相続税を最大80%減額可!小規模宅地等の特例を相続専門税理士が解説

小規模宅地等の特例をご存知ですか?活用できると相続税が最大80%減額できる制度です。

税理士法人ともに代表社員税理士:入江

宅地を相続するなら、小規模宅地等の特例が適用できると絶対に嬉しいはずです。(税理士法人ともに代表社員税理士:入江)

小規模宅地等の特例が使えると、相続税の金額が大きく変わります。ほとんど税金を払わずに済んだり、税金がかからなかったりすることもあります。

この記事では、活用できれば相続税が最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」について、使える土地の種類から手続き方法まで、わかりやすく解説します。宅地を相続する方は必見の記事です。

小規模宅地等の特例とは

まず小規模宅地等の特例とは何かを解説します。以下は、小規模宅地等の特例に関する法令の条文の抜粋です。

個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、下記2の表に掲げる区分ごとにそれぞれに掲げる割合を減額します。

国税庁[令和2年4月1日現在法令等]より抜粋
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
(※赤字部分は記事執筆時に装飾)

ざっくりまとめると、小規模宅地等の特例とは、要件に該当する相続ならば相続税が減額できる制度のことです。要件に該当するかどうかは、相続する土地と人の組み合わせで決まります。詳しくは後述します。

減額できる割合は「下記2の表に掲げる区分ごと」に変わります。そのため、どの区分に該当するかの見極めが重要です。

区分要件限度面積減額割合
貸付事業以外の事業用の宅地等特定事業用宅地等に該当する宅地等400㎡80%
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等400㎡80%
貸付事業用宅地等に該当する宅地等200㎡50%
被相続人の居住の用に供されていた宅地等特定居住用宅地等に該当する宅地等330㎡80%

小規模宅地等の例外

以下は、小規模宅地等の特例の例外規定です。この例外に該当した場合は、特例は使えません。

なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等及び「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除」の適用を受けた特例事業受贈者に係る贈与者又は「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」の適用を受ける特例事業相続人等に係る被相続人から相続又は遺贈により取得した特定事業用宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。

国税庁[令和2年4月1日現在法令等]より抜粋
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm(※赤字部分は記事執筆時に装飾)

上記を要約すると、すでに贈与税や相続税を免除されたり猶予されていたりすると、小規模宅地等の特例による相続税の減額はできないということです。

小規模宅地『等』とはどういうことか

「小規模宅地」ではなく「小規模宅地等」と呼ぶ理由は、対象になるのが宅地に限らないからです。事業用の土地であっても、減額の対象になるとされています。どんな土地が対象になるかは、後述します。

小規模宅地等の特例の歴史的背景

小規模宅地等の特例の元になる国税庁の通達が、初めて登場したのが昭和50年です。高度経済成長にともなって都市部の土地価格が上昇し、次のような問題が起きたために発案されたと考えられます。

昭和時代に都市部の地価高騰で起きた問題

都市近郊の地価が高騰

都市近郊の農地が宅地並みの高価格で取引されるようになる

相続税評価額が値上がりする

農地の相続が困難になる

都市近郊の農業の承継があやうくなる

こうした問題に対処するため、通達登場の8年後の昭和58年に租税特別措置法第70条が法制化され、農地等の相続税や贈与税を猶予する法制度が始まりました。また農業以外の事業のための土地や給与生活者が住む土地についても、相続税の減額が始まりました。

最初に法律が始まってからは、数年おきに改正があり、現在の小規模宅地等の特例になっています。初めて関連する法律が登場してから現在までの流れを見ると、今後も社会情勢の変化を受けて、何らかの改正が加えられる可能性が高いと言えます。

