贈与税と相続税を徹底比較!贈与税の方が安くなる場合とは?

相続税の情報をインターネット上で検索すると、「相続税より贈与税のほうが安い」、「贈与税より相続税の方が税負担は低い」など、真逆のことが書かれてあることがあります。どちらが正しいのか疑問に思われるのではないでしょうか。

実は相続税と贈与税のどちらがお得なのかは、その時の状況により異なるのです。

この記事では、相続税・贈与税のどちらが有利かを、具体的な事例を出して分かりやすく説明します。

相続に向けてなにか準備をした方がよいのか?と迷っていらっしゃる方の参考になる情報をまとめましたので、ぜひ早めにお読みください。

そもそも相続税とは?

相続税とは、亡くなった人から受け継いだ財産にかかる税金のことです。

国税庁のHPには「亡くなった人から各相続人等が相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合、相続税の課税対象になる」と書かれています。(国税庁の「身近な税」のページの説明がわかりやすいです)

大事なポイントは「基礎控除額を超える場合に相続税の課税対象になる」こと。つまり、基礎控除を超えなければ相続税の課税対象にはなりません。

基礎控除額は以下の計算式で求めます。

「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

例えば、法定相続人が配偶者とお子様の2人の場合、基礎控除額は以下の計算式で求めます。

3,000万円+600万円×3名=4,800万円

基礎控除額は4,800万円です。そのため、遺産総額が5000万円程度までなら相続税はかかりません。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

それでは贈与税とは?

贈与税とは、”個人から財産をもらったときにかかる税金” です。( 出典引用:国税庁タックスアンサーより)

「贈与税は相続税の補完税」といわれています。

仮に贈与税が存在しなければ、相続税の税負担を回避する目的で、他者に資産を贈与する方が出てくるでしょう。そのような租税回避行為を防ぐために、贈与税の規定が設けられています。

国税庁のHPには以下のようにも書かれています。

贈与税は、1人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります

つまり基礎控除額110万円までの贈与なら贈与税はかからないということです。

基礎控除だけでみると贈与税のほうが相続税よりも低い事が分かります。贈与税の速算表(特例贈与財産用)を以下に添付します。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%0円
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

相続税と贈与税を比較すると

個人が同じ財産を受け取る場合、贈与より相続のほうが有利です。つまり贈与税よりも相続税のほうが安くなります。

例えば、一人息子が父親(母は既に他界)から5,000万円を受け取る事例で確認しましょう。

相続で財産を受け取る場合の税金(相続税の課税対象)

① 受け取る財産の総額 5,000万円
② 基礎控除額 3,000万円+600万円×1名 = 3,600万円。
③ 相続税の課税価格 ①-②=1,400万円
④ 相続税の総額(速算表より) ③×15%-50万円=160万円

贈与で財産を受け取る場合の税金(贈与税の課税対象)

① 受け取る財産の総額 5,000万円
② 基礎控除額 110万円
③ 贈与税の課税価格 ①-②=4,890万円
④ 贈与税(速算表より) ③×55%-640万円=2049.5万円

同じ財産を同じ方から受け取っているにもかかわらず、実にその差は2,000万円以上です。したがって、一般的に「相続税のほうが贈与税より税負担は低い」という認識は正しいといえるでしょう。

相続税のほうが安くなるのはどんな場合?

遺産総額が基礎控除以下の方は、相続税対策としての贈与は検討しなくても問題ありません。なぜなら、そもそも相続時に税金がかからないため。

一般的に、相続税のほうが贈与税より税負担は低めです。そのため、税金の専門家などに相談なく贈与することは避けたほうが良いでしょう。

贈与税のほうが安くなるのはどんな場合?

