内縁関係、または事実婚では配偶者控除の適用を受けられません。

5-2.要件2 相続税申告書の提出

配偶者控除を受けるには、相続税の申告期限までに遺産分割協議を完了して相続税の申告を済ませていなくてはなりません。相続税の申告期限は、相続発生から10か月以内です。

控除後の相続税金額が0円になるとしても、配偶者控除の適用を受けるためには必ず税務署に申告を行う必要があります。

ただし、相続財産の金額が相続税の基礎控除以下の場合は相続税の申告は必要ありません。

ちなみに相続税の基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数、という計算式で計算できます。

5-3.要件3 遺産を隠していないこと

配偶者控除を適用するには、被相続人の遺産を隠さずに正しく申告する必要があります。

もしも相続税の申告後に税務調査が入り、そのときに隠していた財産が発覚したならば、修正申告が必要になります。

正しく申告しておらず、隠していたことが発覚した財産に対しては、配偶者控除は適用されません。

また、財産を正しく申告せず隠していたと見なされると、ペナルティの重加算税が課されます。重加算税の割合は、35%から50%と非常に高額です。

6.配偶者控除適用に必要な書類

配偶者控除の適用に必要な書類は、以下のとおりです。

・相続税申告書
・亡くなった人の出生から死亡までの履歴がわかる戸籍謄本
・遺言書の写しまたは相続人全員の印鑑証明書を添付した遺産分割協議書の写し
・配偶者の取得した財産が分かるもの

上記の書類が準備できたら、税務署に提出します。

7.配偶者控除の適用をはばむ5大トラブルと対処法

配偶者控除が適用できれば、相続税の支払いが必要なくなったり、減額できたりします。

しかし実際の相続の場面では、配偶者控除の適用をはばむトラブルが起きることがよくあるのです。この章では、配偶者控除を適用したい人が直面する代表的な5つのトラブルと、その対処法を解説します。

7-1.トラブル1申告期限内に遺産分割できない

相続人の間の意見が食い違い、相続税申告の期限までに、遺産分割協議がまとまらない場合があります。分割協議がまとまらなければ、申告書を作成できません。

【対処法】

申告期限内に遺産分割協議がまとまらない場合は、いったん申告期限内に相続税の申告書を提出して納税を済ませる、という対処法があります。ここでのポイントは、申告書に申告期限後3年以内の分割見込書を添付することです。いわば仮の申告書を提出する、ような考え方になります。

このやり方でネックとなることは、最初の申告時には、受けられるはずの配偶者控除を受けられないということ。そのため場合によっては、納税のために多額の資金が必要になることがあります。

しかし申告期限から3年以内に正式に遺産分割を済ませて、更正請求を行って認められれば、配偶者控除が適用されて払いすぎた税金を取り戻せるでしょう。

対処の順番としては、以下のようになります。

(1)遺産分割協議がまとまらない
(2)いったん申告(3年以内の分割見込書を添付)
(3)控除が適用されていない相続税を払う
(4)遺産分割協議をまとめる(3年以内)
(5)税務署に更正請求する(配偶者控除を適用する)
(6)納めすぎた税金が戻る

7-2.トラブル2 申告後の第2期限内にも遺産分割がまとまらない

最初の申告期限後の3年以内に遺産分割をまとめて、更正請求をすれば払いすぎた税金を取り戻せるのですが、このいわば第2の期限内にも遺産分割がまとまらないことがあります。

たとえば「遺産分割の話し合いがこじれて訴訟になった」といった場合です。訴訟になると申告期限後の3年以内に終了せず、期限内に分割ができないこともあります。

【対処法】

このように第2の期限中にも分割できない場合は、さらに手続きすればもう1段階の猶予があります。この場合の手続きの方法は以下のとおりです。

◉手続き方法

・承認申請書を所定の期日までに税務署に提出して承認を受ける
・所定期日は最初の申告期限から3年を経過した日の翌日から2か月以内

この手続で提出する書類は以下となります。

◉提出書類

・遺産の未分割についてやむを得ない事由を記載した承認申請書
・訴状(訴訟の場合に、遺産分割できない証明の書類として)
・遺言書(遺言書がある場合に遺産分割できない証明の書類として)