相続税の申告で損しないためには、最新の法制度を把握して対策や手続きを考える必要があるでしょう。

小規模宅地等の特例のメリット

小規模宅地等の特例を活用するメリットは、要件にあてはまれば、相続税の対象になる土地の評価額が80%減額できることにあります。

要件にあてはまるのはどのような場合か、まず土地の区分から解説します。

小規模宅地等の特例で対象になる土地

以下が、小規模宅地等の特例で対象になる土地区分です。

・特定居住用宅地等
・特定事業用宅地等
・特定同族会社事業用宅地等
・貸付事業用宅地等

それぞれ解説していきます。

特定居住用宅地等

特定居住用宅地等とは、 被相続人の配偶者または要件を満たす親族が、相続または遺贈により取得した居住用の宅地のことです。減額割合は80%です。特定居住用宅地等の要件については後述します。

特定事業用宅地等

特定事業用宅地等とは、 被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、要件を満たすものを指します。減額割合は80%です。特定事業用宅地等の要件については後述します。

特定同族会社事業用宅地等

特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始の直前に相続人等が特定の同族会社の事業の用に供されていた宅地等で、次の要件にあてはまるものです。

その要件とは、当該宅地等を相続または遺贈により取得した当該相続人の財務省令で定める親族が相続開始時から申告期限まで引き続き有し、かつ申告期限まで引き続き当該法人の事業の用に供されていることです。減額割合は80%です。

貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地等とは、被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等で、要件を満たす被相続人の親族が相続または遺贈により取得したものをいいます。貸付事業用宅地等に該当した場合は、他の特例対象地と異なり、減額割合が50%となります。

小規模宅地等の特例対象にならない土地

上記4つの特例対象地のいずれにも該当しない建物・構築物の敷地の用に供されていない宅地は小規模宅地等の特例対象になりません。

対象外の宅地の具体例を挙げると、以下のものがあります。

・アスファルトも砂利もない青空駐車場
・農地・採草放牧地
・贈与により取得した宅地
・相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地

小規模宅地等の特例の要件

小規模宅地等の特例が使える要件を、土地の用途ごとに解説します。要件は、土地と人の組み合わせで決まります。また小規模宅地等の特例では、適用される面積に上限があるのでご注意ください。限度面積は土地の用途別に決まっています。

特定居住用宅地等の要件

居住用の宅地で特例を適用するなら、以下4要件のいずれかに該当せねばなりません。

(1)被相続人及び被相続人と生計を一にする親族が居住用に使っていた宅地等で被相続人の配偶者が取得する
(2)被相続人の居住用に使っていた宅地等で同居親族が取得する
(3)被相続人の居住用に使っていた宅地等で同居親族以外の一定の親族が取得する
(4)被相続人と生計を一にする親族の居住用に使われていた宅地等で、その生計を一にする親族が取得する

要件を満たしていれば、一戸建て住宅だけでなく、マンションでも特例を適用することができます。マンションでの小規模宅地等の特例適用についてはこちらの記事で詳しく解説しました。

では各要件を、順番に解説します。

(1)被相続人及び被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等で被相続人の配偶者が取得する

配偶者が宅地を取得する場合は、特例は無条件で適用可能です。追加の要件はありません。

(2)被相続人の居住の用に供されていた宅地等で、同居親族が取得する

被相続人と同居していた親族が宅地を取得するなら、特例を適用可能です。ただし以下の要件を満たす必要があります。

・当該親族が相続開始の直前、被相続人が居住用に使う1棟の建物に被相続人と同居していた
・相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有している
・当該建物に居住している

(3)被相続人の居住の用に供されていた宅地等で、同居親族以外の一定の親族が取得する

被相続人と同居していない親族が宅地を取得して、特例を適用することも可能です。ただし以下の要件を満たす必要があります。(注1)

(1)取得した財産の納税義務があり日本国籍があること(注2)
(2)被相続人に配偶者がいないこと
(3)被相続人と同居していた法定相続人がいないこと
(4)3年以上賃貸住宅に住んでいる法定相続人であること
(5)住んでいる住宅を過去に所有したことがないこと
(6)相続する宅地等を相続税の申告期限前に売却していないこと
(7)配偶者もしくは3親等内の親族が所有する住宅に住んでいないこと

同居していない親族が、これらの要件を満たして特例を適用することを、通称で「家なき子特例」と呼んでいます。家なき子特例についてはこちらの記事でも解説していますのでお読みください。