贈与税のほうが税負担を抑えられるのは、富裕層で多額に相続税が発生する見込みがある場合です。

例えば、一人息子が父親(母は既に他界)から5億円を受け取る事例で確認しましょう。5億円の受け取り方を、以下の2通りに分けて考えます。

①5億円を相続のみで受け取る
② 10年間かけて毎年500万円ずつ贈与を受けた後、残りを相続贈与をする(便宜上、生前贈与加算を加味しない)。

まず、「①5億円を相続のみで受け取る」ケースを考えてみましょう。

① 受け取る財産の総額 50,000万円
② 基礎控除額 3,000万円+600万円×1名 = 3,600万円。
③ 相続税の課税価格 ①-②=46,400万円
④ 相続税の総額(速算表より)③×50%-4,200万円=19,000万円

次に、「②10年間かけて毎年500万円ずつ贈与を受けた後、残りを相続贈与をする」ケースです。

① 1年間で受け取る財産の総額 500万円
② 基礎控除額 110万円
③ 贈与税の課税価格 ①-②=390万円
④ 贈与税(10年分) (390万円×15%-10万円)×10年=485万円
⑤ 相続税の課税価格 50,000万円-500万円×10年-3,600万円=41,400万円
⑥ 相続税の総額(速算表より) ⑤×50%-4,200万円=16,500万円
⑦ 贈与税と相続税の総額 ④+⑥=16,985万円

相続のみと贈与をした場合の差額 19,000万円(相続のみ)-16,985万円(贈与+相続)=2,015万円

比較すると、「②10年間かけて毎年500万円ずつ贈与を受けた後、残りを相続贈与をする」ケースのほうが税負担が軽くなると分かります。その理由は、相続税率50%にかけられる課税価格が少ないためです。

1つ目の事例では、46,400万円、2つ目の事例では41,400万円に対して税率50%がかけられます。その差は2,500万円です。このように課税価格が異なると、大きな差が生じます。

相続でなく贈与を選んで失敗した事例

ここでは、相続でなく贈与を選んで失敗した事例をご紹介します。

◉事例1:不動産の移転コスト(登録免許税や不動産取得税)を考えずに贈与を実行し、多額の移転コストが発生した。
(相続で所有権移転する場合は税金が優遇される)

◉事例2:相続時精算課税制度による贈与を実行した後に相続が発生した。しかし相続人側で「相続時精算課税制度による贈与」を受けている認識を持っていなかった。そのため税務調査が行われ、追徴課税を受けた。

◉事例3:他の相続人に対して配慮に欠ける贈与を、生前にしてしまっていた。そのために感情的に対立が生まれて遺産分割協議が難航する。結果として小規模宅地等の特例を適用できなくなる。そして多額の相続税がかかった。また事業承継もうまくできなかった。

3つの失敗例をご紹介しました。

3件とも「もっと早い段階でご相談いただいていれば違う結果になったのでは‥」と、つくづく残念に感じる事例です。

【まとめ】一般的には贈与税より相続税の方が安いが例外もある

相続税を払うのと贈与税を払うのではどちらがお得になるのかを解説しました。

まとめますと、一般的には相続税の方が、贈与税より税負担は軽めになります。しかし例外もありますよ。ということになるでしょう。

なるべくわかりやすく解説したつもりですが、少し難しかったのではないでしょうか。

実はこの記事の骨子は、相続専門の税理士事務所に入社した人でも、理解するまでにそこそこの時間がかかる難しい内容になります。

ですから相続に慣れていない方が、完璧に理解するのもなかなか難しいことだと思います。

『一般的には相続税のほうが安いが、例外もあって贈与税を払う方が有利になるケースもある』とざっくり理解しておけば十分でしょう。

とはいえ、筆者は専門家に相談せずに自己流で贈与を実行し失敗した方を何人も見てきました。内心忸怩たる思いでいます。

そのため、贈与を検討されている方は実行する前にぜひ専門家に相談して欲しいのです。

記事を読んで「相続税対策の必要はないんだ。安心した」と感じた方がいらっしゃったら、嬉しく思います。

また一方で「私は相続税対策が必要だ」と感じたならば、ぜひ専門家にご相談ください。最善の相続税対策ができるよう、祈っております。

わたくしども税理士法人ともにでも年間に相続税申告を200件以上担当しているので、ご相談いただければ最適な方法をアドバイスできます。ぜひお気軽にご相談ください。(→税理士法人ともに初回無料相談はこちら)

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