税務署が承認申請書を承認すれば、遺産分割できない事由が解消した後に、配偶者控除の適用が可能になります。

◉税務署に承認された後の配偶者控除適用の手続き

税務署に提出した承認申請書が承認された後に、配偶者控除を適用する手続きは以下のとおりです。

(1)遺産分割できない事由解消日翌日から4か月以内に遺産分割をする
(2)遺産分割後に更正の請求手続きをする
(3)配偶者控除が適用される

7-3.トラブル3 申告後に新たな遺産が見つかる

相続税の申告手続き完了後に、新たに遺産が見つかる場合があります。受け取る財産が増えるのはよいですが、手続きの手間は増えます。

【対処法】

新たな財産が見つかった場合は、相続税の修正申告を行いましょう。自分から相続税の修正申告をした場合には配偶者控除が適用できます。

ただし、税務署の指摘により修正申告した場合は別です。この場合は配偶者控除が使えない可能性が高い。加えて重加算税が課税されることもあります。

申告後に新たな財産が見つかったら放置せずに、すぐ修正申告しましょう。

7-4.トラブル4 納税していない

相続税の申告と納税義務があることを知らず、相続税を申告しなかった‥という場合があります。

税務署から「相続についてのお尋ね」という文書が送られてきて、初めて相続税の納税義務があることに気づくようなケースです。

【対処法】

申告期限が過ぎた後でも、申告は可能です。期限を過ぎてからの申告は「期限後申告」と呼ばれます。期限後申告でも、手順にしたがって申告を行えば配偶者控除の適用ができます。

7-5.トラブル5 配偶者が遺産分割の前に死亡する

遺産分割協議を進めている途中で配偶者が亡くなることもあります。こうした場合でも配偶者控除の適用が可能です。

遺産分割の前に配偶者が亡くなった場合の手続きは、以下の手順で進めます。

1.配偶者が生存している状態を仮定して相続財産の分割をする
2.残った相続人の合意で配偶者が受け取る財産を決定する
3.配偶者が受け取る財産に対して配偶者控除適用の手続きをする

つづいて、配偶者控除を使った場合のデメリットを解説します。

8.配偶者控除のデメリット | 二次相続での負担が増える

配偶者控除の適用で生まれるデメリットは、二次相続時に税額が大きくなることです。

二次相続とは、被相続人の配偶者が亡くなったときの相続を指します。一次相続/二次相続とは、一般的に2つの相続を経験することになるであろう子どもの立場から見た各相続を指す言葉です。

子どもの視点で例を挙げてみます。両親のうち、はじめに父親が亡くなりました。ここから父親の財産の相続が始まります。これが一次相続です。次に、数年後に母親が亡くなりました。ここから始まる母親の財産の相続が二次相続です。

二次相続での税負担が大きくなるのには、以下3つの要因があります。

・配偶者控除が使えない
・二次相続時には配偶者自身の財産が遺産として加算される
・二次相続では配偶者がいないので基礎控除額が減る

二次相続では、相続する人の中に配偶者がいません。配偶者がいないということは、控除金額の大きい配偶者控除が使えない、ということです。また、二次相続時には配偶者自身の財産が相続財産として加算されます。さらに配偶者が亡くなったことで相続人の数が減ったため、基礎控除額も少なくなります。

その結果二次相続での相続税額が重くなり、子どもたちに相続の負担が集中することになります。

9.遺産分割事例その1 | 二次相続の負担大の例

一次相続と二次相続のやり方次第で、トータルの相続税額には大きな差が出ます。ここから、遺産分割のやり方で、相続税額が大きく変わる事例を2つ、ご紹介します。始めに採り上げるのは、トータルの負担が大きくなってしまう事例です。

相続人と相続財産は、以下の構成であると想定します。

◉相続人と相続財産
被相続人
相続財産1億6,000万円
相続人(3人)母(配偶者)
子ども(長男)
子ども(長女)

9-1.一次相続で配偶者控除を限度額まで活用 | 相続税負担なしにする

この相続では、配偶者控除を最大1億6,000万円適用できるメリットをフル活用するため、一次相続で母が全ての財産を相続します。

9-2.一次相続での相続税額

以下が、一次相続での相続と相続税額の内訳です。

◉一次相続での相続と相続税額の内訳
相続人相続する財産相続税額
母(配偶者)被相続人の遺産1億6,000万円をすべて相続する0円※配偶者控除を適用すると1億6,000万円以下までは課税されない
子ども(長男)遺産を相続しない0円
子ども(長女)遺産を相続しない0円
一次相続で支払う相続税の合計額0円

配偶者である母が1億6,000万円の相続財産をすべて相続し、配偶者控除を適用した場合は相続税はかからないことになります。

9-3.二次相続の相続税額

母が亡くなると二次相続が始まります。二次相続の相続税を計算してみましょう。

【二次相続時の状況と遺産分割】

・一次相続の財産を母が生活費などで1,000万円使用したと仮定します。二次相続時の財産額は1億5,000万円になっています。

・二次相続では、法定相続分で遺産分割することにしました。1億5,000万円を法定相続人である子ども2人が2分の1ずつ(7,500万ずつ)相続します。(この事例では母の固有財産はないものと仮定します。)