注1
国税庁 特定居住用宅地等の要件
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)

注2
居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者、非居住制限納税義務者かつ日本国籍を有するもののいずれかに該当すること

(4)被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等で、その生計を一にする親族が取得する

被相続人と生計を一にする親族が居住用に使っていた宅地をその人が取得する場合は、以下の要件を満たす必要があります。

・その宅地等を生計を一にする親族が相続開始時から相続税の申告期限まで保有している
・その宅地等を生計を一にする親族が居住用に使っていた
・その宅地等を取得した生計を一にする親族は、その宅地等に対して家賃は支払っていなかった

特定事業用宅地等の要件

特定事業用宅地等の要件について解説します。

事業用の宅地に特例を適用する場合は、以下2要件のいずれかに該当しなくてはなりません。

(1)被相続人の事業用に使われていた宅地等である
(2)被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていた宅地等である

各要件を順番に解説します。

(1)被相続人の事業用に使われていた宅地等

被相続人の事業用に使われていた宅地等とするなら、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・その宅地を、被相続人の親族が相続または遺贈により取得
・さらに被相続人の事業を相続税の申告期限まで保有
・さらに引き続きその宅地等を相続税の申告期限まで保有
・さらに当該事業を営んでいる

(2)被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていた宅地等

被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていた宅地等とするなら、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・事業を行っていた生計を一にする親族が相続または依存により取得
・その親族は相続開始前から行っていた自己の事業を相続税の申告期限まで継続
・その宅地等を相続税の申告期限まで保有
・その生計を一にする親族が、生前、相続人に対して当該宅地等に係る地代または当該宅地等の上に建築されている建物に対して家賃を支払っていない

特定同族会社事業用宅地等の要件

特定同族会社事業用宅地の要件について解説します。

特定同族会社事業用宅地とするなら、以下3要件をすべて満たさねばなりません。

・特定同族会社の要件
・特定同族会社の事業要件
・宅地を取得する親族が相続税の申告期限においてその特定同族会社の役員であること

特定同族会社要件とは:

相続開始直前に被相続人及び被相続人の親族その他当該相続人と特別の関係のある者の持ち株割合・出資割合が50%を超える法人

事業要件とは:

・特定同族会社の事業の用に供されていること
・不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業は除く

要件を満たす事業用の宅地を、財務省令で定める親族が取得した場合に限り、要件に合致します。

貸付事業用宅地等の要件

貸付事業用宅地等の要件について解説します。貸付事業用宅地とは、被相続人等か被相続人と生計を一にする親族が貸付事業に利用していた宅地等のことです。

貸付事業用宅地等は、以下の(1)か(2)いずれかの要件を満たせば、特例の適用が可能です。

(1)被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等の要件

・その貸付事業を引き継いで続けている
・相続税の申告期限まで売却していない
・相続の3年以上前から貸付事業を営んでいる

(2)被相続人と生計を一にする親族の貸付事業の用に供されていた宅地等の要件

・生計を一にする親族が貸付事業を引き継いで続けている
・相続税の申告期限まで売却していない
・相続の3年以上前から貸付事業を営んでいる
・生計を一にする親族が被相続人の生前にその宅地に対する家賃を支払っていない

小規模宅地等の適用面積と減額割合

小規模宅地等の特例は、適用できる土地の面積に上限があります。適用限度面積と減額割合は以下のとおりです。

特定居住用宅地等

特定居住用宅地等の特例を適用できる面積上限は330㎡で減額割合は80%です。

特定事業用宅地等

特定事業用宅地等の特例を適用できる面積上限は400㎡で減額割合は80%です。

特定同族会社事業用宅地等

特定同族会社事業用宅地等の特例を適用できる面積上限は400㎡で減額割合は80%です。

貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地等である場合は、80%減額の対象にはなりませんが、面積上限200㎡まで減額割合50%を適用できます。

