相続税で失敗したくない人が相続不動産の評価を不動産鑑定士に依頼すべき理由とは

このサイトをご覧頂いている皆様は、少なからず、相続税について何らかの理由で気にかけていらっしゃる方と思います。そして我々も数多くの相続税の申告業務を担当させて頂いていますが、その経験上で申し上げると、相続税の申告で、重要なファクターとなるのは適切な不動産価値の把握です。

なぜなら、多くの相続税申告の場合、課税対象となる財産の相当部分の価値が不動産で占められているからです。

実際に多くの相続税の申告を手掛けていて感じることは、不動産価値がわからず、その延長として算定される相続税の額も把握できず「わからないがために不安を感じる」ご依頼者が多いということです。

よってここでは、相続税評価で時たま必要になる「不動産鑑定士に鑑定評価を依頼すべき」場面について、背景の理由も踏まえつつ解説します。

ただ前提として「不動産鑑定士」が何かを把握しないとご理解いただけないと思いますので、まずは不動産鑑定士について説明します。

1.不動産鑑定士ってどんな人?

「不動産鑑定士」ではなく、「税理士」ならば、確定申告の依頼をしたり、会社で決算の税務申告書の作成を委ねていたりする場合もあるため、少なからず縁がある方も多いのではないでしょうか。

しかし不動産鑑定士については、あまり耳にしたことがない方や、耳にしたことはあっても会った事はない…という方が多いかもしれないですね。

そこでまず始めに「不動産鑑定士とは何ぞや」について説明します。

不動産鑑定士をひとことで言うと「不動産の公正な価値を判定・決定する人」です。

つまり、地域の相場や投資採算価値(鑑定する不動産が賃貸物件である場合に世間的に妥当と判断される価値)等に基づき、不動産の価値を判定・決定する専門家が不動産鑑定士である、と言えます。

ちなみに不動産鑑定士は、売買の仲介や媒介等を専門とする不動産仲介業者(宅建業者)とは異なります。不動産鑑定士は、豊富な知見と経験、および不動産鑑定士用の専門情報に基づき価格を判定・決定する専門家です。

一般的な俗説ですが、不動産鑑定士は弁護士や公認会計士と並ぶ文系三大難関国家資格と言われております。つまり難易度の高い資格試験を突破できるだけの能力がなければ、不動産鑑定士にはなれません。

<参考>
国土交通省:不動産鑑定士とは

2.不動産鑑定士と税理士

税務申告の場面で、本人に代わって申告したり、税務相談・税務の代理を務めたりすることは、「税理士しか担当してはいけない」と税理士法で決められています。そのため不動産鑑定士は税務については対応できません。

不動産鑑定士試験も税理士試験も難関資格ですので、合格するためには多くの学習期間や能力を必要とします。そのため、両方の資格を保有し、資格を活かして活動している方はほとんどいません。つまり、不動産鑑定士が税務関連の業務を実行することはない、ということになります。

3.相続の際に不動産鑑定士が必要になる場面とは

不動産鑑定士に相続税の評価を依頼するのはどのような場合でしょうか?一言でいうと、不動産鑑定士に依頼すべき場合とは、ずばり「相続財産に特殊な不動産が含まれている場合」です。また相続以外でも、土地の評価を鑑定士に依頼する場合があります。

3-1.特殊な不動産と「ふつう」の不動産

それでは、特殊な不動産とは何か、なぜ特殊な不動産が含まれていると不動産鑑定士が必要なのかについて説明します。

まずは一般的な普通の不動産の評価方法について説明しましょう。

3-2.「ふつう」の不動産の評価方法

不動産は、相続税申告に際して下記の方法で評価します。(相続税財産評価基準の一部を構成する路線価方式の場合)

3-2-1.土地の評価方法

土地を評価するには、まず路線価に基づき「その土地の存する範囲の標準的な画地の路線価に基づく単価」を把握します。次にその不動産の個別的な補正要因を考慮の上「相続税計算用のその土地の単価」を算出します。

算出した単価に地積を乗じ、その土地が借地権か底地である場合は、借地権割合や底地割合も考慮して算定します。

3-2-2.建物の評価方法

建物については、固定資産税評価額に基づいて算定します。

以上の計算方法は、相続税計算用に機械的に構築されている基準で、「相続税路線価は市場価格の80%である」という建前で設定されています。

建物についての評価のメカニズムは複雑です。しかし通常の建物の評価額は、新築に近ければ近い程、市場での購入を想定した価格より、固定資産税評価額の算定価格が安くなる傾向にあります。建物の相続税申告には固定資産税評価額を使えるので、現実の不動産市場での購入を想定した価格よりも、安く評価できる場合が多いのです。その結果、相続財産の総額が減りますから、相続税も安くて済む…という話となります。