【二次相続での相続財産額】

1億5,000万円

【基礎控除】

基礎控除額=3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
(※基礎控除は、相続人に必ず認められる控除です。)

【課税遺産総額】

相続財産1億5,000万円−基礎控除4,200万円=課税遺産総額1億800万円

【二次相続の相続税計算】

以下が二次相続での相続税額の計算式です。法定相続分どおりで遺産分割するなら、国税庁の速算表を使っで、税率や控除額の確認ができます。

◉二次相続の相続税計算式
相続人計算式相続税額
子ども(長男)1億800万円×1/2×税率30%-控除額700万円=920万円
(※速算表にもとづいて計算)
920万円
子ども(長女)1億800万円×1/2×税率30%-控除額700万円=920万円
(※速算表にもとづいて計算)
920万円
二次相続で支払う相続税の合計額1,840万円

法定相続分どおりで相続する場合は、それぞれの子どもに課せられる相続税は920万円です。合算すると、全体の相続税は1,840万円となります。

相続税額を計算するには、速算表を使います。下記は、国税庁が公開している相続税の速算表です。各相続人が、法定相続分どおりに相続する場合、以下の速算表の税率や控除額を使って計算できます。

◉相続税の速算表(国税庁提供)法定相続分に応ずる取得金額税率控除額1,000万円以下10%なし3,000万円以下15%50万円5,000万円以下20%200万円1億円以下30%700万円2億円以下40%1,700万円3億円以下45%2,700万円6億円以下50%4,200万円6億円超55%7,200万円各相続人が法定相続分どおりに相続する場合は、上記の速算表の税率や控除額で計算します。出典引用:国税庁タックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

9-4.一次相続と二次相続の相続税合計

一次相続での相続税と、二次相続での相続税を合計すると、1,840万円です。

◉一次相続と二次相続の相続税合計金額
一次相続の相続税0円
二次相続の相続税1,840万円
相続税の合計額
(一次相続+二次相続)
0+1,840万円 =1,840万円

この一次相続と二次相続で、かかった相続税を合計すると、金額は1,840万円です。

10.遺産分割事例その2 |二次相続の負担が減る方法

次に、二次相続での負担を減らせる遺産分割の事例をご紹介します。この事例では、一次相続・二次相続ともに、法定相続分で相続します。

一次相続のときに、配偶者控除を金額面での限度枠いっぱいまでは使わない点が肝です。この方法を採ると、一次相続での相続税は上がりますが、一次と二次を合計したトータルの相続税負担額は少なくなります。

10-1.一次相続の課税遺産総額を計算

まず、一次相続を法定相続分で相続する場合の課税遺産総額を計算します。相続人と相続財産を振り返りますと、以下の状況です。

◉相続人と相続財産
被相続人
相続財産1億6,000万円
相続人(3人)母(配偶者)
子ども(長男)
子ども(長女)

【相続財産額】

1億6,000万円

【基礎控除計算】

基礎控除額=3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
(※基礎控除は、相続人に必ず認められる控除です。この事例では相続人が3人いるので3人分が控除できます。)

【課税遺産総額】

課税遺産総額=相続財産額1億6,000万円-基礎控除4,800万円=1億1,200万円

10-2.一次相続での相続税額

課税遺産総額から、各人が法定相続分で相続するとして、一次相続での相続税額を計算します。

◉一次相続での相続と相続税額の内訳
相続人相続財産と法定相続分での相続税計算式全体の相続税額実際の相続割合による相続税額計算相続税額
母(配偶者)・課税遺産総額1億1,200万円×法定相続分1/2=5600万円・5600万円×税率30%-控除700万円=980万円980万円+370万円+370万円=1,720万円1,720万円✕1/2
=980万円
0円※配偶者控除を適用すると1億6,000万円以下までは課税されない
子ども(長男)・課税遺産総額1億1,200万円×法定相続分1/4=2,800万円・2,800万円×税率15%-控除50万円=370万円1,720万円✕1/4
=430万円
430万円
子ども(長女)・課税遺産総額1億1,200万円×法定相続分1/4=2,800万円・2,800万円×税率15%-控除50万円=370万円1,720万円✕1/4
=430万円
430万円
一次相続で支払う相続税の合計額 860万円