小規模宅地等の特例を使った税金の減額計算方法をこちらの記事でわかりやすく解説しています。各宅地ケースごとの計算方法を知りたい方におすすめの記事です。

小規模宅地等の特例申請に必要な添付書類

以下が、小規模宅地等の特例を申請するときに必要な書類です。土地種類ごとにまとめました。(小規模宅地等の特例申請の添付書類はこちらの記事でも詳しく解説しています。)

特定居住用宅地等の特例の申請に必要な添付書類

特定居住用宅地等の特例の申請で、必要とされる添付書類は以下です。

・被相続人と相続人全員の戸籍謄本
・特例対象宅地等の計算明細書
・限度面積を証明する書類
・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
・相続人全員の印鑑証明書
・その他財産の取得の状況を証明する書類

特定事業用宅地等の特例の申請に必要な添付書類

特定事業用宅地等の特例の申請に必要とされる添付書類は以下です。

・特例対象宅地等の計算明細書
・限度面積を証明する書類
・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
・相続人全員の印鑑証明書
・その他財産の取得の状況を証明する書類
・事業用に使用していた資産の種類・数量・価額・所在場所その他の明細を記載した書類
(その土地が相続開始前3年以内に、新たに被相続人等の事業用に使われはじめた場合は、租税特別措置法が定めた規模より事業内容が大きいと証明する書類が必要)

特定同族会社事業用宅地等の特例の申請に必要な添付書類

特定同族会社事業用宅地等の特例の申請に必要とされる添付書類は以下です。

・特例対象宅地等の計算明細書
・限度面積を証明する書類
・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
・相続人全員の印鑑証明書
・その他財産の取得の状況を証明する書類
・相続開始時に効力を有する当該会社の定款の写し
・この会社が証明している下記記載の書類
-相続開始直前における当該会社の発行済み株式の総数または出資総額
-被相続人及びその親族等が有する当該会社の株式の総数または出資総額

貸付事業用宅地等の特例の申請に必要な添付書類

貸付事業用宅地等の特例の申請に必要とされる添付書類は以下です。

・特例対象宅地等の計算明細書
・限度面積を証明する書類
・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
・相続人全員の印鑑証明書
・その他財産の取得の状況を証明する書類
・被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業を行っていたことを証明する書類(この宅地が、相続開始前3年以内に、新たに被相続人等の貸付事業に使われた場合)

小規模宅地の特例適用で必要な添付書類について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。添付書類チェックリストも記事からダウンロードできます。

小規模宅地等の特例 手続き方法

書類が準備できた後の手続き手順を解説します。遺産分割協議がまとまっている場合とまとまっていない場合で手順が異なるので、それぞれ解説します。

遺産分割成立の場合

遺産分割が成立している場合は、下記2点の書類を準備して税務署に申告します。

・相続申告書(特例の適用を希望することを記載)
・特例の申請に必要な添付書類の項で解説した添付書類

遺産分割非成立の場合

遺産分割が成立していない場合は、期限内申告においては、小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。

ただし以下の措置を取れば、小規模宅地等の特例の追加適用が可能となります。

(1)申告期限後3年以内の分割見込書を添付して相続申告する
(2)申告期限後3年以内に遺産分割協議を確定成立させる
(3)申告期限後3年以内かつ遺産分割協議の成立後4ヶ月以内に所轄税務署に更正請求する

まとめ

小規模宅地等の特例の概要を解説しました。最後までお読みいただけましたので、小規模宅地等の特例のあらましが一通りご理解いただけたと思います。

しかし実際の相続においては、複数の要件が重なることが多いです。その結果、特例が適用できるかどうかの判定が難しくなり、新たに以下のような悩みが出てくることでしょう。

・すべての特例が適用できるのか?
・特例を使った方が得なのか?
・特例をどう組み合わせるのが最適か?

これらの問いに答えるためには、個々の事例で財産種類と相続人の関係性を詳しく検証しなくてはなりません。一律で誰にも当てはまる正解はないのです。

お悩みがすっきり解決しないときはぜひ専門家にご相談ください。相続税専門の税理士法人ともにでは、相続に直面されたみなさまのお悩みにじっくり向き合い、解決に導く相続方法をご提案します。

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