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中小企業の事業承継について、シリーズ記事としてお伝えしています。今回は第2回です。

この記事でお伝えすることは、株式引き継ぎの基礎です。(中小企業の事業承継第1回「誰に事業を引き継ぐのか」はこちら)

株式の引き継ぎについてはお伝えしたいことが多いため、6回に分けてお伝えします。

それではあらためて「事業承継の3つの重要課題」を振り返りましょう。

【事業承継の3つの課題】

1.経営的な(形式的な)事業承継=誰に事業を引き継ぐか

2.所有的な(実質的な)事業承継=自社株式をどのように引き継ぐか

3.能力的な(人間的な)事業承継=後継者に対する教育

今回は、事業承継2つめの重要課題「株式の引き継ぎ」を解説します。

事業の引き継ぎと会社所有の分離

中小企業の事業承継において、「事業の引き継ぎ」と「会社の所有」は、分けて考えねばなりません。これは事業承継で基本の考え方です。

原則にもどれば、株式会社の所有者は株主です。代表取締役社長は、事業経営の責任者ですが、所有者ではありません。社長は、会社の所有者である株主から経営を委託されている存在です。

しかし、株式非公開の同族会社である中小の株式会社は、経営者と所有者が同じことが多いです。会社の代表が社長で、所有者もまた社長ということになります。

ただ、このような同族会社においても、代表権の異動と株式の移動が分離されることがあります。例えば、後継候補の息子さんがまだ経験不足で未熟なため、中継ぎとして番頭格の社員が一旦代表権を引き継ぐ、といったケースです。

こうしたケースで所有者側が、代表者の交代後も意思決定の権利を維持したいなら、株式を手放さないことが重要です。

取締役の解任は株主総会の決議事項です。つまり代表者の交代後も株式を一定数持っていれば、取締役解任の決議案を株主総会に提出して代表者を解任できます。

株主と代表者が対立した場合でも、株主として異議を意思表示し、意思を通すことが可能ということです。

【参考コラム】

以前は取締役を解任するには、出席株主の議決権数の2/3以上の賛成が必要とされていました。(旧商法の特別決議)

しかし2020年時点の会社法は、定款で特段の定めをしていない限り、総議決権数の過半数の賛同を得られれば取締役の解任ができると規定しています。(会社法第341条)

この点を覚え違いされている中小企業の経営者も意外と多いので、どうぞお気をつけください。

自社株式の承継

会社の代表権と所有権を分離し代表権だけを引き継ぐ場合、株式については親族が保有し所有権は手放さないことが多いでしょう。さらに株式を引き継いで所有権を手にする者が、最終的には事業経営の後継者候補であることもよくあります。

つまり、同族会社である中小企業の場合は、会社の経営と所有は切り離せません。中小企業の事業承継において、自社株式の移動は必ず発生する必須手続きと言えます。

自社株式の移動は「株主地位の承継」とも言い換えできます。株主地位の承継とは、保有する「自社株式を後継者候補等に渡す」ことです。

一言で表現しましたが、実はこの「自社株式を後継者候補等に渡す」手続きは、非常に複雑な作業です。そこで、自社株式の移動時に想定される、税法上の複雑な課題について、つぎから解説していきます。

株式の移動と課税

株式が株主Aから株主Bに移動する場合、無償の移動取引と有償の移動取引に分けられます。無償の移動は譲渡です。有償の移動は贈与または相続になります。

譲渡なら所得税贈与であれば贈与税、相続の場合は相続税が課せられます。

それぞれ税目が異なるので税金の計算方法は別です。しかしいずれも利益に対して課税される、という点は同じです。

では株式の移動によって発生する利益と課税について、種類ごとに詳しく見てみましょう。

譲渡の場合の利益と課税

株式譲渡の基本は、等価交換です。どういうことかと言うと、旧株主Aが新株主Bに株式を時価で売却した場合、譲渡による利益は生じません。しかし、株式の時価と著しく異なる金額で売買取引されると、その差額が利益とみなされます。そして利益を得た側に課税されます。

例えば時価100万円の株式を40万円で売却すると、差額が60万円出ます。本来100万円払わねばならないところ、40万しか払わずに株式を手にできています。つまり新株主側は差額60万の利益を得たことになります。この場合、旧株主Aから新株主Bに贈与が行われたとみなされ、課税される可能性があるのです。このような課税を避けるためには、株式の譲渡は時価で行うのがよいでしょう。

贈与の場合の利益と課税

贈与は、旧株主から新株主へ株式を無償提供することです。この場合は無償で株式を取得した新株主が、株式の時価相当額の利益を得たことになります。したがって利益を手にした新株主に対して贈与税が課されます。

ただし、贈与税には年間110万円の「基礎控除」があります。基礎控除を活用して、新株主に渡す株式の時価総額が110万円以下となるように調整すれば、贈与税は発生しません。

しかし、この時に注意すべきことが、以下の2点あります。

【贈与で注意すること】

・贈与税が暦年課税であること
 (毎年1月1日~12月31日までの期間で計算する)
・無償で財産を受け取った「人」ごとに税額計算を行うこと
 (受益者課税の税金である)

つまり、旧株主Aから新株主Bへの株式の贈与を総額110万円以下に抑えたとしても、もし新株主Bがその同じ年に他にも財産贈与を受けていると、その分も「贈与」として合算されてしまうのです。他の人から贈与されている場合も対象になり、合算に追加されます。