以上のように「ふつう」の不動産の場合は、わざわざ相続税申告のために、不動産鑑定を行うメリットがありません。

ですが相続税財産評価基準は、いわば機械的な基準です。「ふつう」でない不動産を、この機械的な評価に委ねると、価値が高くなりすぎる場合があります。

なぜなら、「ふつう」でない特殊な不動産は、相続税路線価や建物の固定資産税評価において、価値を大きく押し下げる要因を持っていることがあるからです。しかし機械的に不動産評価してしまうと、価値を押し下げる要因が反映されないため、財産価値が高く算定されて課税額も高くなります。

不動産の持つ価値を正しく反映した不動産評価をして結果的に相続税などの費用を安く済ませるためには、一時的にコストが増えたとしても、不動産鑑定士による鑑定と評価を受けた方がよい場合もあるのです。不動産鑑定評価について詳しく知りたい方はこちらの記事で解説していますので、あわせてお読みください。

3-3.特殊な不動産の例

特殊な不動産としては、以下のような例があります。

  • 稼働状況の低い賃貸物件
  • 地方の過疎地で「その地域において、とてもそのような高額での不動産取引が期待できない」不動産
  • 道路に接しておらず建物の建築が期待できない土地
  • 古びていて買い手が期待できない区分マンション

特殊な不動産は、「不動産鑑定評価を行うほうが得かどうか」を、まず判断する必要があります。しかし、その判断を、不動産取引に慣れていない一般の方がするのは難しいことです。

なぜなら、不動産が「どの程度の価格を期待できるか」という判断は、そもそも不動産鑑定の専門知識がないと無理だからです。

ただし、相続税申告に慣れている相続専門の税理士であれば、ある程度「これは不動産鑑定士に相談した方が良さげだな」というアタリがつけられます。

ですから「相続する財産に特殊な不動産が含まれているかどうか」「不動産鑑定士に評価依頼すべきかどうか」の判断は、相続税の申告を依頼する相続専門の税理士に委ねた方がよいでしょう。

4.相続税の評価を不動産鑑定士に依頼するには

相続税の評価を不動産鑑定士に依頼したいときはどうしたらよいのでしょうか。不動産鑑定士については、耳にした事がない方や、よしんば耳にした事があってもお会いになった事がない方が大半でしょうと申し上げました。

なにしろ、税理士が78,795人(令和2年3月末時点)もいるのに、不動産鑑定士の絶対数は8,207人(平成28年1月1日時点)と、1/10強しかいないのです。しかも、不動産鑑定士が実際に鑑定業務を行うには、日本不動産鑑定士協会連合会に登録していないと業務ができません。

不動産鑑定士以外の仕事をしている不動産鑑定士もいるので、すべての不動産鑑定士全員が日本不動産鑑定士協会連合会に登録しているわけではありません。不動産鑑定士から聞いた情報によると、実際に不動産鑑定士で、日本不動産鑑定士協会連合会に登録している人は、5,000人弱程度(令和元年11月30日現在)しかいないそうです。

5.不動産鑑定士を自力で探すのは難しい

鑑定の実務ができる不動産鑑定士の数は少ないので、一般の方が相続税申告の鑑定評価に際して、不動産鑑定士を自力で探すのは難しいことです。もちろんインターネット等で自力で探す事はできます。

しかし実態として、不動産鑑定士によっては、相続税関連の知識を持っていないため、相続税担当の税理士と阿吽の呼吸が取れない場合もありますから、あまりおすすめはできません。

6.税理士法人ともには不動産鑑定士兼税理士と提携

当事務所では、数少ない「不動産鑑定士兼税理士」として活動する不動産鑑定士と、提携しています。このため、必要に応じて連携を取りつつ、より高いレベルでの申告業務の提供が可能です。