法定相続分で一次相続した場合の相続税合計額は、860万円と計算できました。

10-3.二次相続の相続税

次に、配偶者である母が亡くなり、二次相続が発生したときの相続税を計算してみます。二次相続においても、法定相続分どおりに相続するとします。

【相続財産額と分割方法】

相続財産の状況と、分割方法は以下の通りです。

・配偶者は最初の遺産の1/2額である8,000万円を相続し、そのうち1,000万円を生活費として使ったと仮定します。残った財産は7,000万円です。

◉一次相続での相続と相続税額の内訳
相続人相続財産と法定相続分での相続税計算式全体の相続税額実際の相続割合による相続税額計算相続税額
母(配偶者)・課税遺産総額1億1,200万円×法定相続分1/2=5600万円・5600万円×税率30%-控除700万円=980万円980万円+370万円+370万円=1,720万円1,720万円✕1/2
=980万円
0円※配偶者控除を適用すると1億6,000万円以下までは課税されない
子ども(長男)・課税遺産総額1億1,200万円×法定相続分1/4=2,800万円・2,800万円×税率15%-控除50万円=370万円1,720万円✕1/4
=430万円
430万円
子ども(長女)・課税遺産総額1億1,200万円×法定相続分1/4=2,800万円・2,800万円×税率15%-控除50万円=370万円1,720万円✕1/4
=430万円
430万円
一次相続で支払う相続税の合計額 860万円

・子供2人が法定相続人となり、それぞれ法定相続分どおりに、母の財産を1/2ずつ相続するとします。(この事例では母の固有財産はないものと仮定します。)

【基礎控除計算方法】

基礎控除額=3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
(※基礎控除は、相続人に必ず認められる控除です。)

【課税遺産総額】

相続財産1億5,000万円−基礎控除4,200万円=課税遺産総額1億800万円

【二次相続の相続税計算】

法定相続分どおりの分割で、二次相続する場合の相続税額の計算式は、以下のとおりです。法定相続分どおりで遺産分割する場合は、国税庁の速算表に記載されている税率や控除額で計算できます。

◉二次相続の相続税計算式
相続人相続財産と法定相続分での相続税計算式全体の相続税額実際の相続割合による相続税額計算相続税額
子ども(長男)課税遺産総額2,800万円×1/2×税率15%-控除額50万円=160万円160万円+160万円=320万円320万円✕1/2=160万円160万円
子ども(長女)課税遺産総額2,800万円×1/2×税率15%-控除額50万円=160万円320万円✕1/2=160万円160万円
一次相続で支払う相続税の合計額 320万円

二次相続での相続税合計額は320万円となります。

10-4.一次相続と二次相続の相続税合計

一次相続と二次相続で支払う相続税を合計すると、金額は1,180万円となりました。

◉一次相続と二次相続の相続税合計金額
一次相続の相続税860万円
二次相続の相続税320万円
相続税の合計額
(一次相続+二次相続)
860万円+320万円 =1,180万円

この相続方法での、一次相続・二次相続を合わせた相続税の合計額は 1,180万円でした。

11.遺産分割の選び方で生まれる相続税額の差

相続税の合計額を、2つの事例で比較すると1,840万円と1,180万円です。その差は660万円。

このように、一次相続での遺産分割と配偶者控除の使い方次第では、二次相続での相続人への税負担が重くなります。

相続全体を見たときに、相続税を適正な範囲に納めるためには、遺産分割の方法が非常に重要になってきます。

しかし、どの割合で相続財産を分割すると最も節税になるかを計算するためには、専門性と細心の法律知識やノウハウが必要です。

財産額、相続人の人数、財産種類などの多くの要素もからみます。ぜひ相続専門の税理士にご相談ください。私ども税理士法人ともにでも、財産分割と相続税の納め方のご相談を承ります。初回のご相談は無料です。ぜひご検討ください。

12.相続税と配偶者控除のまとめ

相続税の配偶者控除制度について解説しました。配偶者控除を利用すると大きな金額を節税できますが、適用の方法には注意点もあります。以下が、注意ポイントのまとめです。

配偶者控除の注意ポイントまとめ

・配偶者控除を適用するには相続税の申告手続きが必要
・配偶者控除をめいっぱい利用して一次相続すると、二次相続での相続税額が高くなる場合がある
配偶者控除を上手に活用するには計画的に一次相続と二次相続の遺産分割を行うこと

ご自身で計画的に遺産分割したり、情報収集したりが難しい場合は、ぜひ専門家にご相談ください。税理士法人ともにでは、相続申告のお手伝いを数多く手掛けてきました。初回のご相談は無料で受け付けておりますので、ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。

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