1人あたりの1年間の受贈額を合算し110万円を超えた場合には、超えた分に対して贈与税が課税される仕組みになっているのです。この点は見逃しがちなので、ご注意ください。

相続の場合の利益と課税

相続では、旧株主Aが亡くなったことで、新株主Bに株式の所有権が移動します。

相続の場合も贈与同様に、新株主のBが、対価を支払うことなく株式という財産を手にして利益を得ることになります。よって受け取る株式の時価という利益に対する税金、つまり相続税が新株主のBに課されるのです。

相続税の場合も贈与税同様に基礎控除額が存在します。しかし相続税の基礎控除の計算は贈与税に比べて非常に複雑です。株式の他にどの程度の相続財産があるのか、相続人の構成はどうなのかなど、税額が変わる要素が複雑にからみます。したがってここでは詳しい解説は省きます。(詳しく知りたい方は、相続税を簡易的に無料で診断できるシミュレーションを用意しておりますので、ぜひご利用ください。)

「譲渡」「贈与」「相続」いずれの課税においても、重要なことは引き継ぎ時の自社株式の時価です。

株式の時価は、上場株式であれば開かれた証券市場での取引価格です。しかし非上場の株式は市場で売買取引されません。このため特別な計算によって時価を算出することになります。

非上場株式の時価評価

非上場株式の時価は、一般的には総資産額から総負債額を差し引いた残額です。別の言い方をすると「純資産の金額を発行済み株式総数で割った額」であるとも言います。

概算額を算出するのであれば、上記の計算方法で問題ありません。しかし譲渡・贈与・相続の税額を計算するには「財産評価基本通達」で定めている方法を使う必要があります。(財産評価基本通達とは、国税庁が相続財産の評価方法について詳しく定めた文書です。)

それでは、財産評価基本通達による非上場株式の評価方法を解説しましょう。評価方法は、以下の2つの方法があります。

・原則的評価方法
・特例的評価方法

それぞれ解説します。

非上場株式の時価評価その1、原則的評価方法

原則的評価方法はその名の通り、原則的に用いられる方法です。また会社の規模により、さらに3つの方式にわかれます。

・純資産価額方式
・類似業種批准方式
・併用方式

以上の3つです。順番に解説します。

純資産価額方式

純資産価額方式は、一般的な「純資産の金額を発行済み株式総数で割った額」の考え方に近い計算方法です。国税庁のホームページには、純資産価額方式について、以下のように記載されています。

純資産価額方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。

引用:国税庁 タックスアンサーNo.4638 取引相場のない株式の評価 (太字部分は税理士法人ともににて加工)

純資産価額方式の場合、会社の資産状況により概算と正式な計算結果が大きく変わる可能性があるため、注意が必要です。

たとえば、有価証券や土地建物といった資産は、帳簿に記載された購入価格と時価が大きく乖離することがあります。会社が、流動的な価値を持つ資産を多く所有している場合は、概算と正式な計算結果が大きく変わることになるでしょう。

類似業種批准方式

類似業種批准方式は、非上場の評価対象会社と同種の事業を営む「類似」の上場会社を利用して、株式時価を求める方法です。

類似した上場会社の

・株価
・配当金額
・利益金額

を参考に非上場会社の株式時価評価を行います。

併用方式

併用方式は、純資産価額方式と類似業種批准方式の2つを使って計算し、出た金額を一定の比率で合算する方法となります。

非上場株式の時価評価その2、特例的評価方法

特例的評価方式は、原則的な方法が適用されない株式に対して使われる計算方法です。評価対象の会社が株主に出した配当金額をもとにして、「配当還元方式」を使って株価を計算します。

時価評価方式の選び方

さて、2つの株式時価評価方式のうち、どちらを適用すればよいのでしょうか?

この疑問に対する解答は、「株式を承継する人の立場で判断すればよい」と言えます。

以下で、評価方式を選ぶ基準にする「立場」について解説します。

【基準とする2つの立場と選ぶべき評価方法】

(1)会社の同族株主等という立場である
  →原則的な評価方法を使う

(2)会社の同族株主等以外という立場である
 →特例的評価方法を使う

株式を承継する人の立場が(1)の会社の同族株主等である場合は、会社の支配を目的として株を保有する株主となります。会社を支配する目的ならば、承継する株式の評価には、会社本来の価値を示すものを使うべきです。このため原則的な方式を使って計算しましょう。

株式を承継する人の立場が(2)の会社の同族株主等以外である場合は、会社を支配できる比率の株式を持たない株主です。支配権がない株主は「配当の支払いを受けるため」に株を保有していると考えます。このため、特例的方法の「配当還元方式」で計算します。

まとめ

事業承継についての解説記事【第2回】を最後までお読みいただきありがとうございます。

事業承継には

・後継者の決定
・株式の引き継ぎ
・後継者への教育

3つの課題があると第1回でご説明しました。3つの課題のうち、手続きが複雑で選択肢のバリエーションが多いのが、今回解説した「株式の引き継ぎ」です。

たとえば

・有償で株式を移動するのか
・無償で移動するのか

といった違いで課税種類が変わります。また引き継ぐ株式の時価によっても、税金の金額が変わります。

株式の評価の方法は、国税庁が公開する財産評価基本通達をもとに判断できますが、公文書の読み解きに慣れていない場合は、通達を手にしても内容の理解が難しいです。

自社株式の価格を正しく評価するといくらになのか?といった事業承継に必須の情報を正確に知りたい場合は自分1人で頑張るより、顧問税理士など専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。

事業承継第3回記事に続きます。

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