当事務所にご依頼いただいた場合は、ご自身で不動産鑑定士を探す必要はありません。相続財産の不動産価値について気になっている場合は、ぜひ当事務所にお声がけください。

7.不動産鑑定士に鑑定依頼する手順

当事務所で担当する相続税申告案件で不動産鑑定が必要と判断した場合、どのような手順で鑑定依頼するかを説明します。

まず正式依頼前に不動産鑑定士に価格目線や必要な報酬を聴取し、その結果を踏まえて、相続人に鑑定評価の提案をします。

その上で相続人が承諾した場合は、不動産鑑定士が必要とする資料を、相続人に提示しましょう。

以下は必要な資料の例です。

  • 不動産の固定資産税
  • 都市計画税の税額通知
  • アパート等の場合の賃料・経費等の内容

といったものが挙げられます。

資料を用意した上で、不動産鑑定士が現地調査におもむき、鑑定評価書を作成します。鑑定評価書のドラフトが出来た段階で、当時事務所と一緒に検討します。

特に不都合がない場合は鑑定評価書を発行し、鑑定評価書を踏まえて相続税申告する流れとなります。

不動産鑑定士が該当の不動産を訪れる場合は、できれば相続人にも立会をお願いしたいところです。しかし現実問題として、不動産所在地の交通が不便で難しい場合もあります。その場合は立会い不要の外観調査のみで対応いたします。

先日も、東京から最短でも6時間程度かかる西日本の過疎地の不動産について、不動産鑑定士に立会不要の外観調査で鑑定評価をお願いしました。相続財産が全国どこにあっても対応できるのでご安心ください。

但し不動産鑑定士がとんなに完璧な鑑定評価書を作成しても、残念ながら税務署の判断により、鑑定評価書の内容を否認する可能性はゼロにはなりません。

当事務所では、否認の可能性が低い場合にのみ鑑定評価のご提案をします。しかしリスクが完全には除去できないことと、ご契約前にその旨ご承諾くださるようお願いしている点は申し添えておきます。

8.相続税申告で不動産鑑定士に依頼するプラスαのメリットとは?

相続税申告で不動産鑑定士に依頼すると費用は増えますが、相続税申告にとどまらないプラスαのメリットがあります。

当事務所では、ご依頼者が相続財産に何等かの問題を感じている場合、お悩みを詳しく伺い、必要に応じて弁護士や司法書士等の各種専門家とも連携します。

最終的に「相続税の申告も含めたハッピーな相続」ができることこそが、当事務所の提供する最大の価値です。ご依頼者様の悩みを解決するために、不動産についてのご相談を積極的にお受けしています。

例えば相続財産について「相続税申告自体に直接的な悩みはないものの、その後の扱いについて問題を抱えている」といった場合に、+αとして相談をお伺いしております。

8-1.+αのメリット1 アパート経営のご相談

+αのご相談でよくあるのがアパートに関する話です。相続財産にアパートが含まれている場合、その稼働状況や収支が悪い場合があります。経験豊富な不動産鑑定士なら、賃料水準や収支の分析ができます。このためアパートの稼働状況や収支が思わしくない場合は、なぜ稼働状況が劣るのかがわかるのです。稼働状況や収支が劣る原因がわかれば、改善策が浮かび上がります。

8.2.+αのメリット2 借地権や底地のご相談

あるいは、借地権や底地の場合。この場合も、ご相談を頂きその不動産自体やその資料を拝見できれば、売った方がよいのか、買い取った方がよいのか等、色々と改善策を講じることができます。

9.まとめ

このように当事務所経由で不動産鑑定士に相談することは、単に相続税申告のための不動産の相談をするだけでなく、その後の処置についても相談できるメリットがあるのです。

相続で「ある日突然に自分のものになった不動産」の扱いや問題点は、一般の方にはすぐにはわからないものです。

当事務所は、不動産に限らず、幅広い相続財産について、不動産鑑定士をはじめ各種専門家と連携体制をとっております。相続のみならず相続後がハッピーであるよう、最大限の努力をしておりますので、是非、お声がけいただければと思います。

お気軽にご相談ください

  • 時間がなくて何もできない
  • 何をしたら良いのかわからない
  • とにかく相談したい

その他、なんでもお気軽にご相談ください!

0120-788-246

受付時間 10:00-18:00 [ 土・日・祝含む ]

お電話でのご相談

上記フリーダイヤルまでお気軽にお電話ください。
(スマートフォンの方はアイコンをタップして発信)

メールでのご相談

お悩み・ご状況をお知らせください。
担当者より平日の2営業日以内に連絡いたします。

オンラインでの面談

オンラインツールを使用した面談も可能です。
まずはこちらからお問い合わせください。